「後生だからお願い!」「後生ですからお助けください」こんなセリフを時代劇などで聞いたことはありませんか? 今回はこの「後生」という言葉について見ていきます。少々古風なこの言葉、ビジネスシーンではどんなふうに使われるのでしょうか。言い換えなどについても解説します。

【目次】

「後生」は仏語。フランス語ではありませんよ!
「後生」は仏語。と言ってもフランス語ではありませんよ!

【まずは「後生」を知ろう!「読み方」と「意味」】

■読み方

「後生」を「ごしょう」と読むか、「こうせい」や「のちおい」と読むか…。 読み方によって意味が違いますが、今回取り上げるのは「ごしょう」です。

■意味

「後生(ごしょう)」は仏語(ぶつご=仏教用語)で、死後に生まれ変わること、来世のことを示します。今生(こんじょう=現世) や前生(ぜんしょう=前世)に対して使われる言葉です。また、死後極楽に生まれることや、来世の安楽を表す言葉でもあります。もとは、生まれ変わった次の世が安寧であることを祈る言葉として使われていました。来世での幸福を願った言葉の意味が変化して、近世以降は一般語として「折り入って頼むときなど哀願する意味」で使われるように。冒頭ご紹介した「後生だからお願い!」は、まさにその典型的な使い方ですね。


【「後生」の使い方がわかる「例文」4選】

では、「後生」を使った例文を紹介しましょう。

■1:「後生ですから、これ以上はご勘弁ください」

■2:「初任給でプレゼントしたスカーフを、母は後生大事にしてくれた」

■3:「後生を願って、熱心に参詣を続けている」

■4:「後生の悪いことをするものではない」


【「後生」を使った四字熟語・慣用句・ことわざ】

■後生大事(ごしょうだいじ)

心を込めてものごとに励むこと。また、その人にとってかけがえのないものとして何かを大切にすること。

■後生一生(ごしょういっしょう)

現世・来世を通じてただ1回だけのこと。一生に一度。懇願するときによく用いられる。

■後生菩提(ごしょうぼだい)

来世で極楽に生まれ変わり、悟りを開くこと。

■後生が悪い

後味(あとあじ)が悪いこと。

■後生は徳の余り

「熱心に徳行を積めば、来世の極楽浄土が得られるものである」という意味。一説に、「信心も暮らしに余裕があってこそできる」という意味もある。

■後生暗い心

行き先がハッキリしていない心のこと。先行き不安な心のこと。

■後生鰻(ごしょううなぎ)

これは慣用句でもことわざでもなく…古典落語の演目です。信仰心の篤いご隠居が、浅草観音参りの帰りに通りがかった鰻屋の店先でさばかれようとしている鰻を生きたまま2円で買い取り、目の前の川に放って「(殺生をはばんで)徳を積んだ」と喜ぶが…という噺(はなし)です。


【「後生」の「類語」「言い換え」表現

■来世

「今生」や「前生」に対して使われる「後生」は、「来世」に言い換えることができます。

■一生のお願い

「後生だからお願い」と懇願する意味の言い換え表現です。


【「後生」を使った「英語表現」】

・pray for salvation(後生を願う)

・Stop it, for heaven's sake!(後生だからやめてくれ!)

・For God's sake, please help me!(後生だから助けてくれ!)

・take great care of (後生大事にする)

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「後生大事」や「後生一生」のように、四字熟語として使われている仏語はたくさんあります。「他力本願」や「言語道断」、「一念発起」に「以心伝心」も同様です。語彙力アップに熟語はとても勉強になりますね。

この記事の執筆者
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