60年以上にわたり現代美術の第一線で活躍し続けるデイヴィッド・ホックニー。その多彩な代表作の数々を一堂に紹介する大型個展が、待望の開催です。なかでも近年の風景画の傑作には圧倒されること間違いなし!
雑誌『Precious』8月号では、デイヴィッド・ホックニーについてや、注目の作品など、美術ライター・中村志保さんのナビゲートでご紹介しました。
86歳の今も精力的に活動し続ける現代美術の巨匠!ホックニーの“今”を存分に体感できる大型個展へ
1960年代の初期の代表作から、故郷イースト・ヨークシャーで描いた近年の巨大な風景画、コロナ禍に現在活動の拠点をおくフランス・ノルマンディーで制作した全長90メートルの新作まで、120点以上を通じてアーティストの60年以上に及ぶ画業をたどる。日本では27年ぶりとなる大規模個展です。
10年4月の発売と同時にiPadを入手し、新境地を開いたホックニー。〈春の到来〉は、大型の油彩画とiPadドローイングから構成される、近年のホックニーを代表する風景画シリーズ。故郷であるイギリスのヨークシャー東部で制作され、豊かな色彩感覚によって“春の到来”が生き生きと描かれている。今回の展覧会では、高さ3.6m、幅10mにもおよぶ巨大な油彩画を、大判サイズのiPad作品12点と共に展示。ホックニーの目がとらえた身近な自然を共有したい。
’18年にオークションで作品が約102億円で落札され、当時の現存作家の過去最高額を打ち出したり、おじいちゃんになってからiPadで制作を始めたりと、話題に事欠かないデイヴィッド・ホックニー。86歳を迎えてもなお、現代アート界の最前線を走り続けています。
ホックニーは、イギリス北部の街、ブラッドフォードに生まれ、初期の頃には暗い色を多用した内向的な絵を描いていましたが、1960年代にロサンゼルスへ移住すると、その気候の恩恵を受けるように、陽が降り注ぐような明るい作風へと大きく変化します。やはりこの色彩こそ、多くの人を魅了する理由ですよね。しかし、生き生きとした色使いとは対照的に、画面を眺めていると、風景も人物もどこか淡々として、孤独な気配がふとよぎります。見る人はそこに個人的な内情を通わせて、さらに惹かれていくのではないかとも思うのです。
さて、日本では27年ぶりとなる大規模なホックニー展が、東京都現代美術館で開かれると聞いて、楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。
特に注目しているのが、上の作品。作家の故郷で制作された幅10メートルほどもある巨大なカンヴァスには、樹木の幹のカラフルな色や葉っぱがうごめき、なんだか不思議。あえて平面的な要素を残した奥行きの演出は、どこかデザイン的に見えるのも素敵です。本作品を含め日本初公開作品や、全長90メートルの新作、世界初公開の自画像なども展示され、作家の新たな一面を発見できそうです。(文・中村志保さん)
〈展覧会概要〉
- 場所/東京都現代美術館
- 期間/2023年7月15日(土)~11月5日(日)
- TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
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- PHOTO :
- (c) David Hockney Photo: Richard Schmidt、(c) David Hockney Photo: Jean-Pierre Gonçalves de Lima
- EDIT :
- 正木 爽・宮田典子(HATSU)、喜多容子(Precious)
- 取材・文 :
- 剣持亜弥(HATSU)