日本画や美術工芸品に彩られた唯一無二のミュージアムホテル「ホテル雅叙園東京」が有する東京都指定有形文化財「百段階段」では、夏の風物詩ともいえる企画展「和のあかり×百段階段2023 ~極彩色の百鬼夜行~」が開催中です。

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東京都指定有形文化財「百段階段」

2015年の夏にスタートした「和のあかり展」は、7つの部屋を繋ぐ長い階段廊下を進みながら、エリアごとに設定されたストーリー性のある展示を楽しむ企画展ですが、今年のテーマは「極彩色の百鬼夜行」。

現世から異界へ迷い込むような演出のもと、さまざまなジャンルや技法による日本のあかりの合間に、妖怪や鬼が姿を現し、涼をもたらします。

絢爛豪華な文化財と、鮮やかな色が合わさることで生まれる美しい空間を堪能できる本企画展は、ストーリーを予習して行けば、より楽しめること間違いなし。Precious.jpライターの体験レポートで、今年の見どころをご紹介いたします。

お出かけ前にチェックしたい!「和のあかり×百段階段2023 ~極彩色の百鬼夜行~」の見どころ

■1:心がざわめく夏の夕暮れ「3階エレベーターホール」

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柏木美術鋳物研究所の「小田原風鈴」ほか、篠原風鈴本舗の「江戸風鈴」も飾られている

エレベーターで3階にあがると、無数の風鈴が現れるホールは、夏の夕暮れをイメージしたもの。夕方になり、少し風が出て涼しくなってきた様子が、風鈴の音で表現されています。

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「柳井金魚ちょうちん」※現在の設置場所とは異なります

風鈴とともに夕暮れをイメージして飾られているのは、第一回から毎回登場する、山口県柳井市の民芸品である「金魚ちょうちん」。嵐の前触れを予感させるような、怪しい顔のちょうちんが2匹紛れ込んでいるので、ぜひ探してみてくださいね。

■2:色鮮やかな灯りに導かれる「プロムナード」

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伏谷商店の「名古屋ちょうちん」

心のざわつきを抱えたまま、その場所から逃れるように、色鮮やかな提灯のあかりの方へ……というストーリーが描かれたプロムナードに並ぶのは、名古屋ちょうちん。

着物の柄と同じような美しい柄に目を奪われます。

■3:異界へと続く道「十畝の間」

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花のディスプレイは、一葉式いけ花 家元の粕谷尚弘氏によるもの

部屋に入ると、鳥居のような幻想的な花々が飾られたゲートが目に入ります。遠くから呼び寄せられるような歌声のサウンドも手伝って、美しさと恐ろしさを感じます。

花のディスプレイを担当した一葉式いけ花 家元の粕谷尚弘氏は、「異界の雰囲気を出すため、少しトロピカルな植物を入れました。生花を使っているため、期間中に少しずつ花は変わりますので、何度来ていただいても楽しんでもらえると思います」と話していました。

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中野形染工場の「籠染灯籠」

ゲートの両脇に並ぶのは、日本で唯一の藍染め技術「籠染め」でゆかた生地を生産してきた、埼玉県越谷市にある中野形染工場の「籠染灯籠」。実際に浴衣生地の生産過程で使用されているもので、基本的には1点モノだそうです。

影となって映し出される、伝統的な和柄に注目してみてください。

■4:鬼の住処「漁樵の間」

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ペットボトルアーティスト・本間ますみ氏による水晶などのオブジェ

現世からいよいよ異界にやってきたという設定が、漁樵の間です。赤色に輝く大きな水晶や、妖しく光る花々、そして鬼の姿もあります。

中央の光るオブジェは、すべてペットボトルから作られており、接着剤は使わず、はんだごてで組み立てられています。ペットボトルだからこそ出せる光の変化や、作者が常にテーマに掲げる「ペットボトルのポイ捨て防止」など、さまざまなことを感じることができるオブジェ。

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青色にもライトアップされるオブジェ

 赤だけではなく、青色にも光る極彩色の空間は、圧巻です。

■5:異界の四季「草丘の間」

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歌舞伎の春を表す「吉原の桜」

狂瀾の時間を抜けて、次に足を踏み入れるのは、歌舞伎に観る四季が一同に現れる空間。

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歌舞伎の夏を表す「藤娘」

春は、「助六由縁江戸桜」や「籠釣瓶花街酔醒」などに登場する「吉原の桜」、夏は、春の名残を惜しみながら舞う美しい作品の「藤娘」、秋は「紅葉狩り」、冬は「鷺娘」で表現されています。

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七夕飾り作家の櫻井駿氏による鮮やかな飾り

中央にある七夕飾りは、根底に妖しさを感じる歌舞伎の四季を、華やかに魅せる印象的な飾りです。

■6:白き狐の世界「静水の間」

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「義経千本桜」は、江戸時代に中村座で初演された時代物の演目

極彩色の世界の中で、ここはあえて白き狐(義経千本桜)の世界が広がります。実際に歌舞伎で出てくる月はとてつもなく大きいため、ここでは使えず、今回の企画のために作られた月が飾られています。

実は、月がこのような形になることはありませんが、試作を重ねた中で、一番イメージに合ったこの形を採用したそう。現世では見られない月にも、注目してみてください。

■7:水が紡ぐ詩「星光の間」

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紙にレーザー加工を施して作られた「紙にしきごい」

星光の間へは、錦鯉が空間を泳ぐ廊下を通って進みます。この「紙にしきごい」を開発した新潟市に本社工場がある第一印刷所によると、「池の錦鯉を見るときは、背の部分しか見えませんが、今回は下から見上げることができるので、いつもと違った角度から楽しんでもらえたら」とのこと。

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石塚硝子の「津軽びいどろ」

次に辿り着いたのは、水の中の息づく世界。手作りならではの柔らかな形と色合いが美しい「津軽びいどろ」は、タンブラー、一輪挿し、豆皿、箸置きの4種類が並びます。水の中の世界を想像しながら見るガラス作品は、より神秘的に感じられます。

■8:対岸の現世「清方の間」

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照明作家の弦間康仁氏によるオブジェ

「水の中から顔を出すと対岸に見えるのは、現世の灯り」というテーマを表現したのが、清方の間です。

部屋に入ってすぐの筒状のタワー中央に書かれているカタカナは、百鬼夜行から免れる呪文。諸説ありますが、「酔っぱらってるから、まあ許してくれよ」といったような意味で、物の怪と会ってもこの呪文を唱えれば、異界の迷路から抜け出せるようです。

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かんざし作家の榮氏による「青い彼岸花」
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黒い骨組みの部分を含め、すべて紙でできている「希莉光あかり」

 同じ清方の間には、ワイヤーの輪郭にしゃぼん玉のように膜を張る技法で作られたかんざしによる青い彼岸花や、手作りの倉敷切子灯篭をモチーフに作られた「希莉光あかり」など複数のアートが並んでいます。

■9:神々の園「頂上の間」

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大島エレク総業によるライティングデコレーション

夕暮れから異界に迷い込み、鬼の住処を通り、どんどん深い世界へと進み、やっと現世へと戻る道を見つけ、その途中に現れた「神々の園」をテーマに作られたのが、最後の部屋「頂上の間」です。

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栃木ダボ製作所が作る神々のお面と、水引作家の山冨繁子氏による龍

 幾何学的なフォルムのオブジェを組み合わせた紙のあかりや、神々のお面、黄金の龍などが飾られており、これまでの異界とは違う雰囲気の灯りや、神々しさといったものが感じられる企画展のゴールに相応しい部屋になっています。

「和のあかり」展の余韻に浸れる宿泊や食事も!

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「和のあかりルーム」1室2名様 ¥103,500~(税・サービス料込み・宿泊税別) ※1日1室限定

幻想的なあかりをプライベート空間でも楽しめる期間限定のコンセプトルームでは、紙の柔らかなあかりや、籠染灯籠が映し出す幻想的な影が、客室を彩ります。

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持ち帰りができる、ほおずきのあかりと企画展オリジナルアロマ

部屋には、ほおずきのあかりのオリジナルアロマが用意されており、持ち帰ることもできるため、記念になります。

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夏祭りの雰囲気漂うテラス席

日帰りの場合には、お食事のみでも楽しめます。山口県柳井市の民芸品、金魚ちょうちんがレストランのテラス席に登場し、愛嬌たっぷりの表情で出迎えてくれますよ。

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「和のあかり×ビアテラス」90分間フリーフロー ¥3,850(税込み・サービス料別)

店内にも一部の作品がディスプレイされているため、企画展にまだいるような気分で、おいしい時間を過ごすことができます。


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文化財「百段階段」は実は99段

ちなみに、開催場所の文化財「百段階段」は、100段ではなく実は99段しかありません。一体なぜなのでしょう? その謎も、階段を上り切ると解明されますよ!

歴史ある文化財とアートの数々を観に、ぜひこの夏お出かけしてみてくださいね。

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WRITING :
篠原亜由美
EDIT :
小林麻美