今回取り上げるのは「ものごとを念入りに調べること」という意味の「吟味」です。もともとは「詩歌を吟じる」というところからきた、雅(みやび)な趣がある言葉です。ビジネスシーンでどのように使われているのか、例文や類語などを見ながらおさらいしましょう。

【目次】

「吟味」は業務内容にも食材などにも使えます!
「吟味」は業務内容にも食材などにも使えます!

「吟味」とは?「読み方」「意味」…基礎知識】

■読み方

「吟味」と書いて「ぎんみ」と読みます。

■意味

実は「吟味」は多様な意味をもつ言葉です。いくつかご紹介します。

(1)ものごとを念入りに調べること。また、念入りに調べて選ぶこと。「よく吟味した材料を用いる」というように、日常ではこの意味で使われることが多いですね。

(2)罪状を調べ、正すこと。詮議(せんぎ)。「役人の吟味を受ける」などと言います。

(3)詩歌を吟じてその趣を味わうこと。「吟じ(ず)る」とは、詩歌や俳句などをその場でつくること、またそれを節をつけて詠むことを指します。

(4)監督すること。監視すること。取締り。

「吟味」の原義(その言葉が本来もっていた意味)は(2)にあるといわれています。江戸時代に役所に持ち込まれる訴えに対し、双方の言い分について調べる際に使われていたのだとか。そこから「よく調べる」という意味で使われるようになったようです。


使い方がわかる「例文」6選

■1:「プレゼンテーションではトークや資料などの表現力がものを言うので、改めてじっくり吟味しなければならない」

■2:「社内用であってもWチェックするなど、資料づくりは吟味する習慣を付けておくべきだ」

■3:「ご提案を吟味した結果、御社の案が最適との判断に至りました」

■4:「生成AIがさまざまな分野で一般的に活用されるようになっても、最終的にはその内容を人間が吟味すべきだろう」

■5:「ネット上の情報は、鵜吞みにせず、よくよく吟味する必要がある」

■6:「料理長自らが市場へ出向いて吟味した食材を使っている、というのがこの店の売りだ」


【「吟味」の「類語」と「対義語」】

ビジネスシーンでも使うことが多い言葉は、類語や言い換え表現など多くのボキャブラリーをもっていたいもの。「吟味」の周辺ワードをご紹介します。

■類語

・検討(検討/ある事柄についてよく調べ、よいかどうかを考えること)

・精査(せいさ/ある事柄の内容を明らかにするために調べること)

・熟考(じゅっこう/念を入れてよく考えること) 

・審議(しんぎ/詳しく調べ検討し、その可否を討議すること。また、審査して評議すること)

■対義語

・瞥見(べっけん/ちらっと見ること。短時間でざっと見ること)

・一瞥(いちべつ/一度、あるいはちょこっと見ること)

・一見(いっけん/一度見ること。ひと通り目を通すこと)


【「玩味」との違いは?】

「玩味(がんみ)」という言葉をご存知でしょうか。「玩味」は食物をよく噛(か)んで味わうという意味や、文章や言葉の内容を味わうという意味で使用される言葉なので、「吟味」と混同して使用されることもあるようです。「玩味」には調べるという意味はないので、「見積りの内容を玩味する」は誤りです。食材の「質」については「吟味」、「味」については「玩味」を使います。


【「吟味」を「英語」で言うと?】

「吟味」を英語で表す場合は、名詞なら[examination]や[close examination]があてはまります。

動詞の「吟味する」は[examine]や[scrutinize]に。

「吟味した品」は[a choice article]となります。

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言葉はコミュニケーションの重要なツールなだけに、よく「吟味」して使いたいもの。とはいえ会話にはスピードや勢いも必要です。じっくり吟味しながら…では会話のテンポが崩れてしまいます。日常的な会話やメールなどでの言葉選びもていねいに、「正確性」や「品性」を意識するようにしていくと、“日常的な吟味”が身に付くかもしれませんね。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『角川類似新語辞典』(KADOKAWA)/『新選漢和辞典 Web版』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) :