【目次】

一番町ってどこにあるの?「場所」

現在の一番町には、コンシェルジュ機能のついたグレードの高い中高層の高級マンションが立ち並んでいる。
現在の一番町には、コンシェルジュ機能のついたグレードの高い中高層のマンションが多い。

東京都千代田区一番町があるのは皇居の隣、都心のど真ん中です。北側には靖国通り、南側には新宿通り、東側には内堀通りが通っていて、交通の利便性は最高レベルといえます。

内堀通り沿いにある「英国大使館」。上部に英国王室の紋章が施されたギリシャ風の建物が特徴的だ。
内堀通り沿いにある「イギリス大使館」。切妻屋根のペディメントにイギリス王室の紋章が施されたギリシャ風の建物が特徴的だ。

一番町の「最寄り駅」

東京メトロ半蔵門線「半蔵門駅」
東京メトロ半蔵門線「半蔵門駅」周辺にはスーパーマーケットの「まいばすけっと」や「マルエツ プチ」がある。

千代田区内の一番町から六番町の総称を「番町」といい、その「番町エリア」の最寄り駅となるのが、JR中央・総武線が通る「四ツ谷駅」や「市ケ谷駅」。東京メトロ半蔵門線の通る「半蔵門駅」や東京メトロ有楽町線の通る「麹町駅」も最寄りで、目的地に合わせて複数の駅が利用できます。そして、一番町の最寄り駅となるのが半蔵門駅。半蔵門駅から東京駅までは15分程度、日比谷駅までは14分、霞ケ関駅までは10分ほど、永田町駅までは1分です。一番町は政治やビジネスの中心地まで、アクセスが抜群によい場所にあり、通勤にとても便利です。

一番町の「地図」

一番町の「歴史」と「由来」

一番町はなぜ高級住宅街になった?

尾張屋清七板 江戸切絵図「御江戸番町絵図」(国立国会図書館より)
尾張屋清七板 江戸切絵図「御江戸番町絵図」嘉永2〜文久2(1849〜1862)年刊(国立国会図書館より)

江戸時代、江戸城(現在の皇居)の西側にあった番町は、江戸城を防衛するための要となる場所でした。番町は高台にあるので、この地の利を生かして、江戸幕府直轄の家臣で江戸幕府の警護や護衛などを務めていた役職「番方」の旗本のお屋敷がたくさん配置されていました。上の写真「江戸切絵図 番町絵図」の右上が江戸城です。現在のイギリス大使館がある辺りには、「南部丹波守」「永井信濃守」などの大名屋敷が連なっています。現在の道幅は広くなったものの、「内堀通り」などの通りの位置などは江戸時代の地域的特性をそのまま現代に継承しています。こういった歴史的背景を今でも受け継いでいることが、番町が人気の高い高級住宅街へと発展し続けている理由です。

英国大使館の裏手。かつてお屋敷街だった面影が残っている。
イギリス大使館の裏手。かつてお屋敷町だった面影が残っている。

千鳥ヶ淵の桜並木の由来はイギリス公使からのギフト

千鳥ヶ淵では、春になるととても綺麗な桜並木が楽しめる
千鳥ヶ淵では、春になると圧巻の桜並木が楽しめる。

東京都千代田区の「千鳥ヶ淵緑道」は、春になると樹齢100年以上を誇る桜並木が満開となり、見ごろには多くの人が訪れます。千鳥ヶ淵緑道に桜が植えられるようになったのは、一番町にあるイギリス大使館が関わっています。現在でも大使館の敷地内やその周辺にはたくさんの桜の木が植えられていますが、これは明治31(1898)年にイギリス公使だったアーネスト・サトウが東京の人々への贈り物として大使館前の空き地に植えたのが始まり。イギリスは明治政府とのつながりが深く、明治5(1872)年から皇居横にあった広大な大名屋敷跡を与えられ、公使館として使用していたのです。イギリス公使館がイギリス大使館へと昇格したのは明治38年のこと。その後、現在に至るまでの120年近く、この一番町でイギリス大使館として使用されているのだそう。

英国大使館東側にある「サトウ公使植桜の地」の看板。アーネスト・サトウはイギリス出身の外交官だ。
イギリス大使館東側にある「サトウ公使植桜の地」の看板。アーネスト・サトウはイギリス出身の外交官だ。

一番町の「由来」

一番町の街並み。辺り一面マンションだらけだが、昔の番町らしさを感じる建物も一部で残っている。
一番町の街並み。辺り一面新築マンションだが、昔の番町らしさを感じる建物も一部で残っている。

江戸時代、将軍直属の家臣である旗本が甲州街道から江戸城に入ってそのまま常駐してお屋敷を建て、江戸城の裏手を固めました。その旗本たちは「番方」として組織され、それが「番町」という地名の由来になったといわれています。明治維新後、番町の旗本屋敷地は桑畑などにもなりましたが、その後には明治政府の官僚や政治家が居住する屋敷町へと変わります。それが、番町が高級住宅街といわれるゆえんです。 明治期には政治家の山県有朋や、外務大臣の青木周蔵のお屋敷も一番町近くにありました。

一番町に住んでいた文化人は?

滝廉太郎は明治27(1894)年〜明治34年にかけてこの付近に住んでいた。
滝廉太郎は明治27〜34(1894〜1901)年にかけてこの付近に住んでいた。

また、この場所には明治から昭和にかけてたくさんの学者や文人、芸術家も暮らしていました。現在の一番町で生まれ育ったのは劇作家・小説家としてもよく知られている武者小路実篤です。また、「荒城の月」や「鳩ぽっぽ」で知られている作曲家の滝廉太郎も、番町中央通り沿いに歌碑が建っています。実際に住んでいたのは歌碑もう少し先だったそうです。「赤とんぼ」や「千代田区歌」を作曲した山田耕作も一番町の住人でした。

一番町の「魅力」と「住みやすさ」

■1:気品と風格のある「番町アドレス」が手に入ります

紹介制の洋菓子店「村上開新堂」やその一角にある「山本道子の店」も一番町にある。
紹介制の洋菓子店「村上開新堂」も一番町にある。その一角にある姉妹店「山本道子の店」も人気だ。

江戸時代には旗本の武家屋敷が並んでいた番町。明治・大正・昭和にかけては文化人や芸術家が住み、歴史を紡いできました。邸宅地としてしっかりとした歴史的背景がある場所は都内でも珍しくて人気が高いです。

■2:不動産価値が落ちにくい

一番町の街並み
高級マンションが建ち並ぶ一番町。中古マンションでも価値は下がり難い。

千代田区は東京23区のなかでも圧倒的に地価が高い場所です。そのなかでも番町エリアは皇居に近く、歴史もあってブランド力が強いうえに、複数路線が使えて駅から近いという立地のよさ。その人気を裏付けるかのように、今ではたくさんの高級マンションが建ち並び、現在建設中のものも複数あります。東京都の令和5年地価公示 標準地価高順位一覧表(住宅地)によれば、上位10以内に番町アドレスは3つランクインしていて、そのうちのひとつが一番町(7位)です。不動産価値の高いエリアは魅力です。

■3:インターナショナルな街並みです

駐日英国大使館の敷地の一部が日本に返還され、令和5年よりイングリッシュガーデン「国民公園皇居外苑半蔵門園地」となった。
イギリス大使館の敷地の一部が日本に返還され、令和5年3月よりイングリッシュガーデン「国民公園皇居外苑半蔵門園地」となった。

一番町内は内堀通り沿いに「イギリス大使館」や、その近くに「パラグアイ共和国大使館」があります。そのほか番町内には「ローマ教皇庁大使館」、「ベルギー大使館」など美しい建物が有名な各国の大使館があります。イギリス大使館の敷地の一部だったと言う一番町の「国民公園皇居外苑半蔵門園地」はとても心地のよい綺麗な公園です。

■4:複数の路線が使えてどこに行くにも便利です

一番町にある「いきいきプラザ一番町」前に停車する千代田区の「地域福祉交通 風ぐるま」(コミュニティバス)。飯田橋駅や市ヶ谷駅も経由する。
一番町にある「いきいきプラザ一番町」前に停車する千代田区の「地域福祉交通 風ぐるま」(コミュニティバス)。飯田橋駅や市ケ谷駅も経由する。

東京メトロ有楽町線の通る麹町駅までは一番町から徒歩10分程度。東京メトロ有楽町線は、新木場駅、永田町駅、飯田橋駅、池袋駅などを結んでいて通勤に便利な路線です。また、一番町から市ケ谷駅までは徒歩で15分程度です。市ヶ谷駅では、JR中央・総武線、東京メトロ有楽町線・南北線、都営地下鉄新宿線など複数の路線が利用でき 、新宿方面へのアクセスにとても便利です。そのほか、徒歩15分程度で九段下駅も利用可能です。九段下駅では、東京メトロ東西線・半蔵門線、都営地下鉄新宿線が利用できます。都心の真ん中だからこそ叶えられる利便性。複数の路線が選択できるので、通勤や通学にも便利で住みやすい立地です。

■4:教育環境が私立も公立も人気です

一番町にある「東京女子学院」。レンガ作りの建物が美しい。
150年の歴史をもつ一番町の「女子学院」。レンガの校舎が美しい。

女子御三家のうちのふたつ、「女子学院中学校・高等学校」と「雙葉中学校・高等学校」が番町にあります。3つ目は本郷にある「桜蔭」ですが、こちらも電車で20分程度。番町にはそのほか、複数の名門校が集まっています。公立も人気の高い「麹町小学校」「麹町中学校」などが近くにあります。交通の便がよく、さらにご近所にも教育環境がしっかり整っているのはファミリー層にとっても安心で住みやすいでしょう。

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一番町は綺麗に整備されたイングリッシュガーデン「国民公園皇居外苑半蔵門園地」が開園、イギリス大使館などの外観が美しい建物もあり、品と風格のあるエリアだと感じました。春になると内堀通り沿いの桜並木はさぞかし綺麗なことでしょう。都心のど真ん中だからこそ叶う交通の利便性も魅力的です。昨今では高級マンションが複数建設中で不動産価値も下がりにくい。これだけの古い歴史のある番町が、今人気が高いのも納得です。

参考:千代田区ホームページ
   『千代田区立図書文化館 常設展示図録』(千代田区教育委員会)
   環境省
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PHOTO :
AC,柳堀栄子
WRITING :
柳堀栄子