深度1000メートルの探知不能な深海で、核ミサイルを搭載した最新鋭の原子力潜水艦をめぐって手に汗握る心理戦が繰り広げられるアクション・ポリティカルムービー『沈黙の艦隊』。映像化は不可能とも言われたかわぐちかいじさんの大ヒットコミックが、海上自衛隊の協力とVFX技術を用いたCG表現により実写化されました。モーツァルトの壮大な交響曲第41番「ジュピター」が大音量で流れる中、天才的な戦術に圧倒される潜水艦のバトルシーンは必見です。今作で主演とプロデューサーを兼任する大沢たかおさんと、その好敵手として共演する玉木 宏さんのインタビューの第2回目をお届けします。
【俳優・大沢たかお ×玉木 宏 インタビューVol.1】伝説の名作漫画『沈黙の艦隊』が実写化されてスクリーンに登場!
「シーバットは、たつなみはと、チームの雰囲気にもコントラストがありました」大沢たかおさん
――Vol.1では、現場の結束力が高まったお話を伺いました。大沢さん演ずる海江田艦長率いる最新鋭の原子力潜水艦〈シーバット(=やまと)〉と、玉木さん演ずる深町艦長率いるディーゼル潜水艦〈たつなみ〉、それぞれのチームの雰囲気についてもう少し教えてください。
大沢 「僕らの〈シーバット〉には、室温0度のような冷たい空気がありました。というのも、まず物理的に非常に寒さがキツい12月から1月あたりに、ストーブが少しだけ置かれた中で半袖の制服姿で演じていたんですよ。副艦長役の中村 蒼くんほか乗組員役の全員がたぶん、ぶるぶる震えながら現場をやっていたと思います。撮影環境としてはもちろん良くないですが、その過酷な環境がある種彼らの決死の覚悟というか、自分の命を呈しても何かを成し遂げたい集団である、静かで冷たく青い透明の炎のような独特の空気を生み出してくれた気がしました」
玉木 「僕のほうは、深町が乗組員に寄り添うような気持ちを意識しながら演じていました。真冬に撮った冷たく青い炎の〈シーバット〉に対して、夏の終わりに撮影した〈たつなみ〉の空気が果たして熱く赤い炎だったかどうかはわからないのですが…ただ、非常に私語の多い現場ではありました(笑)。こちらの副長役の水川あさみさん始め女性の乗員がいたり、ソナーマン(※注1)役でムードメーカーのユースケ・サンタマリアさんがいてくれたことも大きかったと思います」
大沢 「実際に僕が〈たつなみ〉の現場を見に行ったら、ものすごく雰囲気が良かったんですよ。玉木くんの人柄やムードがいい意味でみんなに伝播していて。本当に暗くて閉塞感のあるキツい環境なのに雰囲気が良かったので、“玉木くん、いいチームつくってるなあ”とすごく安心したんです」
玉木 「僕も気持ち的に〈たつなみ〉のメンバーにはとても助けられました。やはり同じ場所にずっといるのは疑似的な体験であってもつらいので、日常的に明るくしようとする会話がエネルギーや活力になっていましたね」
――今回、大沢さんはこの映画のプロデューサーでもありましたが、玉木さんは現場でご覧になっていかがでしたか。
玉木 「最初に話を聞いたときには正直、びっくりしたんです。「プレイヤー兼プロデューサーというのは、どういうスタンスでやられるんですか?」と、率直に現場でお聞きしたほどです。当然、プロデューサーとして決断すべきことやしなければならない業務がたくさんあったと思うのですが、現場にいらっしゃるときには僕らと同じプレイヤーの顔しか見せない。でもきっと裏では調整などご苦労されているんだろうと、さすがだなあと思いながら拝見していました
プロデューサーといっても、そんなにたいしたことはしてないんですよ。ただ、やっぱり現場に入ったら同じ俳優同士でいなければ仲間になれないじゃないですか。俳優は俳優の同じ温度感と世界観で、同じ時空をつくっていかなければいけない。そこの部分はいつもどおりにできていたかなと思います」
――監督の吉野耕平さんはCG制作経験ももつ気鋭のクリエイターです。現場での監督の印象も教えてください。
大沢 「寡黙な方でしたね。終始台本とにらめっこをしながら常に考えをめぐらせている様子でした。〈たつなみ〉の現場でカメラマンに“このシーンの乗員は、あせっている感情ではなく作業のみを撮ってほしい。でも玉木さんのほうは感情を撮ってほしい”とアドバイスしていたのが印象的でした。深町の揺れ動く感情と背後で粛々と作業する乗員たちの対比のコントラスト。撮影当初から演出の軸のようなものを明確に意識しているのを感じました」
玉木 「あるシーンで足元を撮っているのを見て、“そうなんだ、監督はここのシーンでそこにフォーカスを当てるのか”的な意外性もありました。違うアングルで何テイクか重ねて、演者としたら最終的にどうつないでどんな映像があがってくるのか想像がつかないような楽しみを含ませてくれるところがありました」
「“出られない”と思うと出たくなってしまう心理って不思議です(笑)」玉木 宏さん
――今作の撮影に入るにあたって、みなさんで準備されたことはありましたか?
大沢 「日本で初めて海上自衛隊の潜水艦部隊からの映画撮影協力を得て、潜水艦を見学させてもらいに行きました。国防上の関係からもちろん見学できたのは部分的です。〈シーバット〉に関しては、日本は原子力潜水艦をもたないため、アメリカで公表されているデータをつぶさに調べてそこからデザインを構築しました」
玉木 「乗員の方々の所作指導を見学させていただいたときには、〈たつなみ〉のメンバーたちの雰囲気がピリッと締まりました。海上自衛隊のご好意で撮影現場にも立ち会っていただけたので、わからない所作があればその都度現場で聞くこともできて本当にありがたかったです」
――ちなみにおふたりは、狭くて暗い潜水艦のセットでの撮影は大丈夫でしたか?
大沢 「実は僕、めちゃめちゃ閉所恐怖症なんですよ。なんですけど、閉所恐怖症ってどこか抜け道さえあれば大丈夫なんです。撮影自体はなんとか切り抜けることができました。でもさすがに防衛省へご挨拶にいったときには、まさか自分がそうだとは言えずに“もう、本当に潜水艦が好きで”とお話しました(一同爆笑)」
玉木 「僕も狭いところは得意ではないです。“外へ出ることができない”と思うと逆に出たくなってしまうのはなぜなんでしょう。映画の撮影中も「カット〜!」と声がかかったら、僕だいたい、いち早く表に飛び出していましたから(笑)」
取材中は終始和やかな表情でお話されていた大沢さんと玉木さん。それが撮影に入ると一転、玉木さんからは精悍なオーラ、大沢さんからは大樹のように穏やかな空気が感じられる圧巻のフォトセッションが展開されました。Vol.3では、おふたりの素顔に迫りましたので、お楽しみに。
■映画『沈黙の艦隊』9月29日公開!
日本近海で海上自衛隊の潜水艦が米原潜と衝突し、海江田艦長と全乗組員の死亡が報道される。しかし事故は、海江田が秘密裏に日米政府の作った原潜に乗船させるための偽装工作だった。海江田は核ミサイルを乗せたまま逃亡し、独立国家「やまと」を世界へ宣言する――
かわぐちかいじの人気漫画『沈黙の艦隊』を、大沢たかお主演・プロデューサーで実写映画化。事故を装って日本初の原子力潜水艦を奪った艦長と、彼を追う日米政府・海上自衛隊・米海軍を描く。
出演:大沢たかお、玉木宏、上戸彩、ユースケ・サンタマリア、中村倫也、中村蒼、松岡広大、前原滉、水川あさみ、岡本多緒、手塚とおる、酒向芳、笹野高史、アレクス・ポーノヴィッチ、リック・アムスバリー、橋爪功、夏川結衣、江口洋介
原作:かわぐちかいじ『沈黙の艦隊』(講談社「モーニング」)
監督:吉野耕平
脚本:髙井光
音楽:池頼広
主題歌:Ado「DIGNITY」(ユニバーサル ミュージック)/楽曲提供:B’z
プロデューサー:松橋真三、大沢たかお、千田幸子、浦部宣滋
制作:CREDEUS
配給:東宝
(C)かわぐちかいじ/講談社
(C)2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.
■大沢たかおさん衣装クレジット/ニット¥72,600(インコントロ)
■問い合わせ先/インコントロ 03-6805-1082
関連記事
- 【俳優・菅田将暉さん】本誌未収録インタビュー&未公開カット公開! 「あくまでも冷静に腰を据えて喋る『久能 整』っていう存在が今、逆に新鮮」
- 【俳優・森田 剛さんインタビュー後編】最新主演舞台からプライベートまで深掘り!
- 【俳優・杏さんスペシャルインタビュー】映画『私たちの声』で、仕事と子育てに追われるシングルマザー役に挑戦
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- PHOTO :
- 中田陽子(MAETTICO)
- STYLIST :
- 黒田 領(大沢さん)、上野健太郎(玉木さん)
- HAIR MAKE :
- 松本あきお(beautiful ambition/大沢さん)、渡部幸也(riLLa/玉木さん)
- WRITING :
- 谷畑まゆみ