雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は、NPO法人「青少年自立援助センター」の定住外国人支援事業部にて事業責任者を務める田中宝紀さんの活動をご紹介します。

田中宝紀さん
NPO法人「青少年自立援助センター」定住外国人支援事業部 事業責任者
(たなか いき)小中学校はいじめが原因で不登校に。16歳で単身フィリピンのハイスクールに留学。帰国し大学で途上国支援を学ぶ。フィリピンの児童養護施設の支援を行うなかで日本で暮らす海外ルーツの子供と出会い、’10年より現職。

日本で暮らす海外ルーツの子供を取りこぼすことのない共生社会へ

東京・福生にある「YSCグローバル・スクール」。小学生から、高校生くらいだろうか、皆熱心に勉強をしている。髪の色も肌の色もさまざまで、ヒジャブ(スカーフ)を頭に巻いている女の子もいる。オンラインで参加中の子も。

「ここは、日本で暮らす、海外にルーツをもつ子供と若者のためのスクールです。本人の国籍にかかわらず、両親、またはそのどちらかが外国出身で、日本語を母語としない子供・若者たちへの日本語教育や学習支援を続けています。彼らが抱える社会的困難は、想像以上です。私がこの活動を始めたのは’10年ですが、以来、都内全域、近県からも生徒がひっきりなしで常に100名以上、多いときには300名を超える状態で、立ち止まる暇もありませんでした」

1990年の入管法改正以降、日本各地で、ボランティアによる海外ルーツの子供たちに向けた日本語教育サポートが行われてきた。田中さんたちはそこから進んで、日本語学校としてだけでなく、居場所を提供するフリースクールとして、進学や就職のための塾としてのニーズにも応えている。

「日本語ができないことは、さまざまな“機会”を逃すことにつながります。外国人=労働力か一時的なインバウンドか、と極端な振り幅でとらえられがちですが、日本で生活する外国人は300万人もいる。生活者が享受できるはずの社会的インフラ(※)を、彼らにもちゃんと開放し、届ける。そのために間に入るのも大切な仕事です」

すべての人が当たり前に、“普通の生活”が送れるように。

「共生社会の実現に向けて、仕組みは少しずつ整い始めてきました。あとは、心の壁です。知ること、関わることから始めてほしい」

【SDGsの現場から】

●少しでも多くの子供・若者に支援を届けたい

生徒は地元を中心に、近隣の自治体からも集まる。リモートで授業に参加することも可能。

●交流を深めるイベントも定期的に開催

教室での勉強のほかに遠足などのイベントも。写真は恒例となっている公園でのピクニック。

※社会的インフラとは…「YSCグローバル・スクール」でも3割が困窮世帯。しかし、子供食堂などすでにある支援情報も、共有されていないことが多いという。

PHOTO :
望月みちか
取材・文 :
剣持亜弥(HATSU)
写真提供 :
YSCグローバル・スクール