【飾って愛でて、持って楽しむ!「器」こそ日常のアートです】

お気に入りだからこそ、いつも目に触れるところに!アート目線の器選びで、暮らしはもっと豊かになります。眺めているだけで心が和んだり、はっとしたり。料理を盛れば、料理を引き立て、食卓を彩る立役者に。日々の暮らしを豊かなものにしてくれる「器」は、まさにアート、といっても過言ではありません。

ときにはアートのように、ときには日常の道具として「器」を楽しむ達人の暮らしをご紹介します。絵画やオブジェを選ぶように、器も、アートとして選び、使い、愛でてみませんか?

達人の「アートな器使い」拝見!「ひとつだけでも絵になる存在感のある器は、それだけでアートです」──建築家 半谷 仁子さん

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半谷 仁子さん
建築家
(はんがい・じんこ)東京世田谷「ゼスト」や代官山「モンスーンカフェ」、白金「ラ・ボエム」などの店舗や、著名人の住宅などを多く手掛ける。光と風と緑を大切にした大胆かつ繊細な設計が人気。

【On the Table】コンポート皿を使って、器の中に器をイン。パーティシーンを盛り上げるデザート皿として活躍

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直径約44cmのイムディーナ・ガラスは、シルバーのコンポート皿を入れて高さを出すのがポイント。自家製プリンに、たっぷりのグレープフルーツを添えて。

建築家・半谷仁子さんのご自宅には、大きな器がそこかしこに。リビングのサイドテーブルにオブジェのように飾られていたり、階段脇やテラスの床にポンと置かれていたり。季節の花や枝が生けられ、花器として使われていることもあれば、キッチンの大きな絵皿には庭で採れたレモンがわさっと盛られていて…。どの器も大きくて存在感のあるものばかりですが、部屋のインテリアやいきいきと生い茂ったグリーンとの相性は抜群。アートのように自然に溶け込んでいます。

「昔から、大きい器が好きなんです(笑)。このイムディーナ・ガラスも、そう。6、7年前、雑誌で見た鮮やかなブルーにひと目惚れして、どうしても手に入れたくてマルタ島へ。気に入った色と柄、フォルムが決まったら、『この店でいちばん大きなものをください!』とお願いして、奥から出してきてもらいました。空っぽだったスーツケースは、大きなイムディーナ・ガラスの器たちであっという間にいっぱいに。ものすごく重かったけれど、それもまたいい思い出です」

この日は、旅先から持ち帰った珍しいワインを楽しむ会。涼やかでおおらかなフォルムと、地中海の海の色を感じさせるイムディーナ・ガラスの器は、サラダやデザートを盛る器として大活躍。テーブルを華やかに彩ります。

【As Art】地中海の鮮やかな海の色を思わせるマルタ島のイムディーナ・ガラスは、花器としても、オブジェとしても

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鮮やかなブルーを引き立てるのは、南仏サン・ポール・ド・ヴァンスにあるマーグ財団美術館のショップで買った若手作家のシンプルなリトグラフ。日本で仕立てたシルバーの額装が、水墨画のような静かなタッチに華やぎを添える。

「大きい器は、ものとしての存在感や迫力はもちろん、柄や色、プロポーションを大胆に楽しめるおもしろさがあります。とはいえ、ただ大きければよいというのではありません。雄大な自然を感じるような色や柄、土の感触や、職人の手の温もりを感じるものなどが好きですね。なにより、いちばんこだわるのは、フォルム、形です。プロダクトでもクラフトでもアートでもないボーダーレスなもの、またはそれらが絶妙なバランスですべて入っているもの。それでいて、つくり手の気配を感じる…、そんな器に惹かれます」

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3.4mに及ぶ大きなダイニングテーブルには、ご自身が練習用に使用した大きな書の半紙をクロス代わりに。この日は、鮮やかなイムディーナ・ガラスが食卓の主役。沖縄ガラスのピッチャーやバーガンディ色のアメリカのアンティークグラス、カッティングボードや庭のレモンの枝が脇を固め、室内にいながらまるでガーデン・パーティのような雰囲気。1.マルタ島の伝統工芸、イムディーナ・ガラスには半谷さんお手製のプリンを、2.鍛金作家・中嶌真太さんの銀のオブジェを、なんとワインクーラーに!、3.大きな木をくりぬいたオブジェには、焼きたてのバゲットを大胆にのせて。

さらに、出合った瞬間「どう使おう? 何に使おう?」と、想像力がかき立てられる器が好き、と半谷さん。

「初めから使い勝手が決まっているものより、どう使うかこちらに委ねてくれるような、おおらかな器は楽しい。それが、アートとしても日々の道具としても使える『器』なのかもしれませんね」

【As Art】

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昔、海外のZARAHOMEで見つけて持ち帰った木のオブジェ(直径約30cm。かなり重い!)は、お店ではディスプレイとして飾られていたもの。

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サイドテーブルには、イムディーナ・ガラスが絵画のように置かれて。

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現在はロンドンで活躍する鍛金作家・中嶌真太さんの作品。薄い銀の板にこれほどの装飾を施すには繊細な技術が必要だとか。

 

※作家の器は個展での販売が中心です。取り扱い店舗では不定期入荷のため、在庫がない場合もあります。器は手づくりのため、色や形、サイズに個体差があります。

PHOTO :
川上輝明
EDIT&WRITING :
田中美保、古里典子(Precious)