「不幸中の幸い」は不幸な出来事が起こった際、想定される最悪の状況と比べれば「よいこともあった」と思えるときに使われるフレーズです。誰かを慰めたり、自分を納得させるために用いることもあります。とはいえ、使い方には注意点も。今回は「不幸中の幸い」の意味や言い換え表現、対義語や英語表現について解説します。
【目次】
【「不幸中の幸い」の「意味」とは?「基礎知識」】
■読み方
「不幸中の幸い」は「ふこうちゅうのさいわい」と読みます。
■意味
「不幸な出来事のなかにあって、わずかに救いとなること」を指して「不幸中の幸い」と表現します。もちろん「不幸な出来事」は起こらないほうがよいのですが、実際に不幸なことが起きてしまった人に、「想定される最悪の状況」ではなく「わずかによいこともあった」と慰めたり、自分を納得させるために使われます。基本的にはポジティブな意味の慣用句です。
【「使い方」がわかる「例文」3選】
では次に「不幸中の幸い」を使った例文をみていきましょう。悪いこと(不幸)が起こったのを前提として、いいこと(幸い)もあった、運がよかったという主旨の文章になっています。
■1:「出火元は独居老人のアパートの一室だったが、発見が早くボヤで済んだのは不幸中の幸いであった」
■2:「交通事故に巻き込まれたのは気の毒だったが、打撲程度で済んだのは不幸中の幸いだったと言えるだろう」
■3:「盗まれたバッグにパスポートが入っていなかったのは、不幸中の幸いだった」
【 同じ意味の「類語」「言い換え」表現】
「不幸中の幸い」はどんな言葉に置き換えられるでしょう。いくつかご紹介します。
■「言い換え」表現
・せめてもの慰め
・唯一の救い
■同じような意味の「ことわざ」は?
・怪我の功名
過失や災難と思われたことが、思いがけなく好結果をもたらすことを「怪我の功名」と言います。また、なにげなくしたことが、偶然にも好結果を得たときにも用いられます。
・命あっての物種
命があって初めて何事もなし得ることから、「命がなくなればおしまいだ」の意味となります。「不幸中の幸い」には、「不幸なことは起こったけれど、命が助かってよかった」というニュアンスを含んで使われることも多いフレーズです。
■「四字熟語」にすると?
・九死一生
「九死」とは「死ぬ確率が9割」、「一生」は「生きる確率が1割」。合わせて「ほとんど死にそうな状態」を「九死一生」といいます。ほとんど死にそうな状態からようやく助かった際にも使われます。
・万死一生
「死ぬ確率が1万なのに対し、生き残る可能性が1に過ぎない程、危険な状態」という意味。「九死一生」同様、「かろうじて生き延びる」という意味で使われることが多い四字熟語です。
【「反対語」「対義語」は?】
■泣きっ面に蜂
「苦痛の上に苦痛が重なること」を「泣きっ面に蜂」といい、「入試には落ちるし、怪我はするし。泣きっ面に蜂だ」のように使われます。
■弱り目に祟り目
「困っている時に更に悪いことが起こること。不運が重なること」を「弱り目に祟り目」といいますよ。
【「失礼」になる場合も…。使い方の注意点】
基本的には「わずかではあっても、よいこともあった」とポジティブな気持ちを表現する言葉ですが、何を「幸い」と感じるかという価値観は、人によって異なります。ある人にとってはゴミ同然のものが、別の人にとっては想い出の品だったりするのは、よくあることです。
例えば、財布を落とした人に「たいした金額が入ってなくてよかったね」と慰めたところ、「あの財布は亡くなった母からのプレゼントだったんだ」と言われたら、それは「幸い」ではなかったことになります。また、台風などの災害で、自分の自宅や身内、勤め先などに大きな被害がなかったとしても、ほかの地域で甚大な被害があった場合は、相手の身内にとっての「幸い」ではなかった可能性があります。「台風が関東を逸れたのは不幸中の幸い」などとあからさまに喜ぶのは避け、まずは「ご親族さまもご無事でしたか」といった配慮を相手に示すことが大切です。
【「英語」で言うと?】
「不幸中の幸い」に相当する英語表現は、[a blessing in disguise]です。[blessing]は「祝福、恵み」。[in disguise]で「見せかけの」。組み合わせることで「不幸中の幸い」という意味になります。
また、「もっと悪くなる可能性もあった」と示すことで間接的に「不幸中の幸い」を表現することも可能です。
・It could have been worse.(不幸中の幸いだ)
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「不幸中の幸い」は基本的にポジティブなニュアンスの言葉ですが、相手を慰めるために言ったつもりが、かえってその人の心の傷つけてしまうケースもあります。「何を幸いと捉えるか」という価値観は、人によって異なるもの。まずは相手に対する配慮を示すことが大切です。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) /『四字熟語ときあかし辞典』(研究社) /『角川類語新辞典』(角川書店) :