「ヤマトナデシコ七変化」という言葉をご存知ですか? 昭和後期に青春を送った人には小泉今日子さんの楽曲として、平成以降に生まれた人ならKAT-TUNの亀梨和也さん主演のドラマを思い浮かべるでしょうか。今回はこの「ヤマトナデシコ」について。漢字や意味は? ヤマトナデシコが七変化ってどういうこと? サクッと解説していきましょう。
【目次】
【「大和撫子」の「読み方」と「意味」】
■読み方
「大和撫子」と書いて「やまとなでしこ」です。
■意味
『日本国語大辞典』によると「日本女性の清楚な美しさをたたえていう語」となります。日本女性と限定しているのは、「大和(やまと)」が広義には日本国の異称だからです。
■由来
そもそも「大和撫子」は、植物で、ナデシコ科ナデシコ属の多年草のうち、日本原産のカワラナデシコの俗称です。同属で中国原産のセキチクをカラナデシコ(唐撫子)と呼ぶのに対照させた名称なのです。
そして、秋の七草のひとつで、初秋の山野に薄紅色の可憐な花を咲かせることから、秋の季語として謳われます。ちなみに、それ以外の秋の七草は、萩、薄(すすき)、葛花(くずばな=くず)、女郎花(おみなえし)、藤袴(ふじはかま)、桔梗(ききょう)です。「大和撫子」は「清楚で可憐な美しい日本女性」と解釈されますが、薄紅色や白などの、先が細かく裂けた特徴的な花びらが風に揺れる姿は、まさに可憐で優雅。花言葉の「純愛」や「無邪気」ともピッタリですね。
【「大和撫子」といわれる人の特徴】
では、具体的にどんな女性を「大和撫子」というのでしょうか。身体的特徴以外を挙げてみましょう。
■言葉遣いが美しく正しい日本語を話す
■立ち居振る舞いが優雅
■謙虚でいながらしっかりした芯をもっている
■清潔感がある
■他人に優しい
■教養がある
■協調性や柔軟性がある
■聞き上手
■気遣いができる
「大和撫子」と呼ばれるのは大変そう! 前述の楽曲「ヤマトナデシコ七変化」では、大和撫子といわれる女の子にもさまざまな面があり、一筋縄ではいかないのだと歌っています。
【「類語」「言い換え」「反対語」は?】
■「類語」「言い換え」表現は?
「大和撫子」と同じタイプの女性を表すなら「淑女」でしょうか。しとやかで上品な女性、品格の高い女性を表す言葉です。また、「清楚」や「しとやか」、「美人」「可憐」「才色兼備」「おくゆかしい」なども日本人女性を形容する言葉としても使われますが、これらは厳密には性別を限定していません。「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という句を聞いたことがるでしょうか。これは、立っても座っても歩いても、姿が艶やかで魅力的な美人を表した、近世のはやり歌から誕生したもの。七・七・七・五句という都々逸(どどいつ)の形式を備えています。まさに「大和撫子」ですね。
■反対語は?
「大和撫子」がある種の日本女性を表すのに対し、日本人の男性の呼称に「益荒男(ますらお)」があります。 「益荒男」はりっぱな男性、勇気のある強い男性に対して使うもの。古くは 朝廷に仕える官僚の役職名で、武人や兵士、狩人や漁師も表します。
【「大和撫子」を英語で説明すると…】
「大和撫子」に相当する英単語はありません。あえて英語で説明するなら[woman with traditional and graceful mood](伝統的で優雅な雰囲気をもつ女性)でしょうか。現代ではあまりしっくりきませんね。
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芍薬は痛みや筋肉のこわばりをやわらげ、牡丹は腹部に血液が滞った状態を改善し、百合は心身症のような状態に用いる、いずれも生薬(しょうやく)です。「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」が示すのは、この生薬の用い方なのだとか。健康な女性はこれらの花のように美しい、という意味にも解釈できますね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『角川類似新語辞典』(KADOKAWA)/『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) :