【目次】

九段南ってどこにあるの?「場所」「最寄り駅」「治安」

東京駅までの距離は?「場所」

九段坂上には「武道館」のある「北の丸公園」がある。写真右手奥が尊王攘夷運動で活躍した「品川弥二郎像」。手前が「大山巌像」で、初代陸軍大臣となった人物だ。
写真は北の丸公園の入り口にある「九段坂公園」。右手奥が尊王攘夷運動で活躍した「品川弥二郎像」。右手前は「大山巌像」で、初代陸軍大臣となった人物だ。そのほか、九段坂の南には「日本武道館」で有名な「北の丸公園」もある。

「九段」は、東京都千代田区の地名の名称で「くだん」と読み、皇居の周りを取り囲む内堀の北側と、さらにその外側、外郭を取り巻く外堀との間の帯状のエリアに位置します。「九段エリア」の中央を東西に通る「九段坂(靖国通り)」に対して北側が「九段北」、南側に広がるのが「九段南」と分かれていて、今回取り上げる九段南は1丁目~4丁目まであります。ちなみに、現在、「九段」だけの地名はありません。

二七通りは電線が地中化されていて街並みがとても綺麗だ。もともとは「二七不動の通り」と呼ばれていて、幕末に近隣にあった旗本のお屋敷内に不動明王があったことに由来する。
「二七通り」は電線が地中化されていて街並みがとても美しい。もともとは「二七不動の通り」と呼ばれていて、その名前は幕末に近隣にあった旗本のお屋敷内に不動明王が祀られていたことに由来する。

九段南エリアは閑静な場所で、富裕層の住みたい街として人気の高いエリアです。九段南エリアから「二七(にしち)通り」を挟んで南側には「番町」があり、どちらもに高級マンションがたくさん並んでいます。皇居の北側にある「九段下駅」から東側の「大手町駅」までは電車で5分、皇居の南東側の「東京駅」までは10分程度。皇居から少し離れた西側にあるターミナル駅の「新宿駅」までも10分程度。電車の便がとてもよく、通勤・通学には最高の立地です。

九段南の「最寄り駅」

九段下駅近くには、1986年のハレー彗星地球接近を記念して建立したという「寿人遊星像」がある。
九段下駅近くには、1986年のハレー彗星地球接近を記念して建立されたという「寿人遊星像」がある。

九段南エリアの最寄り駅はふたつ。ひとつが東端にある「九段下駅」で、東京メトロ東西線・半蔵門線と都営新宿線の3路線が通っています。もうひとつが西端にある「市ケ谷駅」で、JR中央・総武線のほかにも東京メトロ南北線や有楽町線など複数の路線が利用可能です。さらに、JR総武線と東京メトロ東西線・有楽町線・南北線、都営地下鉄大江戸線の「飯田橋駅」、東京メトロ半蔵門線の「半蔵門駅」も徒歩で15分程度。行き先に合わせてさまざまな路線が使える環境は最高! まさに東京の中心地だからこそ叶えられる利便性の高さです。

飯田橋駅から、写真の市ケ谷駅周辺までは、総武線や中央線の通る外堀沿いを歩いて10分程度。途中、外濠公園があり緑の多い遊歩道になっている。写真正面にある外堀の反対側は新宿区。
飯田橋駅から、写真の市ケ谷駅周辺までは、総武線や中央線の通る外堀沿いを歩いて10分程度。途中、外濠公園があり緑の多い遊歩道になっている。写真正面にある外堀の向こう側は新宿区。

九段南の「治安」

イタリア文化会館があるのは九段南2丁目。写真にある赤い外壁がお洒落な建物だ。イタリア語語学コースもあり、そのほか様々な交流イベントが行われている。近くには千鳥ヶ淵緑道がある。
赤い外壁がお洒落な建物は、九段南2丁目にあるイタリア文化会館。イタリア語語学コースほか、さまざまな交流イベントが行われている。近くには千鳥ヶ淵緑道がある。

「令和4年 区市町村の町丁別、罪種別及び手口別認知件数」によれば、九段南の年間の犯罪発生状況は22件。皇居にも近い位置にある九段南は、九段北や隣接する番町エリアとともに、学校や大使館などが多く、警備もしっかりしているエリアで、九段北と三番町も20件です。ちなみに、渋谷区恵比寿1丁目〜4丁目は96件。これと比べても、九段南エリアがいかに治安がいいかがわかります。

九段南の「地図」

九段南の「歴史」と「由来」

なぜ高級住宅街に? 九段南の「歴史」

『番町絵図』(弘化3年)近江屋版は実用性を重視した地図。番町周辺には旗本屋敷が密集している。
『番町絵図』(弘化3年)近江屋版は実用性を重視した地図。番町周辺には旗本屋敷が密集している。(国立国会図書館デジタルコレクション)

江戸時代、江戸城を中心に南東部の低地部には外様大名屋敷や幕府諸施設が、そして、北西部の高台部分には旗本や譜代大名の居住地が置かれました。この、北西部の高台部分にあったのが、現在の「九段南」エリアを含む「番町」と呼ばれるエリアです。「番町」という呼び名は、江戸城を守っている大番組の旗本のお屋敷が、江戸城の西側に高密度で分布していたことが由来。碁盤の目のように通る道には「○番通り」と名前が付けられ、お屋敷の場所がわかるようになっていました。現在と位置は異なりますが、当時から「番町」は一番町から六番町まであり、九段坂通りの一帯は「三番町通り」と呼ばていました。

「帯坂」にある「日本棋院会館」(五番町)。国内最大級の対局場を構えた囲碁普及の拠点。資料館もある。
「帯坂」にある「日本棋院会館」(五番町)。国内最大級の対局場を構えた囲碁普及の拠点で資料館もある。

ちなみに、すぐ五番町(現在の一番町)を舞台にした有名な怪談に「番町皿屋敷」があります。この怪談は、お菊という女性が悲惨な死を遂げて幽霊になるというもの。「1枚、2枚…」とお皿を数えていって10枚を数えることができないという話はとても有名ですよね。同じような怪談は全国に存在していますが、江戸の番町は大名や旗本のお屋敷が多かったことから、こういった物語が定着しやすかったと考えられます。九段南4丁目と五番町の間にある「帯(おび)坂」という坂には、お菊が髪をふり乱し、帯を引きずりながらここを通ったという伝説が残っています。こちらの坂は外堀にある市ケ谷御門へ抜ける切通しとして作られたので「切通し坂」という名もあります。

写真正面の緑が「靖国神社」。目の前を靖国通りが通る。九段下駅から靖国神社まで続く坂道が「九段坂」と呼ばれる。靖国通りの一部だ。
「靖国神社」(左)前の靖国通り。九段下駅から靖国神社まで続くこの坂道は「九段坂」と呼ばれる。

靖国神社のある九段坂は四谷御門の台地の東端に位置し、江戸時代、坂を上りきった場所からは日本橋や浅草、遠くは現在の千葉県にあたる安房国(あわのくに)や上総国(かずさのくに)の山々まで見渡せたそうです。そして西側には富士山の全容を拝み見ることができました。とても眺望のよい場所だったのです。

靖国神社北側、富士見2丁目と九段北3丁目の坂道を「富士見坂」という。この辺りは富士山がよく見えたそう。
靖国神社北側、富士見2丁目と九段北3丁目にある坂道「富士見坂」。この辺りは富士山がよく見えたそう。
九段南2丁目にある「三番町共用会議所」。ここにはもともと山縣有朋の邸宅がありました。
九段南2丁目にある「三番町共用会議所」。千鳥ヶ淵沿いに静かに佇む。

千鳥ヶ淵のお隣、九段南2丁目には国の会議所である「三番町共用会議所」があります。ここには内閣総理大臣を2度務めた山縣有朋の洋風建築の邸宅がありました。明治18年に建てられた当時の建物は残っていませんが、明治の面影が残る美しい日本庭園が今でも保存されています。

九段3丁目の街並み。この辺りは料亭、美味しそうなレストランなども多い。
九段3丁目の街並み。この辺りは料亭や、美味しい料理が楽しめるレストランなども多い。

関東大震災後、昭和8(1933)年に復興工事と共に九段エリアの区画整理が行われました。そのときに、靖国通りや近くを通る目白通り、内堀通りなどの道路幅が拡張され、この周辺の利便性が拡充されました。ちなみに、九段南2丁目~3丁目は昭和初期には花柳街として栄えていた場所でした。明治以降、神楽坂や新橋に並んで政財界の著名人らがこの場所を訪れたそうです。

九段南2丁目、千鳥ヶ淵の近くにインド大使館がある。
九段南2丁目、千鳥ヶ淵の近くにあるインド大使館。

そして、この周辺には明治期から数々の公使館や大使館が置かれていました。ミッションスクールなども多く立地し、国際色豊かな街へと発展します。さまざまな機関がこの場所に集結しているからこそ、この場所は今も昔も人気の高い高級住宅街なのです。

九段南の「由来」

この坂道は「鍋割坂」といいます。鍋を伏せた形状をした台地を割るように坂道が通っているから。歴史のあるこの辺りには、様々な由来の坂道がある。写真正面が千鳥ヶ淵。
鍋を伏せた形状をした台地を割るように坂道が通っていることから、この坂道は「鍋割坂」という。歴史のあるこの辺りには、さまざまな由来の坂道がある。写真正面は千鳥ヶ淵。

この界隈が「九段」と呼ばれるようになったのは江戸時代から。四谷御門の台地から神田方面に下る坂道に沿って石垣の段が築かれ、そこには江戸城で勤務する役人のための御用屋敷が並びました。その石垣が九段あったことから、九段という通称が生まれたという説があります。関東大震災以前は、九段坂はとても勾配がきつい場所として有名で、坂の下には、荷車をあと押しして生計を立てる「押屋(おしや)」が常に集まり、客を待っていたほどだったそうです。

錦絵右側が九段坂、左側が江戸城田安門。広重『飯田町九段坂之図』(国立国会図書館デジタルコレクション)
錦絵右側が九段坂、左側が江戸城田安門。歌川広重『東都名所坂つくしの内 飯田町九段坂之図』(国立国会図書館デジタルコレクション)
靖国通りには「一口坂」というバス停がある。この名は九段北3丁目から4丁目の間を通る坂道の名前で「いもあらいざか」と読む。「いもあらい」とは疱瘡のこと。この近くに疱瘡にあらたかな社があったのでしょうか。
靖国通りの「一口坂」というバス停留所。「一口坂」は九段北3丁目から4丁目の間を通る坂道の名前で「いもあらいざか」と読む。「いもあらい」には「疱瘡(ほうそう)を洗う(治す)」という意味があり、千代田区の公式サイトには、坂の下に疱瘡にあらたかな一口稲荷が祀られており、それが坂の名前の由来になったのではと書かれています。

住みやすさは?九段南の「魅力」

■1:電車はもちろん、車移動もしやすい場所にあります

目白通り沿いには「千代田区役所」があります。
は内堀通り沿いにある「千代田区役所」。

九段南は、複数の駅と路線が使える電車移動はもちろん、車での移動もとても快適な位置に立地しています。エリアの北側には東西に「靖国通り」、南方向へ「内堀通り」、西側を通る外堀に沿って北東から南西に「外堀通り」が通っています。

内堀通り。写真左には「イタリア文化会館」。右手に「二松学舎大学」がある。
内堀通り。写真左は「イタリア文化会館」、右手は「二松学舎大学」がある。

エリア内のすべての道路幅は広く、移動はスムーズ。そして、すぐそばには首都高速5号池袋線も通っています。例えば、東京駅や新宿駅までは車で12分程度。羽田空港までは30分程度、そして成田国際空港までは1時間程度、箱根までは1時間半程度で到着できます。九段南は遠出にも便利な立地です。

■2:不動産価値の下がりにくい場所です

お隣の番町にも、高級マンションがたくさん建っています。
お隣の番町にも、高級マンションがたくさん建っています。

九段南エリアとそのお隣「番町」にはコンシェルジュ付きの超高級マンションが建ち並びます。東京都財務局による「令和5年地価公示 標準地価格高順位一覧表」において、「番町」は上位に多数ランクインするエリアです。交通の便もよいこのエリアには、さらに複数のマンションが建設中。そもそも不動産取引件数も少ないうえに販売価格も高く、今後も価値が下がりにくいエリアといえそうです。

■2:歴史のある文教地区です

三番町には「九段小学校」もある。とても人気のある公立小学校だ。
三番町にある「九段小学校」は、とても人気のある公立の学校。

広い大名屋敷があったこの周辺には、その敷地の広さを生かしてか、たくさんの学校があります。三番町にある「二松学舍大学」は、明治10(1877)年創立。第3代舍長は、新一万円札の顔となる渋沢栄一氏です。同じく三番町にある「大妻女子大学」は、前身となる私塾が、明治41(1908)年に大妻コタカにより開設されました。そのほか、東京家政学院大学(三番町)、専修大学(神田神保町3丁目)、法政大学(富士見2丁目)、白百合学園(九段北2丁目)、女子御三家といわれる雙葉学園(六番町)と女子学院(一番町)、暁星学園(富士見1丁目)などなど…どの学校も明治期から昭和初期にできた歴史のある学校です。

神保町駅近くにある「神保町ブックセンター」。本が買えて読める喫茶店だ。
神保町駅近くにある「神保町ブックセンター」。本が買えて読める喫茶店だ。

九段下駅からお隣の神保町駅までは徒歩で5分程度。古書店の街として知られる神保町周辺にはたくさんの書店が並んでいます。神保町は明治以降に学生の街として発展、書店や古書店が数多く軒を並べ、昭和初期には学生たちが行き交う街となったそうです。九段下駅から神保町駅までの道のりには、古書店や本が読めるカフェなどもあり、散策が楽しいエリアです。また、神保町には美味しい食事を楽しめるレストランもたくさんあります。

靖国通り沿いの成城石井
神保町駅と九段下駅の間、靖国通り沿いの成城石井(神田神保町3丁目)。

■2:桜並木で有名な千鳥ヶ淵に近い場所です

緑豊かな千鳥ヶ淵緑道。愛犬との散歩を楽しむ姿も。
緑豊かな千鳥ヶ淵緑道。愛犬との散歩を楽しむ姿も。

春になると桜が満開になる「千鳥ヶ淵緑道」は、毎年世界中から100万人以上の人が訪れるというお花見の名所です。期間限定で夜桜ライトアップもされ、幻想的な景色が楽しめます。お花見の季節ではなくても、内堀周辺は緑がとても多くて散歩が心地よいエリアです。都会のど真ん中ですが、犬のお散歩を楽しんでいる住民も数多く見かけます。

■3:周辺に遊べる文化施設が複数あります

北の丸公園内にある「科学技術館」。科学技術について学べるスポットだ。
北の丸公園内にある「科学技術館」。科学技術について学べるスポット。

東京のど真ん中に位置する九段南の周辺には、実は遊べるスポットがたくさん点在しています。例えば、近隣の「北の丸公園」内には、「東京国立近代美術館」や「科学技術館」があります。また、大きな会社も多いエリアです。外堀を越えて新宿区市ヶ谷にはDNP大日本印刷が運営するオープンイノベーション施設「DNPプラザ」があります。ここでは様々な企画展が開催され、カフェも併設されています。そのほか、発展途上国について学べる「JICA地球ひろば」も有名です。ちょっと足を延ばせば、東京ドームに併設された「東京ドームシティアトラクションズ」へ行くことも。また、東京のお伊勢さまとして親しまれ、縁結びの神様が祀られている「東京大神宮」(富士見2丁目)は近年パワースポットとしても注目されています。

東京大神宮は明治13年に創建。日本で初めて神前結婚式をこなった神社です。
東京大神宮は明治13(1880)年に創建。日本で初めて神前結婚式を行った神社です。

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東京のど真ん中、交通の便がよい九段南の立地は最高です。学校やビルが多く、どこに住む場所が? と思われるかもしれませんが、九段南エリアにはマンションが建ち並んでいます。街なかはとても静かで暮らしやすそうな場所でした。千鳥ヶ淵緑道にも近く、緑も豊富。子どもの学校の選択肢も豊富です。ここならば安心して暮らせそうです。

参考:千代田区ホームページ
   千代田区立日比谷図書館文化館 常設展示図録(千代田区教育委員会)
   千代田区観光協会
この記事の執筆者
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PHOTO :
AC,柳堀栄子
WRITING :
柳堀栄子