「またぜひ、お誘いください」と笑顔で言われ、「これは社交辞令? それとも本音?」と判断に迷うことはありませんか?「社交辞令」は「儀礼的なほめ言葉や挨拶」のこと。人間関係を円滑に進めるために、社会人として必要なスキルではありますが、言葉通りに受け止めて、それが社交辞令だったときのショックは大きいもの。今回は「社交辞令」の意味や「外交辞令」との違い、「社交辞令」の見極め方を解説します。

【目次】

社交辞令は人間関係を円滑にするため使われます。
人間関係を円滑にするために使われます。

【「社交辞令」の「意味」など「基礎知識」】

■「意味」は?…簡単に言うと「形式的な挨拶」ってこと

「社交辞令」とは、「人付き合いを円滑に進めるための、儀礼的なほめ言葉や挨拶」のこと。ビジネスシーンだけでなく人間関係全般において、自分から口にしたり人から言われたりするのは珍しいことではありません。「社交」とは「世間での交際」、「辞令」は「人と応対するときの形式的な言葉や挨拶」のこと。このふつたつで構成された「社交辞令」は「世間での人付き合いを円滑にするための形式的な言葉や挨拶」という意味になるのです。別れ際の「また今度」という挨拶のように、ある意味、習慣化した「社交辞令」もありますね。


【「社交辞令」と「外交辞令」の違い】

「社交辞令」とよく似た言葉に「外交辞令」があります。違いをご存じですか?

■「外交辞令」とは

「相手に好感を抱かせるように、表面を繕って言う言葉。お世辞」を「外交辞令」と言います。「口先だけの美辞麗句」と言い換えることもできますね。

■「社交辞令」との違いは?

「社交辞令」との違いを理解するために、まずは「外交」の意味を復習しましょう。「外交」とは、日常的にさまざまな意味で用いられます。外国との交際や交渉、ある団体の外部に対する働きかけ、さらに会社などで外部へ出て訪問することなども「外交」と称しますが、一般的に「外交」と言えば、「国家と国家の交渉関係」を指します。「世間的な人付き合い」を意味する「社交」よりもオフィシャルな側面が強く、ビジネスや政治の世界における「美辞麗句で飾られた形式的な挨拶」を指すのが「外交辞令」です。

また「社交辞令」の目的が「人間関係を円滑に進めるため」であるのに対し、「外交辞令」の目的は「交渉を有利に進めるため」であったり、「自分の印象をよくするため」であったりします。「外交辞令」のほうが緻密で戦略的なものであると言うことができそうです。


【ビジネスで使われがちな「定番」フレーズ6選】

「社交辞令」として一般的によく使われるフレーズをご紹介しましょう。私たちが職場やプライベートで最も頻繁に「社交辞令」を使うのは、別れ際の挨拶でしょうか。相手からの提案や依頼を断る際にも、相手の不快感を和らげるために「社交辞令」を使うことが多いようです。いずれにせよ、基本的には相手への気遣いから発せられる言葉です。

■「またぜひ、ご一緒しましょう」

■「またお声掛けくださいね」

■「こちらから、またご連絡しますね」

■「今回はご期待に添えませんが、またいずれ、よろしくお願いいたします」

■「都合がついたら伺います」

■「お若く見えますね!」


【真に受けると恥ずかしい!「本心」との見分け方】

「社交辞令」は基本的には相手への気遣いから発せられる言葉ですが、取引先など、損得が絡む人間関係においては、本心からではない「お世辞」であることも少なくありません。たとえれば、バレンタインに配る義理チョコのようなもの。お互いに「社交辞令」とわかって交わす挨拶ならよいのですが、「本心?」と見分けが難しい「社交辞令」はどう判断すればよいのでしょうか。

■具体的な日程の提案がない

「また食事しましょうね」と言われたときに「では来月下旬はいかがですか?」などと返すと、明快な返事がない…これは典型的な「社交辞令」です。「それなら、再来月は?」などと代替案を何度も提案してしまうと、相手から避けられてしまうことになりかねません。気を付けましょう。

■連絡するのは常にこちらから

「また今度」と言う割には、自分からは連絡してこない…「次はこちらから連絡するね!」は高確率で「社交辞令」です。

■「お若く見えますね」はうのみにしない

異性や年下の同性から「お若く見えますね」と言われたら、誰でも悪い気はしないものです。とはいえ「お若く見える」は女性に対する社交辞令の典型的フレーズ。相手が本気でそう思っているなら、「肌が…」あるいは「着こなしが…」など、具体的な言葉が続くはず。本心である可能性もないとは言えませんが、「若く見える」と言われてはしゃぐより、軽く微笑んで「ありがとう!」とさらっと流すほうが断然スマート。


【「社交辞令」の「類語」は?】

■(お)世辞

「お世辞」とは「相手に取り入るために必要以上にほめる言葉」。付き合いを円滑に進めるための「社交辞令に対し「お世辞」は「相手に気に入られるため」に使う言葉です。「お世辞」と同じ意味合いで、もっと俗な表現として「おべっか」や「おべんちゃら」があります。

■空(から)世辞

「上辺ばかりで心のこもらないほめ言葉」を「空世辞」といいます。

■美辞麗句

「美しく飾りたてた言葉やフレーズ」を「美辞麗句」といいます。字の並びは美しく、ほめ言葉のようですが、実際には「中身が伴わない」ことを批判的に表現する際に使われることが多いです。


【「英語」で言うと?​】

「社交辞令」を英語で表現するならば、「儀礼的な」という意味をもつ[polite]や、「外交的な」「そつのない」といった意味の[diplomatic]が使われます。

・He said it just to be polite .(あれは社交辞令だよ)

・It was just a diplomatic remark.(それはただの社交辞令でした)

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「社交辞令」はビジネスを円滑に進めるために必要なスキルではありますが、あまりにも「社交辞令」が多い人に対して、あまりいい印象は抱けないもの。なぜなら、悪意のない社交辞令でも、言ったことがいつまでも実行されなければ、それは「嘘」になるからです。無難にやり過ごしたい場面では、つい「社交辞令」でお茶を濁したくなりますが、結果的に相手を傷つけるような「社交辞令」は使いたくはないものですね。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) /『角川類語新辞典』(角川書店) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『四字熟語ときあかし辞典』(研究社) :