雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は、「藤沢女性のクリニックもんま」の院長 門間美佳さんをご紹介します。

門間美佳さん
「藤沢女性のクリニックもんま」院長
千葉の旭中央病院、湘南鎌倉総合病院を経て、’19年に「藤沢女性のクリニックもんま」を開業。勤務医時代に3児の母としてキャリアに悩んだ経験から、女性の活躍を阻害する日本の社会構造にも問題提起している。

誰もが安心して相談できる保健室に。ユースフレンドリーなクリニック

ある土曜日の午後。婦人科クリニックに、多くの人が集まっていた。友達と連れ立った女子高校生たちは、ネイルやパーソナルカラー診断を楽しんでいる。その横では、生理用品や避妊具の紹介も。

「毎月第一土曜日の午後に、ユース世代を対象にして開催している『オープンユースクリニック』です。中高生、大学生たちが、友達や彼氏と一緒に気軽に立ち寄れる場所をつくりたくて、クリニックを無料開放。女性が抱えるさまざまな問題に関心をもつ人たちとの情報交換の場にもなっています」

きっかけは、近隣の自治体で起こった新生児遺棄事件だった。産婦人科医として何かできないか、と考えていたときに知ったのが、人口1千万人ほどのスウェーデンに250か所以上あるというユースクリニック。13歳から25歳の若者が無料で利用でき、体や性のことはもちろん、人間関係の悩みまで相談できる。こんなクリニックが日本にもあったら――。門間さんは’19年の開業を機に、ワンコインでなんでも相談できるユース専用の部屋をつくった。

「困っていることがあれば来てね、と。ところが’21年、隣駅で、また新生児遺棄があったんです。それで、困っている人に来てもらうだけではだめだ、困る “前” に来てもらわなければ、と、より門戸を広げて始めたのが、無料でクリニックを開放するこのオープンユースクリニックなんです」

DV、性被害、予期せぬ妊娠。体の成長や体調の変化。この社会には、女性であるがゆえにさらされる抑圧や困難が多く存在する。

「女性が自尊心を削られることなく、自分のことを自分で決められるように。医療を通じて女性をエンパワメントしていきたい」

【SDGsの現場から】

●若者向けのパンフレットで啓蒙活動

中高生向けの性教育の冊子や、デートDVを判別するスケールなども気軽に手に取れる。
中高生向けの性教育の冊子や、デートDVを判別するスケールなども気軽に手に取れる。

●多くの人に知ってもらうべく幅広い交流を

サステナブル_1
医療関係者はもちろん、政治家や地元ラジオ局などさまざまな人との交流で問題意識を共有。

※ユースクリニックとは…10代〜20代前半の若者が助産師や看護師、心理師などに体や性、心などに関することを無料で相談できる施設。スウェーデン発祥。

PHOTO :
望月みちか
EDIT&WRITING :
剣持亜弥(Precious)