「高みの見物」は「第三者の立場で、興味本位に見て楽しむこと」を表す言葉です。「さて、ここからは彼がどうするのか、高みの見物といこうじゃないか」といった言葉には、野次馬的な好奇心が滲んでいますね。自分は安全な立場にいるため、余裕綽々(しゃくしゃく)です。今回は「高みの見物」について、その意味や使い方、言い換え表現を解説します。
【目次】
【「高みの見物」を正しく理解するための「基礎知識」】
■読み方
「たかみのけんぶつ」と読みます。「たかみのみもの」ではありませんよ!
■語源と意味
「高みで見物」とも言い、「コトのなりゆきを、直接関係しない安全な立場で、興味本位に傍観すること」を表します。不運なアクシデントや揉めごとなど、当事者にとっては災難とも言える出来事を、興味本位に観て楽しむといったニュアンスを含んでいます。
「高み」には「高い場所」という意味のほかに、「高い所から見下ろすこと。見くだすこと」、「直接関係のない立場で、傍観すること」という意味もあります。「見物」は「催し物や名所旧跡などを見て楽しむこと」ですから、「高みの見物」は当事者としてではなく、あくまで第三者の立場で、「興味本位に見て楽しむこと」ということになるのです。なお、「高み」は、形容詞「たかい」の語幹に接尾語「み」が付いて名詞化したものです。「高見」と書くのは間違いですから注意しましょう。
【「見下す」「対岸の火事」との違い】
「高みの見物」と似た意味をもち、混同しやすい言葉に「見下す」「対岸の火事」があります。それぞれ「違い」を検証してみましょう。
■「見下す」との違い
「見下す」には「みおろす」と「みくだす」、ふたつの読み方があります。どちらも同じふたつの意味があり、ひとつは「高いところから下の方を見る」こと。ふたつめは「相手をばかにして見る。侮る」という意味です。「高見の見物」にも「高いところ(安全な場所)から、相手の不運を見て楽しむ」という見下しのニュアンスはありますが、「見下す(みくだす)」は「相手の不運」というより「相手自身」をばかにして侮るといった意味の言葉です。
■ことわざ「対岸の火事」との違い
「対岸の火事」は、川の向こうで起こった火事はこちら岸に飛び火する心配がないところから、「自分には関係なく何の苦痛も感じないものごとのたとえ」です。「安全な場所から第三者の立場で傍観する」という意味としては「高みの見物」と共通していますが、違いは「対岸の火事」には「興味本位に観て楽しむ」というニュアンスは含まれていないことです。
【「使い方」がわかる「例文」3選】
■1:「まーたA部長とB部長が揉めてるよ。いつものことだし、とばっちりがくると嫌だから、わたしたちは高みの見物といたしましょう」
■2:「今月の売上、ダントツトップだったと部長に褒められた。同期のAとBは最下位争いで、噂ではどちらかに降格人事があるとかないとか…。どっちにしても私には関係ないから、高みの見物とさせてもらおう」
■3:「突然のアクシデントに対して、部長は高みの見物と決め込んでいるようだが、自分も当事者であることがわかっているのだろうか…」
「高みの見物」を決めた人は、当事者が直面しているアクシデントや揉めごとには関係ないため、余裕綽々(しゃくしゃく)です。また、3のように誰かが「高みの見物」をしている際は、そこに非難のニュアンスが込められていることが多いですね。
【同じ意味をもつ「類語」「言い換え」表現】
■他人事
本来は「他人事」と書いて「ひとごと」と読みましたが、現在では「たにんごと」という読みも認知されつつあります。「自分には関係のないこと。他人に関すること」という意味で「対岸の火事」に近いニュアンスです。
■よそごと
「自分とは関係のないこと。他人事」を「よそごと」ともいいます。
■野次馬
「野次馬」とは「自分とは無関係なことにむやみと口出しをしたり、他人のしり馬に乗って無責任に騒ぎたてたり、見物に出たりすること。また、その人」。傍観するだけで手や口は出さない「高みの見物」に対し、こちらは騒ぎ立てたり口を出したりする際に使われます。
■傍観する
■静観する
■第三者的な姿勢を崩さない
【「対義語」は?】
「高みの見物」の対義語を定義するのは難しいですね。「興味本位で傍観する」という意味と捉えた場合の「反対語」を考えて見ましょう。
■火中の栗を拾う
猿におだてられた猫が、いろりの中の栗を拾って大やけどをしたという、フランスの寓話(ぐうわ)から、「自分の利益にならないのに、他人のために危険を冒すたとえ」として用いられています。
■干渉する
【「英語」で言うと?】
「高みの見物」をそのまま表現する英単語はありませんが、[look on]には「傍観する」という意味がありますよ。
・We looked on from afart he boys fight.(少年たちが喧嘩するのを傍観していた)
・I just looked on.(わたしは高みの見物を決めこんだ)
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「高みの見物」は「安全な場所(第三者の立場)から傍観する」という意味の言葉です。トラブルに見舞われた人をおもしろ半分、興味本位で見物するのが悪い、とまでは言えませんが、そこに品性は感じにくいことは確か。「高みの見物」を決め込む自分の姿を、今一度振り返る余裕をもちたいものですね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館) /『ランダムハウス英和大辞典』(小学館) :