2月に初めて訪れる「午」の日を「初午」といい、全国の稲荷神社では祭礼が行われます。さて、あなたは今「午」や「初午」を正しく読めたでしょうか? 「うし」ではありませんよ! 今回は、年末に相応しい話題を取り上げます。
【目次】
【「初午」の「読み方」「意味」「由来」】
■読み方
「初午」と書いて「はつうま」と読みます。「午(うま)」と「牛(うし)」を混同して「はつうし」と呼んでしまいそうですよね。
■意味
「初午」は、その年の2月に訪れる最初の「午の日」のこと。では「午の日」とはなんでしょう?
十二支の第7番目にあたるのが「午(うま)」で、十二支獣としては「馬」になります。1日ずつ順番に十二支があてられているので、12日に1度「午の日」が来るということですね。1年は365日か366日なので、毎年2月の最初の「午の日」である「初午」も、年によって日にちが異なるというわけです。
■由来
稲荷信仰と結びついているのが「初午」です。“お稲荷さん”の総本社である京都の伏見稲荷大社をはじめ、各地の稲荷神社で五穀豊穣や商売繁盛などを祈願する祭礼が「初午」の日に行われます。なぜこの日かというと、伏見稲荷大社に稲荷大神が降臨したのが「初午」の日とされているから。また、旧暦2月は現在の3月ですが、このころは農作業を開始する時期でもあり、農神の性格をもつ稲荷と結びつきやすかったのだとも考えられます。
■午前や午後に「午」が使われている理由
十二支を時刻にあてはめると、「午の刻」は正午を挟んだ2時間、午前11時から午後1時までを指します。そう、「午前」「午後」という語は、「午」の前とうしろという意味なのです。
【「初午」には何をする?縁起担ぎは?】
■「初午詣で」
「初午」の日に稲荷神社にお参りすることを「初午詣で」と言います。古くから「初午の日」はとても縁起が良いとされ、神社詣でをするのに相応しいのだとか。「初午」の稲荷神社では盛大に赤い幟(のぼり)が立ち、赤飯や油揚げをお供えします。稲荷神社と油揚げの関係は、稲荷大神の使いとされるキツネの好物が油揚げであったことに由来。一般的には特別なことをする日ではありませんが、ぜひ稲荷神社へお参りして、日々の糧に感謝しましょう。
■「初午いなり」に「初午だんご」って!?
「初午いなり」と呼ばれるこの日のいなり寿司と、「初午だんご」が“初午グルメ“の筆頭です。
「初午だんご」とは、繭玉に見立てた米粉のだんごのこと。蚕の生産が盛んな地域では、大勢に振る舞うほど「繭かき(繭から毛を除く作業)が賑やかになる」として、「初午だんご」をご近所さんに配る風習があるのだとか。これは富山県の郷土料理だともいわれています。
正月のおせち料理、七草粥、節分の恵方巻、桃の節句の菱餅(ひしもち)、端午の節句の柏餅…など、日本の伝統的な行事と結びついたものを行事食(ぎょうじしょく)と呼びますが、「初午いなり」や「初午だんご」もそのひとつ。行事食は縁起がいいとされているので、ぜひ「初午」の日には手軽に手に入るいなり寿司を食べたいものですね。
【2024年の「初午」はいつ?】
2024年の「初午」は2月12日の月曜日。
この日はぜひ稲荷神社へ参詣したいところですが、近所に稲荷神社がないという人は、自宅や職場の近くなど、行きやすい神社へお参りしてみては? たとえ「初午」と関係のない神社でも、神社詣では心が洗われるものです。
【干支についてもさくっと解説!】
「初午」について簡単に解説してきましたが、そもそも「干支」って何? と思っている人もいるのでは?
当時、もっとも尊いと考えられていた木星が12年で天を1周することから、古代中国の天文学では年ごとの木星の位置を示すために天を12等分しました。その呼称が「子(し)・丑(ちゅう)・寅(いん)・卯(ぼう)・辰(しん)・巳(し)・午(ご)・未(び)・申(しん)・酉(ゆう)・戌(じゅつ)・亥(がい)」の十二支。日本ではこれに動物の字をあて、「子(ね)・牛(うし)・虎(とら)・兎(う)・龍(たつ)・巳(み)・馬(うま)・羊(ひつじ)・猿(さる)・鶏(とり)・犬(いぬ)・猪(い)」と表記します。
今年の年賀状をつくる際に「辰? 龍? どっちが正解?」と思った人もいるのでは? 干支を表すならどちらでも正解です。ちなみに干支は年だけでなく、2時間ごとに変わって1日で1周(日の干支)、ひと月ごとに変わって1年で1周(月の干支)するんですよ。
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年末年始は、日本の伝統行事や風習に関心が高まる時期ということで、今回は「初午」について解説しました。ところで…いなり寿司の形は大きくふたつに分けられるってご存知ですか? 稲荷信仰にあつい関西ではキツネの耳に見立てた三角形、古くから稲作文化が発達していた東日本では俵型が主流だそうです。こちらも覚えておくと、ビジネス雑談に役立ちそうです。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『世界大百科事典』(平凡社)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『平成ニッポン生活便利帳』(自由国民社) :