ビヨンセは「16の性格」のうち、もっとも控えめな「擁護派」?

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2023年のワールドツアー「RENAISSANCE WORLD TOUR(ルネッサンス ワールド ツアー)」でのパフォーマンス。トロントにて。(C)Kevin Mazur / Wire Image for Parkwood

『16パーソナリティーズ』をご存知だろうか。無料診断性格診断テスト……この手のものには、怪しげなものも多く存在し、試しても試しても半信半疑だったりするはずだが、この『16パーソナリティーズ』に限って言えば、心理学に基づいた比較的アカデミックなものであり、世界的に認知度が高いこともあり、ある程度信頼してもいいと言われる。
そもそもこれは、あくまで物の考え方や判断の仕方をベースに、自分でも気づかなかった特性を知る1つの基準であり、仕事における適性などを知る上で、確かな道標となっている診断テストだ。
せっかくだからここに16のタイプを挙げておく。

1)建築家型
2)論理学者型
3)指揮官型
4)討論者型
5)提唱者型
6)仲介者型
7)主人公型
8)広報運動家型
9)管理者型
10)擁護者型
11)幹部型
12)領事官型
13)巨匠型
14)冒険家型
15)起業家型
16)エンターテイナー型

わずか12分で92の質問にYES・NOで答えると、自動的に16のタイプのうち自分はどれなのかが表示されるわけだが、どこか信憑性があるのは、実際テストの結果には意外に思えるものもありながら、結果としては深く納得。気づかなかった自分の本質を見せられることも少なくないとされるからなのだ。

まずいきなりこんな話をしたのも、それぞれに典型的な人物が挙げられている中、「擁護者型」(ISFJ)として分類されている人たちの中に、じつは意外な人物がいて目を引いたからなのだ。それが、エリザベス2世とキャサリン妃、そしてビヨンセだった。

擁護者型は根っから利他的。思いやりのある優しい人。

擁護者型とは、控えめで内向的、自分の意見を押し通したり大勢の前で話したりする仕事はストレスに感じるタイプ。さらに言うならば、献身的で面倒見がよく、思いやりがあり、人に手を差し伸べようとする、とある。

従って、擁護者型におすすめの職業は、学芸員や行政職員・事務職、医療従事者、製作アシスタントと、どちらかと言えば縁の下の力持ち的な地味な仕事。

しかし、控えめで地味でありながらも世の中を動かすタイプであるともされる。勤勉かつ献身的なので、周りの人たちに対する強い責任感も強く、愛する人たちに対してのサポートと配慮を行動で示す。でも逆に自分の努力や配慮を認めるよう相手に要求することはせず、人のために陰で動くことを好む人たち。さらに有能で多才な上に分析能力が高く、細かいことにもよく気づく。控えめだけれど、人付き合いは得意、人間関係も安定している……。

かくして、擁護者型は根っから利他的。優しさには、なおいっそうの優しさで相手に接し、情熱的なまでにひたむきに世のため人のために仕事に取り組んだりする素晴らしい人格の持ち主というべきだろう。

そこでなんとなく腑に落ちるのは、一国の女王でありながら何か常に国民のことを考え、淡々と自分の役割を果たしてきたエリザベス女王がまさにこのタイプであったこと。すこぶる評判の良いキャサリン妃も、きっとエリザベス女王的なメンタルの持ち主に違いないのだ。

巨大な成功を収めた歌姫は、みんな人間が壊れていきがちなのに

しかし一番意外なのは、やはりビヨンセ。それも歌姫と呼ばれる人たちは、申し訳ないけれど真逆のタイプであるはずだ。言うならば、自我が強く、目立ちたがりで傲慢。どっちにしろ、私が1番と言うタイプに他ならない。もともとそういうメンタリティーでなくても、信じられないほど巨大な拍手喝采を浴びる立場となると人間は変わっていく。限りなくちやほやされる立場として成功を収めれば、よくも悪くもそれが自然に身に付いていって、どんどん人格が変わっていくのだろう。

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2023年第65回グラミー賞授賞式での一コマ。Best Dance/Electronic Music Album awardの受賞スピーチ(C)Photo by Frazer Harrison / Getty Images

ましてや、毎回のステージとその絶叫は狂気の沙汰。まっとうな人間ではいられなくなるような環境が、とてつもないストレスをもたらして、やっぱり人間壊れてしまう。信じがたいわがままが伝説化しているように、ディーバたちは本人が望まなくても傲慢になっていかざるを得ないのである。

例えば、ブリトニー・スピアーズも、マライア・キャリーも、そしてホイットニー・ヒューストンも、とてつもない成功を収めた人たちはみんな平常心ではいられなかった。マドンナもまた、その言動が私たちの想像を常に超えてくる、つかみどころのないスターである。

この人の悪口を言う人はいないしスキャンダルもない。それは1つの奇跡

ところが、ビヨンセだけは明らかに違っていた。圧倒的なパフォーマンスを見せながら、実は控えめでシャイで礼儀正しく、周囲に気を使う思いやりある女性であることがしばしば伝えられてきた。

だからステージの上の女豹のようなビヨンセは全くの別人で、「サーシャ・フィアース」、もう1人の自分という名前までつけられていたほど。ある意味そうした人格の乖離があったからからこそ、この人は本来の優しい心を持ち続けたのかもしれないが。

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2023年「RENAISSANCE WORLD TOUR」アムステルダム公演にて熱唱するビヨンセ。(C)Kevin Mazur / Wire Image for Parkwood

ともかく、この人の悪口を言う人はいない。この人に迷惑をかけられた人も、冷たくされた人もいない。スキャンダルもない。まぁ1つの奇跡である。ありえない成功を納め、巨万の富を築きながらも、心は清らかなままでいられるものなのだと、何か勇気をもらうほど。

ちなみにそれが表面的でない事は、夫であるジェイZのことを心から愛し、だからそういう意味のスキャンダルもなし。少女の頃に17歳まで可愛らしい交際をした彼氏が1人いたと言うが、それからジェイZに出会うまでは恋愛遍歴もなし。ひょっとしたらバージンだったかもしれないというような、奇妙なゴシップが語られるほど。でもそれが信じられるほどピュアで生真面目な女性なのである。

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ルイ・ヴィトンのショーでのJay-Zとビヨンセ。手はしっかり「恋人つなぎ」。2023年パリ・ファッションウィークにて。(C)Stephane Cardinale-Corbis / Corbis via Getty Images

いやそれだけならまだしも、グラミー賞を最多受賞するほどの才能と実力、40歳を過ぎても全く衰えることのない美貌。いやそもそもこれだけ美しくこれだけ才能に恵まれた女性が、こんなに心が綺麗って、それ自体が奇跡であり、この人のことを思うほどに心が洗われ、全身全霊のパフォーマンスを見ていると、なんだか涙が出そうになるほど。

なぜこんなにいい人でいられるの?そういう考え方を変えてみる

でもなぜこんなにいい人でいられるの?   いやそうではなくて、こういう考え方をすべきなのかもしれない。こんなにいい人だからこんなに成功が続くのだと。そう、人格者だからこそ、ここまでの天文学的な成功を成し遂げられ、尊敬さえ得られるのだと。そういう意味から言えば、ほとんどエンタメ界の大谷翔平。この先も多分永遠に成功が続き、いつかダイアナ・ロスのように神格化していくのだろうと。逆に、現実に壊れてしまった人はスキャンダルにまみれて、常に不穏な空気をもたらし、結果としてキャリアを続けられなくなっている。それが世の中の仕組みなのだと。

そもそもこうした世界的なエンターテイナーは、尋常な生活はできないし常に追われる身だから、極めてストレスフルで、まともな心ではいられないよねー、仕方がないよねーと、世間は彼らを擁護してきた。そうやって彼らを理解しようとしてきたのだ。だからビヨンセだけが特殊な例に見えるけれど、でもここで逆の発想してみるべきなのだ。

つまりそうではない人がいると言うこと、それもまた人間なのだと、できればそちらの方を人間を知るための材料に使いたいのである。いやもう一人いた。本当にいい人のまま、歌姫を辞めていった、安室奈美恵さんにも学ぶことがとても多いように。

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2023年「RENAISSANCE WORLD TOUR」ニュージャージー公演でのビヨンセ。(C)Kevin Mazur / Wire Image for Parkwood

今や人間社会はギバーとテイカー、つまり”いつも見返りなく与える人と”いつも自分だけが得をし、与えられてばかりの人の2種類しかいないという言い方がされる。

また、ちょっとスピリチュアルな世界では、光をもたらす人=ライトワーカーとも言うべき人が、犠牲的精神を持ちながら、ある種の使命感で人を幸せにするために働いているといわれるが、このビヨンセは、紛れもなくギバーであり、ライトワーカー。そういう風にこの人は何かこの世に役割を持って現れた人なのだと考えてみる。

実際に、「この程度やっとけば」というありきたりな活動ではない、人が真似のできないようなきめ細かい慈善活動を続けていることでも有名。何かの使命を持たされてた人である事はもう疑いようがない。

ともかくいろんな意味で尊い人。あまりにもスケールが大きすぎてお手本にもならないけれど、でも同じ時代にビヨンセのようなスターがいて、なんだか良かったと思う。こういう女性が存在することを知っているだけでも、女としてラッキーだったかもしれない。この"愛すべき人格者"が今後どのように進化し、人々を魅了していくのか、それを見届けるのが楽しみで仕方がない。

少なくとも人が美しい、素晴らしいってどういうことか。表面的な美しさだけでは寂しすぎること、この人はまざまざと教えてくれているのである。

この記事の執筆者
女性誌編集者を経て独立。美容ジャーナリスト、エッセイスト。女性誌において多数の連載エッセイをもつほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。近著『大人の女よ!も清潔感を纏いなさい』(集英社文庫)、『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)ほか、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。好きなもの:マーラー、東方神起、ベルリンフィル、トレンチコート、60年代、『ココ マドモアゼル』の香り、ケイト・ブランシェット、白と黒、映画
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EDIT :
三井三奈子
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