「イミテーション」とは、模造品やまがいものを指す言葉です。「やけに安いと思ったらイミテーションだった」というふうに使いますね。「コピー」も似たような言葉ですが、両者に違いはあるのでしょうか。今回は、EC(イーコマース/ネット販売)でのトラブル時にもよく聞かれる「イミテーション」について解説します。

【目次】

「イミテーション」であることに価値があることも!
「イミテーション」であることに価値があることも!

【「イミテーション」の「意味」や「使い方」など基礎知識】

■意味

「イミテーション」は英語の[imitation(模倣・模造)]のこと。すっかり和製英語として定着していますね。「模倣」や「真似」という意味をもち、宝石など高価な品の「模造品」「まがいもの」「偽物」といった意味などで使われます。

■語源

ラテン語で「模倣」を意味する[imitatio]からきています。イタリア語では[imitazione]、フランス語では発音は異なりますが英語と同じ表記の[imitation]となります。

■使い方

「高級ブランドのイミテーション」という場合は「偽物」というネガティブなニュアンスになりますが、「代替品」という意味合いで使われることもあります。たとえば「イミテーションパール」。真珠の養殖技術がなかった17世紀中ごろからフランスで製造が始まり、1900年ごろには欧米各国でイミテーションパールの需要が高まったとか。日本でも、大正から昭和にかけて盛んだったイミテーションパールの製造販売は、外貨獲得のための重要な輸出産業でもありました。


【「イミテーション」と「コピー」の違い、「類似語」】

似た言葉に「コピー」「レプリカ」「フェイク」「ダミー」などがあります。それぞれの正しい意味や使い方を確認しておきましょう。

■コピー

コピーは「複製」という意味なので、そっくり同じものをつくることを指します。「コピーをとる」とは複写することですし、「コピー品」はそっくりにつくられた品のこと。「イミテーション品」は模造すること自体に価値があるものを指すこともありますが、「コピー品」は違法な偽物に対して使われるようです。

■レプリカ

レプリカの語源はイタリア語で「繰り返し」を意味する[rèplica]。美術用語として「模写画」「複製」「模造品」に転じたようです。近年ではレプリカ技術(「高精細複写技術」などとも言います)が目覚ましく発達し、美術品保存の観点から、寺院の襖絵などはレプリカが用いられることも多くなりました。

■フェイク

フェイクは「偽物」「模造品」「まやかし」といった意味。主にウェブサイトやSNSで発信・拡散される、真実ではない情報を「フェイクニュース」と言いますね。ファッション用語としては、動物の毛皮ではなく人工的につくられたものを「フェイクファー」や「フェイクレザー」と呼んでいましたが、近年では「エコファー」「エコレザー」と呼ぶことが多くなりました。


【使い方がわかる「例文」3選】

■:「ガラスの石や模造パールでつくられたアクセサリーも、近年ではイミテーションではなく、ファッションジュエリー、コスチュームジュエリーなどと呼ばれることが多くなった」

■:「扱い易さの理由から、オフィスビルの内外装やテレビ番組のセットなどにもイミテーショングリーンが使われている」

■:「わが社の模造技術は、一見してイミテーションだと思えないほど向上した」

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みなさんは、[imitation crab meat]と聞いて、なんのことだかわかりますか? そうです、「かにかまぼこ」のことですね。また、[imitation milk]は乳脂肪を植物性油脂に代替したミルクで、牛乳アレルギーの人などに重宝されています。上で紹介したエコファーやファッションジュエリー、イミテーショングリーンなど、現代には、違法な「イミテーション」だけでなく、ニーズに合った「イミテーション」もあるのです。上手に付き合えば、生活のクオリティも上がるイミテーション。賢く取り入れていきたいものですね。

この記事の執筆者
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