「言葉足らず」は「十分に説明できていないこと」を意味する言葉です。「言葉足らず」の結果として、相手に真意がうまく伝わらず、誤解を与えてしまうことも少なくありません。今回のテーマは「言葉足らず」。その意味や使い方、よくわかる例文、さらには言い換えや英語表現までを、「言葉足らず」にならないよう、しっかり解説します!

【目次】

言葉足らずはトラブルの原因にもなります。
言葉足らずはトラブルの原因にもなります。

【「言葉足らず」の「意味」など「基礎知識」】

■「意味」は?  

「言葉足らず」は「十分に説明できていないこと」や、その様子を表す言葉です。古くは歌人・紀貫之が著した『古今和歌集仮名序』に、「在原業平は、その心余りて、詞(ことば)足らず」と書かれています。これは「在原業平の歌はこころ(情感)は溢れるほどだが、それを表現する言葉が足りない」という意味。六歌仙の中心人物であった業平に対する評としては、随分手厳しいですね! 私たちの日常では、説明不足によって両者の理解に齟齬が生まれたり、真意がうまく伝わらなかったような場面で、「言葉不足だった」と使われますよ。

■「舌足らず」との「違い」

「舌足らず」にはふたつの意味があります。
1)舌の動きが正常でなく、物言いが不明瞭なこと。
2)言葉、文章などの表現が不十分なこと。十分に言い尽くしていないこと。言い足りないこと。

2の意味においては「言葉足らず」と「舌足らず」は共通していますが、「言葉足らず」に1の意味はなく、「舌足らず」はむしろ1の意味で使われることが多い言葉です。「舌足らず」なタレントといえば、古くは山瀬まみさん、今なら、元「ゆるめるモ!」メンバーのあのちゃん、でしょうか。あどけなく幼い印象ですね。


【「使い方」がわかる「例文」7選】

取引先や目上の方に自分の真意が伝わらずに誤解されてしまったとき、たとえその原因が相手の勘違いにあったとしても、「私の言葉足らずが原因です。申し訳ありませんでした」と謝罪しなければならないケースはあるものです。ただし、その謝罪が自社の利益を損なう場合は、その限りではありません。慎重な判断を。

■1:「今回、双方の理解に齟齬(そご)が生じてしまったのは、私の言葉足らずが原因です。大変、申し訳ございませんでした」

■2:「不器用な彼はいつも言葉足らずで、周囲から誤解されることが多い。本当は気持ちの優しい人なのに、歯がゆいばかりだ」

■3:「ビジネスにおいて言葉足らずはトラブルの原因となるが、恋愛においても自分の気持ちが伝わりにくいという面で不利なことには変わりはない」

■4:「君の説明は明らかに言葉足らずだ。相手に察してほしいといった甘えは、ビジネスでは通用しないよ」

■5:「重要な会議では緊張のあまり言葉がうまく出てこない。結果、どうしても言葉足らずになってアピール力にも欠けてしまうようだ」

■6:「自分が理解していることは相手も理解していると思い込むのは危険だ。自然、言葉足らずになり、往往にしてトラブルに発展する」

■7:「言葉足らずの人、話がまわりくどくて長い人。どちらも真意が伝わりにくいという点では共通している」


【「類語」「言い換え」表現は?】

「言葉足らず」を別の言葉に言い換えてみましょう。

■類語

・口下手
話すことが不得意で、思うことをうまく人に言えないことを「口下手」と言います。同じような言葉に「口不調法」も。

・口重
「口重」は「口数が少ないこと」を意味します。

■言い換え表現

・説明不足

・語彙力不足

「言葉足らず」の原因のひとつに、語彙の乏しさがあります。自分の真意が伝わりやすい、適切な言葉をチョイスできないために、相手に誤解されてしまうのです。


【「言葉足らずで申し訳ございません」を「英語」で言うと?】

自分の説明が不十分で相手に誤解を与えてしまった……英語の単語やイディオムには「言葉足らず」をずばり表現する言葉はありません。が、こんな場面に適切なフレーズを覚えておきましょう。

■I am(We are) sorry;I(we) should have explained it to you more clearly.

■I am(We are) sorry; I(we)didn't explain it enough.

謝罪の言葉の後に、「私(たち)がもっと詳しく説明すべきでした」あるいは「私(たち)が十分な説明をしませんでした」と続けます。会社全体の責任として謝罪するのなら、主語は[We]となります。[be sorry]よりも丁寧な英語表現にするときには、[apologize]を使います。

■I  apologize to you for my lack of words.

***

たとえ頭脳明晰で語彙力豊富な人であっても、「言葉足らず」になることはあるものです。それは「相手も自分と同じ気持ち、理解力だろう」と思い込んでしまった場合。相手の立場になってものを考えることも、「言葉足らず」にならないために必要な配慮です。そしてこんな配慮こそが「大人の語彙力」ではないでしょうか。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)/『新選漢和辞典Web版』(小学館) /『角川類語新辞典』(角川書店) :