「罵倒」は「激しい言葉で相手を悪く言う」ことを意味する言葉です。居丈高に相手を非難したり暴言を吐くなど、ネガティブな感情も伴った言葉ですから、「罵倒」「する」ことからも「される」ことからも、無縁でいられるのがいちばんですね。今回は「罵倒」の意味や「罵声」との違い、職場における「罵声語」について解説します。

【目次】

罵倒とは「激しい言葉で罵(ののし)ること」をいいます。
罵倒とは「激しい言葉で罵(ののし)ること」をいいます

【「罵倒」の「読み方」「意味」など「基礎知識」】

■読み方

「罵倒」は「ばとう」と読みます。

■意味

「激しい言葉で罵(ののし)ること」や「ひどい悪口を言うこと」を「罵倒」と言います。「罵倒」の「罵」の訓読みは「ののし-る」で、「声高く悪口を言う」「騒ぎ立てる。怒鳴る」という意味をもちます。そして「倒」の訓読みは「たお-す」です。「倒」には「程度や状態がはなはだしい」という意味もあるため、「罵倒」で「限度を超えて(ひどく)罵る、大声で悪口を言う」といった意味になるのです。


【職場で「罵倒語」とされる言葉】

「罵倒語」とは「相手を罵る際に使われる言葉」のことです。世界的に見て、身分や民族、排泄物、障害、病気、特定の動物などに関するものが多いと言われています。映画などで、いわゆるピー音でかき消される放送禁止用語たちですね。ここまでひどい罵り言葉ではないにしろ、ここ数年、無理な要求を突きつけ従業員を「罵倒」する消費者、「カスタマー・ハラスメント(カスハラ)」が話題となる機会が増えています。また、同じ職場で働く部下などに対して、攻撃的であったり、ミスを乱暴な言葉で叱責したり、ほかの従業員や顧客がいる前で見せしめのように罵倒するなどの行為は、相手に精神的な苦痛を与える「パワー・ハラスメント(パワハラ)」に該当するとされています。

たとえ自分自身は相手に対し、「注意」や「勧告」、あるいは「批判」をしているつもりだったとしても、受け止める人や周囲が「罵倒」あるいは「パワハラ」と感じたら、それはゆゆしき事態です。一般社団法人日本ハラスメント協会では、ホームページで侮辱や人格否定、暴言など、「パワハラ」にあたる言葉を挙げています。その一部をご紹介しましょう。

■ゆとり世代

■おばさん

■○○さんが私の部下だったらよかったのに

■これ常識だから

■おまえには失望した

■責任とれるのか

■いつになったらできるのか

■まじめにやってる?

「職場におけるパワハラ」とされる行為には、3つの要件があります。
1)優越的な関係を背景とした言動であり
2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
3)労働者の就業環境が害されるもの /改正労働施策総合推進法第30条の2 単発的か反復的なものであるかを問わず、身体的、精神的、性的又は経済的害悪を与えることを目 的とした、又はそのような結果を招く若しくはその可能性のある一定の許容できない行為及び慣行又はその脅威

パワハラにあたる言葉に加え、「威圧的な態度」「声を荒げる」「物をたたく」「にらむ」「大声でみんなに聞こえるように」「立たせる」「密室」「職場外の場所」など、パワハラにあたる行為(シチュエーション)も「パワハラ」に該当する行為です。


【「類語」「言い換え」表現】

「罵倒」同様、「大声で相手を非難すること」を表す言葉は、意外にも数多くあります。あまり使いたくはありませんが、いくつか知っておいてもいいでしょう。

■罵(ののし)る

「罵る」はもともと大声を立てるという意味のことばでした。現在では「大声で口汚く非難する」という意味で用いられています。

■痛罵(つうば)

■面罵(めんば)

■嘲罵(ちょうば)

■冷罵(れいば)

■悪罵

「罵倒」は、「激しい言葉で、相手をあざけり非難すること」。「痛罵」は、「痛烈に極めて激しく非難すること」。「面罵」は、「面と向かって相手を非難すること」。「嘲罵」「冷罵」「悪罵」は、「相手をばかにし、口汚く悪口を言うこと」です。いずれもあまり一般的ではない書き言葉です。

■誹謗

「他人を悪く言うこと。そしること」を「誹謗」と言います。「罵倒」のように「面と向かって大声で」といったニュアンスは含まれていません。「根拠のない悪口を言いふらして、他人の名誉を傷つける」という意味の「中傷」と組み合わせ、「誹謗中傷」として使われることも多い言葉です。

■罵詈雑言(ばりぞうごん)を吐く

「罵詈」の「詈」にも「ののしること」という意味があり、同じ意味のふたつを重ね、意味を強めています。「雑言」は「悪口」の意。「罵詈雑言」を「吐く」や「浴びせる」として使われることが多い言葉です。


【「罵声」との違いは?​】

「罵声」は「ばせい」と読み、「口汚く大声でののしる声。どなりたてる声」を意味します。「罵倒」との違いは、「罵倒」は「罵る行為」を、「罵声」は「罵る声」を指すことです。そのため、「罵倒」は「罵倒する」と動詞として用いられますが、「罵声する」とは言いません。

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パワハラ傾向の強い人は「日常的に暴言や罵倒を繰り返す」ことが多いようです。不幸にも、あなたの周りに無自覚に人を「罵倒」する人がいたら、いちばんの対応策は「相手との距離を取る」ことです。それができないのなら、適当に聞き流したり、無関心を装うことも有効とされています。法務省では、差別や虐待、ハラスメントなど、さまざまな人権問題についての相談を受け付ける相談電話「みんなの人権110番」を開設しています。大きなストレスに心が悲鳴を上げる前に、適切な機関に相談するなど、自衛の手段を取ってくださいね。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館)/法務省人権擁護局 公益財団法人人権教育啓発推進センター「今企業に求められる 『ビジネスと人権』への対応」(https://www.moj.go.jp/content/001376897.pdf)/一般社団法人日本ハラスメント協会(https://harasumentt.jimdofree.com/パワハラにあたる言葉-パワハラ-言葉-パワハラ-言葉-一覧-パワハラにあたる行為-侮辱罪-名誉毀損罪-パワハラ-指導-パワハラ-境界線-パワハラ-線引き/) :