「朝令暮改」と書いて、どう読むのでしょう? 正解は「ちょうれいぼかい」。では意味は? 今回は、ビジネス雑談で聞くことがあるかもしれないこの四字熟語の正しい使い方を、例文や言い換え表現などでしっかり身につけていきましょう。
【目次】
- 「朝令暮改」とは?「読み方」と「意味」「由来」
- 「ビジネス雑談での使い方」がわかる「例文」5選
- 最近は「朝令暮改」もウエルカム?
- 「類語・言い換え」表現
- 「朝令暮改」の「対義語」
- ほかにもあります!「朝」と「暮」の四字熟語
- 「朝令暮改」を英語では?
【「朝令暮改」とは?「読み方」と「意味」「由来」 】
■読み方
「朝令暮改」は、すべて音読みで「ちょうれいぼかい」と読みます。
■意味
朝礼暮改とは、朝に出した命令を夕方に改めるというように、方針などが絶えず変わって定まらないことを表す四字熟語です。「朝令」は朝に出した命令や指示、方針のこと、「暮改」は、暮どき(夕方)に変わること、を表します。「令」を「礼」としてしまう「朝礼暮改」という誤字にご注意ください。
■由来
朝令暮改の由来は、中国の『漢書(かんじょ)』にがあります。『漢書』とは、前漢時代(紀元前202年~8年)に書かれた100巻からなる歴史書のこと。その中の、王朝の税制経済などに関することがらが記された「食貨志(しょっかし)」という巻に、法律を決めてはすぐ変更したり廃止したりする皇帝を見かねて、ひとりの家臣が「コロコロと法令を変えれば、農民たちは振り回され、干ばつや水害被害の疲弊もあいまって、さらに困窮してしまう」との意見書を出した、という話があります。この「コロコロと法令が変わる」状況が「朝令暮改」という言葉で表されているのです。
【「ビジネス雑談での使い方」がわかる「例文」5選】
上で紹介した由来を読むと、「朝令暮改」は好ましくない状況を表す言葉のようですね。その使い方を例文で見てみましょう。
■1:「本社から出向してくる今度の部長、朝令暮改だと評判が悪いらしいよ」
■2:「あのクライアントは朝令暮改が得意だから、ひと息置いてから進めるのが得策だ」
■3:「午前中の決定事項を昼過ぎに変更してくるなんて、朝令暮改どころじゃないね」
■4:「経済政策が朝令暮改では、国民の支持を得られるわけはない」
■5:「朝令暮改な上司に振り回され続けると、有能な部下でも能力を発揮するのは難しいだろう」
【最近は「朝令暮改」もウエルカム?】
本来「朝令暮改」は迷惑で残念な状況を表しますが、最近では逆の意味で使われることも。価値観の変化や働き方改革などにより、「臨機応変」や「柔軟性」「即効性」が以前よりぐっと求められるようになりました。決定事項にも柔軟に対応し、無理や無駄のない社会や働き方に価値を見出すようになったと実感している人も多いでしょう。つまり、「朝令暮改」も、状況によってはウエルカム、むしろスピード感があっていい、というわけです。
【「類語・言い換え」表現】
今では悪い意味にも良い意味にも使う「朝令暮改」ですが、否定的な文脈で使用してきたので使う相手によっては気をつけたいものです。類語・言い換え表現を見てみましょう。
■朝改暮変(ちょうかいぼへん)
■朝出暮改(ちょうしゅつぼかい)
■朝変暮改(ちょうへんぼかい)
■朝立暮廃(ちょうりつぼはい)
上の4つは、言葉通り、朝に決めたことが夕方には変わったり、廃止になったり…と、いう意味です。
■三日法度(みっかはっと)
三日法度とは、公儀の出す命令や掟が厳しく行なわれるのは当座だけで、すぐ取締りが緩むこと、から転じて、「すぐに撤回する」という意味に。
■二転三転(にてんさんてん)
物事の内容や状態、成り行きなどが何度も変わること。
【「朝令暮改」の「対義語」】
■首尾一貫(しゅびいっかん)/終始一貫(しゅうしいっかん)
方針や考え方などが始めから終わりまで変わらないで、筋が通っていること。
■徹頭徹尾(てっとうてつび)
始めから終わりまで同じ方針・考えを貫くさま。
【ほかにもあります!「朝」と「暮」の四字熟語】
「朝」と対になる「暮」「夕」「夜」を使った熟語も覚えておくとビジネス会話に役立ちそうです。
■朝三暮四(ちょうさんぼし)
目先の違いに気をとられて、実際は同じであることに気がつかない様子。また、うまい言葉や方法で人を騙すこと、という意味です。これは、飼っている猿に、朝に3つ、暮れに4つ“トチの実”を与えると言ったらと「少ない」と怒っため、では、朝に4つ、暮れに3つ与えよう、言い直したところ満足したという、中国の故事からきた熟語です。「朝四暮三(ちょうしぼさん)」ともいいます。
■朝過夕改(ちょうかせきかい)
犯した過ちをすぐに改めること。君子(学識・人格ともに優れた人のこと)の心得を表す熟語です。
■朝真暮偽(ちょうしんぼぎ)
真偽を見極めることが難しいことや、信念や主義などがすぐに変わる人のことを言います。唐の詩人の白居易(はくきょい)が、信念や主義などをすぐに変える人のことを風刺しして用いた言葉。
【「朝令暮改」を英語では?】
「朝令暮改」を「一貫性がない」「矛盾している」と捉えると、英単語の「inconsistent」が当てはまります。ほかに「理不尽」を表す「unreasonable」も使えそうですね。
・The present government is too inconsistent.(今の政府は朝令暮改が多すぎる)
・She is inconsistent!(彼女は朝令暮改だ!)
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正しく「ちょうれいぼかい」と読めた人はどれくらいいたでしょうか? 日本語には音読みと訓読みがあり、「重箱(じゅうばこ)」のようにひとつの単語に入り混じることも多いので(「じゅう」は音読み、「はこ」は訓読み)、「朝令暮改」を4文字とも音読みすることに不安を感じるかもしれませんね。安心してください、「ちょうれいぼかい」で正解です。
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『情報・知識imidas』(集英社)/『今日から役に立つ! 使える「語彙力」2726』(西東社)/『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) :