「長所と短所は表裏一体」そんなフレーズを聞くことがあるでしょうか。「表裏一体」とは、相反するふたつのものが一体であることを言う四字熟語です。具体的にどういうことなのか、使い方を含めて解説します。
【目次】
【「表裏一体」とは?「読み方」と「意味」 】
■読み方
「ひょうりいったい」と読みます。
■意味
相反するふたつのものがひとつになること。外面(そとづら)と内心(ないしん)が一致して、違わないこと。また、ふたつのものの関係が密接で切り離せないこと。また、その関係。『日本国語大辞典』を見ると上のような解説がありますが、「わかったようなわからないような…」そんな気分は拭えないかもしれませんね。
「表裏一体」を理解するため、ふたつのポイントに注目します。
(1)全く違うものに見えたり感じたりするふたつのものが、元をたどるとひとつのもの(原因・要因はひとつ)である。
例えば、企業の業績が芳しくない、社員の士気も上がらない。このふたつの元をたどると劣悪な労働環境に原因がある――という場合、「業績と社員の士気は表裏一体である」と言うことになります。
(2)ふたつのものは切り離せない関係、どちらかの存在が欠けても成立しない関係である。
例えば「光と影」や「野球のピッチャーとキャッチャー」なども「表裏一体」といえます。
【「正しい使い方」がわかる「例文」5選】
「表裏一体」はどんなシーンで、どう使われるのでしょう。
■1:「行政と民間が表裏一体となって対策・対応していなかったら、この困難を乗り越えることはできなかっただろう」
■2:「制作部と営業部は対立しがちだけれど、両者が表裏一体であることが肝心だ」
■3:「毎日のように激しい喧嘩をしていても、やっぱり兄弟は表裏一体だと息子たちを見ていて思う」
■4:「愛と憎しみは表裏一体とは、よく言ったものだ」
■5:「権利を主張するのであれば義務をしっかり果たしてほしいね。権利と義務は表裏一体ということだよ」
【「表裏一体」の「類語」「対義語」】
「表裏一体」と同じ意味の熟語、似ているけれど意味の異なる熟語、そして反対の意味の熟語も覚えておきましょう。
■同じ意味の熟語
・両輪(りょうりん):両者がひと組になって用をなすもののたとえ。「会長と社長は会社運営の両輪だ」などと使います。「会長と社長が表裏一体となって会社運営にあたる」というように言い換えられますよ。
・相即不離(そうそくふり):一見対立するふたつのものが互いに密接に関連していて離れないこと。「相即不離の関係」は「表裏一体の関係」と同義です。
■似ているけれど意味の異なる熟語
・一心同体(いっしんどうたい):ふたり以上の人が心をひとつにして行動すること。「夫婦は一心同体だ」というふうに使います。「夫婦は表裏一体だ」とも言えますが、「チームの皆さんが一心同体となって…」の場合には「表裏一体となって」とは言いません。
・玉石混淆/玉石混交(ぎょくせきこんこう):これは良いものも悪いものも区別なく入り混じっていることを表す四字熟語。「みんな混ざってひとつ」という意味ではないので「表裏一体」とは異なります。ちなみに…「玉石混合」は誤りなのでご注意を!
・紙一重(かみひとえ):物と物との間に、紙一枚の厚さほどのわずかな隔てがあるさま。また、数量や程度の差が極めてわずかなさまのたとえ。「紙一重ってほぼほぼ一緒ってことだから、表裏一体と変わらないんじゃない?」は誤りなのです。
■反対の意味の熟語
・二律背反(にりつはいはん):哲学で、相互に矛盾するふたつの命題(定立と反定立)が同等の妥当性をもって主張されること。一般に、それぞれ正しいことが明らかであるようなふたつのことがらが、論理的に両立しないことが発見されたときに「二律背反に陥った」と言います――難しいですね。
【「英語」で「表裏一体」を言うと?】
ばっちり置き換えられる英単語はありませんが、切っても切り離せない関係のことを[two sides of the same coin]や、協力してことをなすことを表す強調や協力という意味の[cooperation]で説明できます。
・They are two sides of the same coin.(それらは表裏一体だ)
・work in close cooperation(表裏一体となって働く)
***
哲学的なニュアンスを含む「表裏一体」は、少々難しい熟語だったでしょうか? こういう言葉もスルーするのではなく、この“大人の”語彙力強化塾”で蓄積していきましょう!
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『決定版 すぐに使える! 教養の「語彙力」3240』(西東社)/プログレッシブ和英中辞典』(小学館) :