「今回も彼の辣腕ぶりが光っていた」と言ったら、"彼"は誉められているということがわかるでしょうか。そして、彼のどんなところが凄いのでしょうか? 今回はこの「辣腕」について、さくっと解説します。
【目次】
【「辣腕」とは?「読み方」「意味」「語源」】
■読み方
「辣腕」と書いて「らつわん」と読みます。
■意味
「辣腕」とは、厳しいやり方で、躊躇することなくてきぱきとコトを処理する能力があること。また、そのさまを表します。簡単に言うと、手腕がほかの人と比べて非常に優れているということ。また、ある分野での卓越した知識や経験をもち、成果を上げる能力に長けている人を指す場合もあります。
ビジネスの世界では、経営能力や戦略に長けた人を「辣腕」と言ったり、スポーツ分野では監督やコーチの指導力などにも「辣腕」を使います。
■語源
「辣」という字には「からい」という意味のほかに「厳しい」という意味があります。そして「腕」は身体の腕を指すほか、「コトをなす能力」や「技量」という意味が。この二語によって「厳しい方法でコトをなす」となるわけです。
【「使い方」がわかる「例文」5選】
■1:「彼ほどの辣腕ぶりは、なかなかお目にかかれない」
■2:「辣腕家な夫のサポートもあって、家庭と仕事の両立が図れています」
■3:「彼の辣腕ぶりはクライアントにも一目置かれている」
■4:「今回の裁判は、負け知らずの辣腕弁護士に依頼した」
■5:「新天地でもその辣腕を思い切り振るってください」
【「辣腕」と「敏腕」「凄腕」はどう違う?】
「辣腕」と似た言葉に「敏腕(びんわん)」があります。「敏腕」とは、ものごとを正確に素早く処理する手腕のあることや、そのさまを言います。「辣腕」同様、「敏腕」も、ものごとを処理する際の「手際の良さ」を表す言葉ということですね。違いは「敏腕」は手際だけでなく、頭のはたらきもよいことを表し、「辣腕」は多少強引なところがなきにしもあらずだが、能力が高いのは間違いない、といったニュアンスがあるところ。「辣腕」の「躊躇することなく」という点と「敏腕」のスピード感が似ていたり、「辣腕」にも「敏腕」にも「デキる人」というイメージがあるため、使い分けが難しく感じますが、「辣腕」には、多少なりとも「策士」というニュアンスが入るので、迷ったときには「敏腕」を使ったほうが間違いないといえそうです。
一方、「凄腕(すごうで)」も似た言葉ですが、こちらは普通にはできないようなことをやってのける手腕や、その手腕の持ち主をあらわすので、少々ニュアンスが異なります。
【「辣腕」の「類語」「言い換え」表現】
■類語
・剛腕(ごうわん):自分の考えを強引に押し通す力。「問題解決に剛腕を振るう」
・怪腕(かいわん):並外れて優れた腕力・手腕のこと。「再建に怪腕を振るう」
■言い換え
・有能 ・やり手 ・エキスパート ・達者 ・手練れ(てだ-れ)
【英語で「辣腕」はどう言うのが正解?】
「辣腕」を英語で言う場合、「抜け目がない」「鋭い」という意味の[shrewd]、「能力」や「腕前」を表す[ability]、「鋭敏」や「明確」の[sharpness]を使って表現できます。
・a shrewd politician(辣腕な政治家)
・a person of ability(辣腕家)
・a banker with management sharpness(辣腕銀行員)
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今回の「辣腕」のほか、紹介した「凄腕」「剛腕」「怪腕」だけでなく、に「手腕(しゅわん)」「腕白(わんぱく)」、「腕利き」「腕比べ」「腕達者」など、「腕」を用いた熟語や言い回しは相当数あります。人の能力を言い表すそれらを、適材適所、使い分けていく「大人の語彙力」を、これからも一緒に培ってまいりましょう。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『角川類似新語辞典』(KADOKAWA)/『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) :