【目次】

【「社日」とは?「読み方」と「意味」、「由来」】

■「読み方」

「社日」は「しゃにち」または「しゃじつ」と読みます。

■「意味」

「社日」とは、土地の神さまである「産土神(うぶすながみ)」を祀(まつ)る日本の伝統行事であり、「雑節」のひとつです。季節の目安となる暦としては、この連載でも度々取り上げている「二十四節気(にじゅうしせっき)」がよく知られていますね。「二十四節気」は中国から伝わった暦ですが、「雑節」は日本独自の暦。日本人の暮らしや農作業を反映しています。「社日」を含め、節分や八十八夜、彼岸など、一般的には全部で9つありますよ。

■「由来」

「社」という字は「やしろ」と読むように、「土地の神や神を祀る場所」という意味があります。古代中国で「社日」は「土地の神」を祀り五穀豊穣を祈願する祝日だったようです。日本に伝わってからは、農業、特に稲作にとって大切な季節の節目となり、定着していったといわれています。


【何をする日?】

「社日」は、「産土神(うぶすながみ)」を祀る日です。年に2回、春と秋に行われ、それぞれ「春の社日(春社)」、「秋の社日(秋社)」と呼ばれます。

「春の社日」は種まきの時期に重なるためその年の五穀豊穣を祈願し、「秋の社日」は収穫の時期なので作物の豊穣を神さまに感謝する日とされてきました。土地の神さまは、春の社日にお降 (くだ) りになり、秋の社日に天に帰られると伝えられていますよ。かつては農作業を休んで集落の人々が寄り合い、掛軸などを掛けて土地の神さまや農業の神さまにお供えをし、豊作を祈願・感謝する祭りが広く行われていました。

「社日」には、お米や日本酒、おはぎなどを供えることが多いようですが、行事の内容も含め、地域によってさまざまです。

・信州(長野県)の小県 (ちいさがた) 郡では…
田の神のことをお社日様という。春秋の社日には餅 (もち) を搗 (つ) いて祝う。

・福岡県嘉穂 (かほ) 郡では…
「社日」にシオイと言って、海岸から砂を持って来て、家の内外にまいて清めをする。

・山梨県では…
「社日詣 (しゃにちもうで)」と言い、「春の社日に石の鳥居を七つくぐると中風(ちゅうぶ/脳出血などによって起こるまひなどの症状。中気)にならない」と、ほうぼうの神社を拝み回る風習がある。

・京都府の旧中郡地域(現在の京丹後市)では…
「社日参り」と言って、明け方に東の方の社寺に参り、それから順に西の方へと行き、最後に日の入りを拝む。

また、「社日」に催されるお祭りもあります。

・社日祭(お潮井取り):福岡県福岡市・筥崎宮
・社日まつり(探湯神事):群馬県大泉町・社日稲荷神社


【「社日」にしていけないことは?】

「社日」に「してはいけないこと」があるのはご存知ですか?

■土を触るのはNG!

「社日」に土を触ると土地の神さまを怒らせてしまうとされています。現代の私たちのライフスタイルに当てはめてみると、ガーデニングや家庭菜園も「土を触る」行為。「社日」の考えに即すなら、控えたほうがよさそうです。

■「社日」のお供えものに肉と魚はNG!

お供えものとしては、米や野菜などの農作物や、餅、お酒を供えるのが一般的で、肉と魚は禁忌とされています。これも土」にまつわる祭事、ということが関係しています。


【2025年の「社日」はいつ?】

「社日」は春分と秋分にもっとも近い「戊の日」を指します。「戊」は「つちのえ」と読むように、土と関係が深いため、「戊の日」が社日とされるようになったそうです。土地の神さまは、春の社日にお降 (くだ) りになり、秋の社日に天に帰られると伝えられていますよ。

「戊の日」って何?

旧暦では1日1日の暦に「十干(じゅっかん)」が割り振られています。「十干」は「「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」の10種類。「戊の日」とは、その5番目の「戊」にあたる日です。つまり、10日に1度「戊の日」がまわってくるわけですが、1年は365日か366日なので、「戊の日」は、年によって日にちが異なります。

そもそも、「春分」は毎年3月20日か21日、「秋分」も9月22日か23日と定まりません。それぞれの日に近い「戊の日」、つまり「春の社日」は毎年3月15日~3月26日の間に、「秋の社日」は、毎年9月17日~9月28日の間にやってきます。

■2025年の「社日」は「いつ」?

2025年の春の「社日」は3月20日(木)、秋の「社日」は9月26日(金)です。

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「社日」は農業と密接に関わる伝統行事ですが、都会に暮している人にとっては、あまり馴染みがないかもしれませんね。しかし、現在では農業を営む人々に限らず、暮らしを守護していただいたり、家計の安心を得ることを祈念して、「社日」のお参りは親しまれているようです。2025年「春の社日」は3月20日(木)。頭の片隅に留めて、ビジネス雑談の小ネタとしてお役立てください!

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『世界大百科事典』(平凡社) :