「社日」は「しゃにち」と読み、季節の変化の目安となる「雑節」のひとつ。「社日」も「雑節」も、馴染みのある言葉ではないかもしれませんが、昔から日本では、農業、特に稲作にとっての大切な節目であり、春と秋に1日ずつ巡ってきます。ということで今回のテーマは「社日」。いつ、どんな日なのか、その由来、「社日」に「すること」「してはいけないこと」について解説します。

【目次】

土地を守ってくれる神様を祀る日です。
土地を守ってくれる神さまを祀る日です。

【「社日」って知ってる?「読み方」「意味」など「基礎知識」】

■「読み方」

「社日」は「しゃにち」または「しゃじつ」と読みます。

■「意味」

「社日」とは、季節の変化の目安となる「雑節」のひとつで、その土地を守ってくれる神さまを祀(まつ)る日です。暦のうえで季節を表すものには、中国から伝わった「二十四節気(にじゅうしせっき)」が知られていますが、「雑節」はそれ以外の暦のひとつで、日本人の暮らしや農作業を反映しています。「雑節」には、「社日」を含め、節分や八十八夜、彼岸など、一般的には全部で9つありますよ。

■「いつ」?

「社日」は1年に2日あり、「春分、秋分に近い戊 (つちのえ) の日」と決まっています。では「戊の日」とはなんでしょう。

旧暦では1日1日の暦に「十干(じゅっかん)」が割り振られています。「十干」は「「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」の10種類。「戊の日」とは、その5番目の「戊」にあたる日です。10日に1度「戊の日」がまわってきますが、1年は365日か366日なので、「戊の日」は、年によって日にちが異なります。そもそも、「春分」は毎年3月20日か21日、「秋分」も9月22日か23日と定まりません。それぞれの日に近い「戊の日」、つまり「春社(しゅんしゃ)」と呼ばれる「春の社日」は毎年3月15日~3月26日の間に、「秋社(しゅうしゃ)」とも呼ばれる「秋の社日」は、毎年9月17日~9月28日の間にやってきます。

■「由来」

「社」という字には「土地の神」という意味があります。古代中国で「社日」は「土地の神」を祀り五穀豊穣を祈願する祝日だったようです。日本に伝わってからは、農業、特に稲作にとって大切な季節の節目となり、定着していったといわれています。また、「戊」は「つちのえ」と読むように、土と関係が深いので「戊の日」が社日とされるようになったそうです。


【何をする日?】

「社日」は、その土地を守ってくれる神さまである「産土神(うぶすながみ)」を祀る日です。「春の社日」は種まきの時期に重なるためその年の五穀豊穣を祈願し「秋の社日」は収穫の時期なので作物の豊穣を神さまに感謝する日とされてきました。土地の神さまは、春の社日にお降 (くだ) りになり、秋の社日に天に帰られると伝えられています。かつては農作業を休んで集落の人々が寄り合い、掛軸などを掛けて土地の神さまや農業の神さまにお供えをし、豊作を祈願・感謝する祭りが広く行われていました。

・信州(長野県)の小県 (ちいさがた) 郡では……
田の神のことをお社日様という。春秋の社日には餅 (もち) を搗 (つ) いて祝う。

・福岡県嘉穂 (かほ) 郡では……
「社日」にシオイと言って、海岸から砂を持って来て、家の内外にまいて清めをする。

・山梨県では……
「社日詣 (しゃにちもうで)」でと言い、「春の社日に石の鳥居を七つくぐると中風にならない」と、ほうぼうの神社を拝み回る風習がある。

・京都府の旧中郡地域(現在の京丹後市)では……
「社日参り」と言って、明け方に東の方の社寺に参り、それから順に西の方へと行き、最後に日の入りを拝む。

また、「社日」に催されるお祭りもあります。

・社日祭(お潮井取り):福岡県福岡市・筥崎宮

・社日まつり(探湯神事):群馬県大泉町・社日稲荷神社


【「社日」にしていけないことは?】

では、「社日」に「してはいけないこと」はあるのでしょうか。

■土を触るのはNG!

「社日」に土を触ると土地の神さまを怒らせてしまうとされています。現代の私たちのライフスタイルに当てはめてみると、ガーデニングや家庭菜園も「土を触る」行為として、「社日」の考えに即すなら、控えたほうがよさそうです。

■「社日」のお供えものに肉と魚はNG!

お供えものとしては、米や野菜などの農作物や、餅、お酒を供えるのが一般的で、肉と魚は禁忌とされています。これも土」にまつわる祭事、ということが関係しています。


【2024年の「社日」はいつ?】

上でも説明した通り、「社日」は1年に2日あり、「春分、秋分に近い戊 (つちのえ) の日」です。2024年の「春の社日」は3月15日でした。「秋の社日」は9月21日、2025年は3月20日と9月26日です。

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「社日」は農業と密接に関わる「雑節」のひとつで、都会に暮している人にとっては、あまり馴染みがなく、初めて知ったという方も多いかもしれませんね。しかし、アグリビジネスは広く発展していますし、ビジネスシーンで交わされる雑談では、意外なものが話題になり、その会話が弾むことで、良好なコミュニケーションやチャンスが生まれるものです。「しゃにち…???」とならないよう、ぜひ、頭に留めておいてくださいね。

この記事の執筆者
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