「必要条件」と「十分条件」という言葉、どこかで聞いた覚えはありませんか? 実はこれ、高校数学で習う大変重要なキーワード。「難しい数式や理論なんて社会に出たらほとんど無用」と思っている人は少なくないと思いますが、「必要条件」と「十分条件」を正しく理解して活用すると、マーケティング戦略やビジネス思考の整理に役立ちます。今回はこれらをできるだけ簡単に解説しますので、食わず嫌いせず最後までご覧くださいね。

【目次】

「必要条件? 十分条件?」と迷ったら…。
「必要条件? 十分条件?」と迷ったら…。

【「必要条件」とは?「十分条件」とは?】

「必要条件」と「十分条件」を理解しやすいよう“対”で解説していきます。まずはそれぞれの意味を確認しましょう。

■「必要条件」の意味

ある事柄が成立するために必要な条件のこと。命題「AならばBである」が成り立つとき、「BはAの必要条件」と言います。

Aをチーズ、Bを乳製品に置き換えてみましょう。「チーズ(A)は乳製品(B)だ」は正しいですね。この場合「乳製品はチーズの必要条件」になります。

■「十分条件」の意味

対して「十分条件」とは、「AならばBである」が成り立つとき、「AはBであるための十分条件」となります。

上記の例を当てはめると、「チーズは乳製品の十分条件」というわけ。では、「A」と「B」に当てはめたチーズと乳製品を入れ替えて考えてみましょう。「乳製品(A)はチーズ(B)だ」は正しくありません。なぜなら乳製品はチーズだけではないからです。ですからこの文脈では「必要条件」も「十分条件」も成り立ちません。


【「必要条件」と「十分条件」の見分け方

まだ、わかったような、わからないような…という気分でしょうか? この「必要条件」と「十分条件」は、マーケティング戦略に役立つ考え方でもあるので、しっかり理解したいですね。

■図をイメージすると簡単!

先ほどのチーズと乳製品の例を図にしてみましょう。乳製品の大きな円の中には小さなチーズという円が入りますね。それだけでなく、牛乳やヨーグルトなど小さな円も含まれます。より大きく広い円のほうが「必要条件」なのです。広いの「ひ」は必要条件の「ひ」と覚えれば簡単ですね。片方(必要条件)がわかればもう一方(十分条件)は簡単! 「乳製品は牛乳の必要条件」であり、「牛乳は乳製品の十分条件」で、「乳製品はヨーグルトの必要条件」であり「ヨーグルトは乳製品の十分条件」なのです。


【ビジネスでも!イメージしやすい「例文」5選】

■1:「商品開発も製造も販売も宣伝も、すべては顧客満足という必要条件のもと成り立たなければならない」

顧客満足という大きな円に、満足度の高い商品の開発や安全安心な製造、納得のいく価格、効果的な宣伝などが含まれます。このようなロジカルシンキングは、さまざまな業種業態で取り入れることができます。

■2:「千代田区は東京都だから、東京都民であることは千代田区民であることの必要条件(1)で、千代田区民であることは東京都民であることの十分条件(2)だ」

東京都と千代田区の関係を図にしてみると、千代田区は東京都の円の中に存在するので(1)が成立。千代田区民であれば間違いなく東京都民でもあるので(2)も成立します。

■3:「タクシードライバーにとって二種免許の取得は必要条件だが、二種免許を持っていることがタクシードライバーの十分条件ではない」

運転免許の二種免許を取得していなければタクシードライバーにはなれませんが、二種免許を持っているだけではタクシードライバーであることにはなりませんね。

■4:「メロンパンを買いにパン屋へ行くのは必要条件だが、必ずしも十分条件ではない」

例えばメロンパンが欲しい人がそれを販売しているパン屋へ行くのは必要条件ですが、必ずしもメロンパンがあるとは限らないので、パン屋に行くことだけで十分条件とはいえません。メロンパンが購入できるパン屋へ行けば、必要条件も十分条件も成立します。

■5:「果物はリンゴの必要条件で、リンゴは果物の十分条件だ」


【「必要十分条件」とは?】

ある事柄が成立するための必要にして十分な条件のこと。命題「AならばBである」と命題「BならばAである」が同時に成り立つとき、BはA(またはAはB)の「必要十分条件」と言います。

例を挙げましょう。「徳島、高知、愛媛、香川は、四国の県です」と、「四国の県は、徳島、高知、愛媛、香川です」は同時に成立しますね。ということは、「四国の県は徳島、高知、愛媛、香川の必要条件」であり、「徳島、高知、愛媛、香川も四国の県の必要条件」になり、これが「必要十分条件」なのです。なお、「徳島は四国の県です」も成り立ちますが、この場合は「四国の県は徳島の必要条件」で、「徳島は四国の県の十分条件」となります。


【「必要条件」と「十分条件」を英語にしてみると】

必要条件は[a necessary condition]や[a requirement]で、十分条件は[a sufficient condition]必要十分条件は[a necessary and sufficient condition]を用います。

・Ability to use a computer is one of the requirements.(コンピュータが使えることが必要条件のひとつである)

***

ビジネスに欠かせないロジカルシンキングに、今回の「必要条件」と「十分条件」という考え方はとても重要です。今行っている作業、業務は何が目的なのかという「必要条件」を常に意識して働くと、ストレス軽減になるかもしれませんね。ファイト!

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『ビジネスですぐ使える 語彙力が身につく本』(三笠書房)/『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) :