「享楽的」は「快楽を追い求めること」を意味する言葉です。「快楽」とは、気持ちよく楽しいこと。一度きりの人生、苦しくつらいよりも、楽しいに越したことはありませんよね。ですが、「享楽的」は、よい意味で使うことがあまりありません。これは「享楽的」の正確な意味を理解すれば、その理由がわかりますよ。今回は「享楽的」の使い方がわかる例文、「享楽的な人」の特徴や言い変え表現、英語表現まで、幅広く解説します。

【目次】

享楽的とは「快楽を追い求める生き方」を意味します。
享楽的とは「快楽を追い求める生き方」を意味します。

【「享楽的」とは?「読み方」と「意味」】

■読み方

「享楽的」は「きょうらくてき」と読みます。

■意味

「享楽的」とは「快楽にふける様子」や「快楽を好む傾向にあること」を意味する言葉です。「思いのままに楽しむこと」には「楽しければいい」という刹那的なニュアンスも含むため、あまりよい意味では使われないことが多いようです。

「享楽的」の「享」には「受ける」「受け取る」という意味があります。ここから、「享楽」は「楽しみを味わうこと。思いのままに快楽にふけること」という意味に。そして「的」は名詞のあとについて「そのような性質をもったもの」の意を表します。従って「享楽的」は「快楽を好む性質」、あるいは「快楽に熱中し、心を奪われている様子」といった意味になるのです。そこには「人生を謳歌し、自由にハッピーに生きている」というポジティブなイメージはありません。


【「使い方」がわかる「例文」3選】

「享楽的」の使い方を例文でチェックしてみましょう。

■1:「自分でもわかっていると思うけれど、そんな享楽的な生活は長くは続かないよ」

■2:「今となっては若気の至りと言うべきか…私もかつてはかなり享楽的な生き方をしていたことがある」

■3:「怠惰で享楽的な性格だった彼は、どんな職についても長続きしなかった」


【享楽的な性格とは?「享楽的な人」の特徴】

あなたの周りに「享楽的」な人はいますか? 言葉の意味を考えると、「享楽的」な人は、現実的にはかなり危なっかしい性格のように見えますね。特別堅実な人でなくとも将来を考えれば、享楽的な人生は楽しそうには見えますが、なかなか選びにくいものです。

■あと先を考えず、刹那的である

■計画性がない

■苦しいことが嫌い

■直感や感情で判断し、行動する

■気持ち(欲望)を優先しがち


【「享楽主義」と「快楽主義」の違いは?】

■そもそも「享楽主義」とは

「快楽を追求することを人生最上の目的とする主義」のことを「享楽主義」と言います。『デジタル大辞泉』の「享楽主義」の項目には「快楽主義」との説明もありますので、このふたつはほぼ同義と言っていいのかもしれません。倫理学においては快楽説、文芸においては耽美派(たんびは)がこれにあたります。

■そもそも「快楽主義」とは

快楽主義とは「快楽こそが善の最終的な判断の基準である」と考え、快楽を行動の正しさや義務の基準とみなす倫理学の立場のこと。一般には肉体的快楽、特に性的快楽を追求する立場を指しますが、哲学史的には、何を快楽とするかは各体系によって異なるようです。

■「享楽主義」と「快楽主義」の違いは

「快楽の追求」に重きを置くという点において、「享楽主義」と「快楽主義」に違いはないようですが、「快楽主義」においては「快楽が正しい行動や善悪の判断基準」となっていることが「享楽主義」との違いです。「享楽主義」では「快楽は人生究極の目的」とされています。


【「類語」「言い換え」表現】

「享楽的」の「類語」「言い変え表現」をいくつかご紹介します。

・エピキュリアン:快楽主義者。享楽主義者。

・快楽主義的

・刹那的:あと先を考えず、今この瞬間だけを充実させて生きようとする様子。特に、一時的な享楽にふける様子。

・即物的:物質的なことや金銭的なことを優先して考える様子。「目先の欲を優先する」という意味で「享楽的」と共通しています。

そのほか、「享楽的」のニュアンスとしては「思いのまま楽しく生きる」「楽しければいい」という表現にも置き換えられます。


【「対義語」は?】

では「享楽的」の対義語は何でしょう。

・禁欲的:欲望、特に性欲を抑えている様子。

・ストイック:自分に厳しく、欲望に流されない性格。

・克己心がある:自己に打ち勝つ心をもっていること。欲望を抑制しようとする意志があること。


【「英語」で言うと?】

「享楽的」を表現する英単語は、「早い」「素早い」のほか、「ふしだらな」「放埒な」といった意味をもつ[fast]です。[fast-living]で「享楽的な生活」を意味しますが、[a fast crowd(放埒な連中)]、[a fast liver(放蕩者)]などの表現があることからわかるように、かなりネガティブなニュアンスの言葉です。また、[decadent(デカダン]は「豪華・優雅」といった肯定的なイメージで使われることも多い言葉ですが、語源的には「退廃・不道徳」という否定的ニュアンスを含んでおり、「享楽的」と共通した意味合いがあります。

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享楽的に生き、人生をまっとうできたら、それはそれで幸福な人生かもしれませんね。でも、あと先考えずに快楽を追い求めたあとには、むなしさが残るのではないでしょうか。そして後悔するのでは? こんなふうに「祭りのあと」を心配してしまう性格の人には、「享楽的な人生を全うする」ことは難しい…。だからこそ、「享楽的」な人に憧れに似た感情が芽生えるのかもしれません。

この記事の執筆者
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