あなたの職場には「根性が足りない」「根性を見せろ」などと言ってくる上司はいませんか? 根性と能力は別もの、のはずですが、「できないのは根性が足りないからだ」と言わんばかりでうんざり…という人もいるでしょう。では、そもそも根性って何? 今回は「根性論」について、正しい意味や使い方をさくっと解説します。

【目次】

「根性論」と「精神論」、どちらも厄介な時代です。
「根性論」と「精神論」、どちらも厄介な時代です。

【「根性論」とは?「読み方」と「意味」】

■読み方

「根性論」で「こんじょうろん」と読みます。

■意味

『デジタル大辞泉』には、「強い精神力があれば、なにごとも成し遂げられるとする考え方」とあります。

「根性」には大きくふたつの意味があります。ひとつめは、その人が本来的にもっている性質、性根のこと。また、あるものに特有の性質を指します。ふたつめは、ものごとをやり通す逞しい精神、気力のこと。「根性論」の根性は後者の意味です。

■いつから?

「困難に屈しない、逞しい精神・気力があれば、なにごともやり遂げられる」という考えが「根性論」。現代社会にはそぐわない古い価値観だと感じる人も多いでしょう。これは1964(昭和39年)の東京オリンピックの際に、女子バレーボールの日本代表を率いた大松博文監督が強く打ち出したもの。彼の指導により、「東洋の魔女」と呼ばれるほどの実力をつけ、金メダルを獲得したという成功例をもって、この「根性論」が社会に浸透したと考えられます。高度経済成長真っただ中のイケイケだった日本だったからこそ浸透したとも言えるでしょう。


【「使い方」がわかる「例文」5選】

■1:「根性論で戦える時代はとっくに終わっている」

■2:「今の時代に根性論を説いても、若者にはまったく響かないよ」

■3:「根性論なんてもち出したら、パワハラで一発アウトだね」

■4:「個々の能力を見極めて仕事を割り振るのが管理職の仕事なのに、その能力が足りないから根性論で押し通そうとするんだよ」

■5:「根性論も精神論も、もはや老害と言わざるを得ない」


【「根性論」と「精神論」はどう違う?】

「根性論」と似た言葉に「精神論」があります。「精神論」とは「精神力を集中的に駆使すれば、物質的諸事象を統御できるとする考え方」です。簡単に言えば、なにごとも達成させるには強い精神力が必要ということ。そして、「精神論」で使われている「精神」は、やる気や気力なども含めた、広い意味をもちます。使い分けるとしたら、スポーツシーンや、フィジカル的にもメンタル的にもキツイ状況には「根性論」を、一般的な仕事や生活シーンでは「精神論」でしょうか。いずれにしても、相手が負担に感じることはハラスメントに繋がりかねない現代。「根性論」も「精神論」ももち出すのは難しいかもしれませんね。


【「類語」「言い換え」など関連表現】

「根性論」という言葉そのものがNGなのではなく、その考えを立場が下の人に押し付けるのがNG、「頑張っているのに頑張ってと言われるだけでプレッシャー」「現状を否定されているようで傷つく」「追い詰められて、つらい」という人も少なくないので、以下の言葉も使い方は要注意、ということを踏まえて見ていきましょう。

・不屈の精神:成し遂げたいものごとに対して、障害があっても諦めずに立ち向かう強靭なメンタルのこと。

・気骨:自分の信念を守って、どんな障害にも屈服しない強い意気。

・気合い:精神を集中させてものごとに当たるときの、気持ちの勢い。

・意志のある所に道は開ける:為せば成る、ということ。アメリカ第16代大統領のエイブラハム・リンカーンが残した「Where there is a will, there is a way」が、ことわざとして伝わったもの。

・努力は必ず報われる/やればできる:「だから頑張れ!」という励ましのフレーズ。


【「根性論」は時代遅れ?「老害」と嫌われる理由】

先にご紹介したように、「根性論」は60年前の東京オリンピックでの成功体験がベースにあるようです。「頑張ればなんとかなる」「根性が足りないからダメなんだ」「やればできる」といった当時は「ごもっとも」とされていた考え方が今、なぜ嫌われているのでしょうか。

■論理的でない、根拠がない

頑張れば乗り越えられる――気持ちを奮い立たせたり、目標に向かって集団を導く際の気持ちの指標にはなりますが、科学的な根拠はゼロ。そこが現代では受け入れられにくいのでしょう。

■非効率

ミスや失敗をした際に「根性が足りない」という「根性論」をもち出す人は、具体的に原因を探ったり、対処法を打ち出すことが苦手な人が多いのです。結果、「本当は」なぜダメだったのかがわからない。だから次にも生かせない。「根性論」が非効率で合理的でない点も、若者に嫌われる要因と思われます。

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「根性論」はふた昔前、昭和時代の考え方と言っていいでしょう。大きな壁に阻まれたときや、くじけそうになった時には奮い立たせてくれるという利点はありますが、令和の現代では「古い価値観」に分類されます以前のスポーツ界では、身体能力や体格で劣っていた日本人が世界で戦うために「根性論」が必要だったのかもしれませんが、アメリカのメジャーリーグで活躍する野球選手やヨーロッパで活躍するサッカー選手を見ていると、もうその限りではないようです。指導は論理的、効率的であることが大切。そうであってほしいものです。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『角川類似新語辞典』(KADOKAWA)/『日本国語大辞典』(小学館) :