夏の白の着こなしに、奥行き=ニュアンスを生むのは配色と質感に尽きます。特に今夏はファジーなワントーン配色で着こなす白がおしゃれの鮮度アップにつながる正解アプローチ。

雑誌『Precious』6月号では【大人の日常を彩る「ホワイト・ブレンド」】と題し、曖昧なニュアンスで魅せるワントーンが今季のBESTな着こなしをお届けしました。

今回はその中から、アーティストとして活躍中の中北紘子さんに「白」についてお伺いしたスペシャルインタビューをご紹介します。

中北紘子さん
アーティスト
(Hiroko Nakakita)東京藝術大学大学院美術研究科 絵画科油画専攻修士課程修了後、本格的に創作活動を始める。神戸とL.A.を拠点に制作を続け、国内外で発表。昨年春には、ジュエラーの「TASAKI」と共同のアート制作を行うなど、注目度が高い。

「“白”は神聖な色。自分の原点に帰るほどに特別な意味を感じます」

バッグ_1
昨年手に入れた「ザ・ロウ」のバッグ『インディア』は、上質なカーフスキンレザーの風合いと、柔らかいフォルムのバランスに惹かれて。「使うときはそれなりに緊張感がありますが、このバッグは、白を選ぶことに意味があると思って」

「私にとって、白は特別な色。作品の制作中や、子供といるときは汚れが気になるので避けますし、公の場でも主役は作品なので、黒を着ることが多いんです。だから、私が白を選ぶのは理由があるとき。このバッグも、昨年の冬に訪れた北海道のニセコで『白いコートに合わせたい』と思ったのが、手に入れたきっかけでした。

ふだんの生活では、どうしてもいろんな色が視界に入ってくるのですが、雪山はすべてが真っ白で、むだな色がなくなる。自然が生み出したミニマルな世界の中にいると、自分自身もゼロになる気がするんです。そこから大切なものが、もう一度見えてくる。私にとって、原点に帰る時間でした。

最近は、「TASAKI」とのコラボレーションや、繭を使った作品づくりなど、仕事でも白を意識することが多くなりました。パールの白には、いつもの画材とは別の、美しいだけでない、ものすごく純粋なものを感じて。繭もそう。蚕の口から、細く強い糸が紡がれるという工程を想像すると、生命力に溢れていて、やはり天然が生み出す白は、おそれ多いものがあります。パールも繭も画材として使うけれど、何か自分勝手に扱ってはいけない気持ちになりました。

だから制作以外の時間も、実際に触れたり枕元に置いたりして、会話をするように向き合ってみたんです。すると長い時間を一緒に過ごすことで、こちらもより愛情が湧き、母親のような感覚に。本来は画材でない素材かもしれませんが、私の作品として生まれ変わることで、新しい道をつくってあげる、そんな慈愛に満ちながら、作品づくりに取り組んだ思い出がありますね。

そういえば、キャンバスも最初は白。アトリエには、とても神聖な気持ちで入りますし、やはり私にとって白は、人生において最も純粋な部分を表現する色かもしれません。そこに何かを描くのは、勇気のいることですが、丁寧に作品と対話しながら、新しいものが生み出せたらと思います」(中北さん)

※掲載アイテムは私物になりますので、ブランドへの問い合わせはご遠慮ください。

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PHOTO :
宗髙聡子
EDIT :
湯口かおり、福本絵里香(Precious)