連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変える

明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介している連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、オーガニックフラワー生産者で「ベインタン・フラワーズ」のオーナーを務めるポリー・ニコルソンさんの活動に注目!

自然と共存しながら美しい花を育てようと取り組んでいる、ポリーさんのお仕事について、お話しをうかがいました。

ポリー・ニコルソンさん
オーガニックフラワー生産者「ベインタン・フラワーズ」オーナー
(Polly Nicholson)大学卒業後、オークションハウス「サザビーズ」で1700年代のキッチンやガーデニング関連のカタログを制作。その後、夫の仕事の関係でロシアに駐在する。帰国後、ガーデニングスクールで学び、’12年に「ベインタン・フラワーズ」を立ち上げ。チューリップの専門家として活躍する。この春、初の著書『チューリップ・ガーデン』(Phaidon刊)を上梓した。

自然と共存しながら美しい花を育てる|古代種チューリップで注目の生産者

「ベインタン・フラワーズ」オーナーのポリー・ニコルソンさん
オーガニックフラワー生産者、「ベインタン・フラワーズ」オーナーのポリー・ニコルソンさん

ロンドンから電車で1時間強のイギリス南西部・ウィルトシャー州の小さな町、カーン近郊に、ポリーさんが経営する「ベインタン・フラワーズ」はある。18世紀ジョージ王朝時代のカントリーハウスの敷地内に広がる花畑で育てられているのは、スイートピーや水仙、アイリスなど、いずれもほかでは見られない個性的な品種ばかり。

なかでも「ヒストリック・チューリップ」と呼ばれる古代種のチューリップは見事で、その多彩さと美しさは感動もの。王室御用達のフローリスト、シェーン・コノリーさんも絶賛し、フラワーショーなどでコラボレーションすることも多い。

「現在私の畑には、1595年から2008年までのヒストリック・チューリップが75種以上あります。黄色の縁どりの真っ赤な花びらで20cmほどの小ぶりで愛らしいもの、アーティスティックな斑入りの花びらをもつもの、色の深み、珍しい模様、フェザーのような繊細な花びらなど、見ていてため息が出るほど。ヒストリック・チューリップはひときわ手間がかかりますし、レアで、高価で、正直なところ利益率も高くありません。でも、これからもずっと私のファームで咲き続けることでしょう。私にとっては、ベイビーのような存在です」

幼い頃から花が好きだったポリーさん。ロンドンでの子育て中に一念発起して「イングリッシュ・ガーデニング・スクール」に1年通ったことと、その後の引越しが転機になった。サステイナブルな生産方法にも取り組み、オーガニック・ファームとして認定されている。

「水は50mの井戸を掘ってそこから汲んだり、川からポンプで引いたり。海藻由来の肥料やニンニクでの虫除けなど、ケミカルなものを使わずに栽培をしています。馬もいるのでその排泄物や、落ち葉の堆肥、生ゴミなど、コンポストも重要ですね。できるだけ自然に負荷をかけず、共存しながら美しいものを生産することは可能なのです。このスタンスをできるだけ多くの人々に広めていきたい」

◇ポリー・ニコルソンさんに質問

Q.朝起きていちばんにやることは?
窓の外の天気を確認すること。花を育てている私にとって、お天気はその日の仕事を左右しますから。
Q.人から言われてうれしいほめ言葉は?
チューリップに関する講演後に「あなたの話はおもしろかった」と言われること。
Q.急にお休みがとれたらどう過ごす?
英国南部のドーセット州の海辺に行き、人があまり来ない美しいペブルビーチを、静かにひとりで歩きたい
Q.仕事以外で新しく始めたいことは?
ボタニカルペインティング。完璧主義が求められるその世界に魅力を感じます。
Q.10年後の自分は何をやっている?
自然の中で咲いている古品種のチューリップを探して、キルギス共和国やカシミールを旅することを夢見ています。

PHOTO :
Miki Yamanouchi
EDIT&WRITING :
剣持亜弥、喜多容子・木村 晶(Precious)
取材 :
Yuka Hasegawa