連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変える
明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介している連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、アフリカのエチオピアを拠点に、シープスキンのバッグブランドを立ち上げた「andu amet」代表取締役・チーフデザイナーの鮫島弘子さんのお仕事に注目!
「誰かが幸せになるものづくりがしたい」と話す鮫島さんの活動についてお話しをうかがいました。
エチオピアのシープスキンを使ったバッグが教えてくれる、真にエシカルな未来とは
「誰かが幸せになるものづくりがしたい」鮫島さんがアフリカのエチオピアを拠点に、シープスキンのバッグブランドを立ち上げたのが2012年のこと。それから12年が経ち、「なんとかなりそうな感じ…もなくて、次から次へと問題がやってくる」と苦笑する。
「元ストリートチルドレンの若いスタッフに『見えない裏もちゃんと縫って』とつきっきりで技術指導。なんとか仕上げても半分が不良品…みたいな、初期の苦労はさすがにもうありません。今は現地の職人たちに信頼して任せられるし、生産のシステムも整ってきました。けれど、コロナ禍や内戦が起きたり、ハイパーインフレや物資不足などがあったり、ここ数年は一企業ではコントロールできない部分までビジネスの俎上に載せなくてはならない状況。ずっとジェットコースターに乗っている気分です。でも、案外それを楽しんでいる自分もいたり(笑)」
デザイナーとして入社した国内メーカーで目の当たりにした大量生産、大量消費に違和感を覚え、青年海外協力隊デザイン隊員としてアフリカに渡ったのが20代のとき。偶然赴任したエチオピアで、強烈な貧困と格差、援助慣れした人々の姿に打ちのめされながらも、高品質なシープスキンに出合い「これはこの国を成長させる産業になる」と確信した。
「売って終わり、儲かればいい、という商売ではない、10年20年と続くビジネスをしよう、と。それは、SDGsやエシカルの本質を問うことでもあると思うんです。例えば、私たちが使うシープスキンは食肉利用された後に残った革です。エチオピアでは食用としては羊の肉がメインなんですね。廃棄もせずにすみ、しかも上質だから長く使える。ほかのものに代替するのではなく、いただいた命を全部利用しきる、というのも、サステイナブルのあり方ですよね。そういうことを立ち止まって考え続ける自分でありたいし、それを製品で伝えていくことも使命だと思っています」
◇鮫島弘子さんに質問
Q.朝起きていちばんにやることは?
二度寝(笑)。朝が苦手なので、目覚ましを早めにかけて至福の二度寝。
Q.人から言われてうれしいほめ言葉は?
お客様から「以前は毎シーズン新しいものをたくさん買っていたけれど、“andu amet”のバッグを買ってからはそういう気持ちがなくなった」というお手紙をいただいたのがすごくうれしかった。
Q.急にお休みがとれたらどう過ごす?
旅行へ。“違和感を体験する”ことが私の旅のテーマ。
Q.仕事以外で新しく始めたいことは?
健康管理。ヨガやピラティス、筋トレなど。
Q.10年後の自分は何をやっている?
もう少しデザインや作品づくりに時間をかけられるようになっていたい。
Q.自分を動物にたとえると?
ハチドリ。森の火事をしずくで消そうとする愚直さに共感。
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- PHOTO :
- 望月みちか
- EDIT&WRITING :
- 剣持亜弥、喜多容子・木村 晶(Precious)
- 取材・文 :
- 剣持亜弥