薬剤被害によって障がいをもつ少年“フクスケ”をめぐり、さまざまな境遇の登場人物たちが、もがき苦しみ、生き抜いていく姿を毒々しく描いた人間ドラマ『ふくすけ』。今回の12年ぶり、4度目の上演では、サブタイトルを“歌舞伎町黙示録”と題して台本をリニューアル。フクスケが入院する病院の警備員・コオロギと、盲目の妻・サカエの夫婦を軸に、物語は展開します。本作品に2度目の上演からフクスケ役として参加していた阿部サダヲさんは、今回コオロギを演じます。
「松尾さんのコピーをするのは、面白くないなって」(阿部さん)
―――『ふくすけ』は4度目の上演、阿部さん自身は3度目の参加となります。役柄もフクスケからコオロギに変わるということで、どのような思いがありますか?
「そうですね、コオロギという役は、役者としていい役だな、いつか手を出してみたいなと思っていました」
――――病院に勤める怪しい警備員コオロギは、盲目の妻・サカエから献身的な愛を注がれています。以前は作・演出の松尾スズキさんも演じられていましたね。
「そんな役ができるのはうれしいですけど、プレッシャーもありますね。台本を読み返すと、難しい役だなというのはすごくわかるし、どうやってやるんだろうって。新しい台本では、コオロギとサカエの“エピソード0”的な、ふたりの出会いに関しても描かれているので、どうしてこの夫婦がこういう関係になったのか、そこはわかりやすくなっているかもしれません」
――――松尾さんから、何かアドバイスはありましたか?
「いや、まだないです。コオロギって、空っぽなんだけど空っぽじゃないみたいな、本当に得体が知れない人物だから、何をモチーフにしていいのかわからないけど、やっぱり松尾さんとオクイ(シュージ)さんが演じていたものがベースにはなるんでしょうね。でも自分がやるとなると、コピーにはしたくないので。稽古場でも、何かしら演出してほしいですけど、されなかったりして(笑)。松尾さんに『ちょっと自分でなにかやってみて』みたいに言われたら、すごい嫌ですよね」
――――(笑)。松尾さんが演じられたときは、まだ20代だったとか。
「松尾さんが20代後半だったときのガンガンいく感じのコオロギもあると思うんですが、僕は50歳を過ぎているので、嫌な感じに歳を取ったコオロギを出してみたいですね。コオロギって、セリフのひとつひとつが怖いんですけど、どこか気になるというか、すごく印象に残るので、そこをもっと強調したいなと。あとやっぱり僕はお笑いが好きなので、笑いの部分も出していきたい。物語自体が少し重いので、実際はどうなるかわからないですが、できたら面白いかなって。松尾さんが僕に当て書きしてくれているところも多少あるようなので、そういうところにはちゃんと応えられたらいいなと思います。」
――――今回、12年ぶりの再々々演となるわけですが、ご自身には何か変化はありましたか?
「1998年に初めて自分がフクスケを演じて、役者としてひとつ変われた感覚があったんです。今回はコオロギを演じることになって、また役目が変わってきた気はしますね。松尾さんの僕に対しての印象が変わったのかもしれないですけれど。『そういう役もできるようになってきた』みたいなことを、以前言われたことがあったので」
この続きは、阿部サダヲさんインタビューVol.02で! 33年前の作品にもかかわらず、現代を予知したかのような、物語の魅力について語っていただきました。
■Information■ COCOON PRDUCTION 2024『ふくすけ2024-歌舞伎町黙示録-』
公演日程/
【東京公演】2024年7月9日(火)〜8月4日(日) 会場/THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6階)
【京都公演】2024年8月9日(金)〜15日(木) 会場/ロームシアター京都メインホール
【福岡公演】2024年8月23日(金)〜26日(月) 会場/キャナルシティ劇場
作・演出/松尾スズキ
出演/阿部サダヲ、黒木 華、荒川良々、岸井ゆきの、皆川猿時、松本穂香、伊勢志摩、猫背 椿、宍戸美和公、内田 慈、町田水城、河井克夫、 菅原永二、オクイシュージ、松尾スズキ、秋山菜津子ほか
公式サイト
企画・製作/Bunkamura
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- PHOTO :
- 松木康平
- STYLIST :
- チヨ
- HAIR MAKE :
- 中山知美
- WRITING :
- 湯口かおり
- EDIT :
- 福本絵里香