老舗蕎麦店16代目当主としての務めを果たしながら、写真の作品撮りも行う才媛・稲岡亜里子さんへのインタビュー。最終回では、今後の目標やご自身や家業の未来についてうかがいました。
【第1回】N.Y.のカメラマンから、京都の老舗蕎麦店の16代目当主に
【第2回】家業に入ってより大切に感じた人とのつながり
【第3回】「伝統を守っていく」意識を高めるためにできること
伝統の継承と革新
伝統を守るだけでなく、新しいことにもチャレンジしていく稲岡さん。2016年度には友人である料理家の船越雅代さんとコラボレーションし、期間限定蕎麦菓子カフェをオープン。大盛況のうちに幕を閉じました。
「うちは、蕎麦屋のイメージが強いかと思いますが、550年前、菓子屋として創業し、現在も蕎麦菓子を作っています。なので、今は新しい蕎麦菓子を作りたいと思って、週1回、工場に入って、職人さんと開発を進めています。それと同時に包装紙のリニューアルも考えています。百貨店などにも店があると、すぐに変更というわけにもいかず、こちらは来年の夏を目指して進めています」。
写真家としてこれからのこと
京都に戻ってからも、作品撮りを行っている稲岡さん。昨年には、アイスランドの一卵性双生児を9歳から16歳まで撮り続けるプロジェクトが終了したそう。
「写真集を出すため、今はその準備中です。来年夏にはアイスランドで個展を行う予定ですし、その後はヨーロッパを巡回したり、ゆくゆくは日本でも個展を開きたいと思っています」
16代目としてやっておきたいこと
現在、2歳の息子さんがいる稲岡さんだが、息子さんはやはり17代目を継ぐことになるのでしょうか?
「継いでくれたらいいなあ、とは思いますが、プレッシャーはかけたくないですね。私自身、両親に継げと言われたことはありませんし、いろんなことを経験した後、選択してくれたらいいと思います」。
また、写真家としても、ご自身の代でやっておきたいことがあるそうです。
「自分の代の間に、私が撮影を担当し、尾張屋本家の本を作りたいと思っています。実は、時間がないのもありますし、いつでも撮れると思うと、まだ全然、撮れてなくて」。
この本こそまさに、稲岡さんならではの伝統の継承と革新そのもの、稲岡さんにしかできない試みです。
「写真にして、本という形にすると、まだ見えていないものが見えてくることもあると思うんです。そういうものを、大切に積み重ねて未来につなげて行きたいですね」。
本家尾張屋 /Ariko Inaoka
【彼女たちの三都物語】
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- クレジット :
- 撮影/香西ジュン 文/天野準子