「緊張する場面での素晴しいプレイに鳥肌が立った」「心を打つ歌声に、涙が出るだけでなく鳥肌が立った」といった文章の「鳥肌が立つ」の意味、わかりますよね? 本来「鳥肌が立つ」は、寒さなどによって皮膚に起こる現象を表す言葉ですが、前文のように感動を表すフレーズとしても使用されています。でもそれって正しい表現なのでしょうか?  大人として使用しても恥ずかしくない? 今回はこの「鳥肌が立つ」を解説します。

【目次】

「鳥肌が立つ」ような感動体験、したことはありますか?
「鳥肌が立つ」ような感動体験、したことはありますか?

「鳥肌が立つ」とは?「本来の意味」と「感動を表す表現」など基礎知識】

■読み方

「鳥肌が立つ」は、そのまま「とりはだ-が-たつ」と読んで正解です。

■本来の意味

寒さや恐怖などの強い刺激によって立毛筋(りつもうきん)が反射的に収縮し、皮膚が羽をむしり取ったあとの鶏皮の表面のように小さく突起してブツブツになる現象、またそういった状態の肌を言います。

■感動を表す表現はOKなの?

「すばらしい演奏に鳥肌が立った」といったように、強い感動の表現としても用いられることがあります。寒さや恐怖などによって起こる「鳥肌が立つ」より、感動したときに使用するほうが多いかもしれませんね。

「鳥肌が立つ」は、もともとは恐怖などによって「ゾッとする」という使い方をされていましたが、文化庁が平成13(2001)年度に行った「国語に関する世論調査」で「a.あまりの素晴しさに鳥肌が立った」「b.あまりの恐ろしさに鳥肌が立った」のどちらを使うかを尋ねたところ、男女とも40歳以下の世代を中心に、aの感動などを表す表現として使用する人が増加傾向にあるという調査結果が出ています。この調査を受けて、それ以降に改訂された国語辞典などでは「感動で鳥肌が立つ」という意味を加えているケースが増えているのだとか。“言葉は生き物である”という観点で見ると、心から感動した際などに「鳥肌が立った!」などと表現してもOKということですね。


【「本来の意味」での「例文」4選】

寒さや恐怖による現象としての「鳥肌が立つ」は、こんな例文があげられます。

■1:「あまりの寒さに鳥肌が立った」

■2:「鳥肌が立つほどの恐怖を感じた」

■3:「怪談話に鳥肌が立った」

■4:「緊張のあまり本当に鳥肌が立った」

■5:「鳥肌が立つほど気持ち悪い」

■6:「鳥肌が立つほど嫌い」

■7:「寒いジョークに鳥肌が立った」


【「感動を表す表現」としての「使い方例」】

■鳥肌が立つほどの感動

■鳥肌が立つほど衝撃を受けた

■興奮で鳥肌が立った

■鳥肌が立つほど美しい景色

■鳥肌が立つほど圧倒された

■驚いて鳥肌が立った

ポジティブな気持ちや状況を示す「鳥肌が立つ」は、1980年代後半から使われるようになったそうです。


「類語」「言い換え」表現 】

■「本来の意味」での類語、言い換え表現

・身の毛がよだつ ・肌が粟立つ ・血の気が引く ・顔色が変わる ・冷や汗が出る ・身震いする ・震えあがる ・身がすくむ ・怖気づく  ・悪寒が走る  ・背筋が寒くなる  ・ゾッとする

■「感動する」を表す類語、言い換え表現

・感慨深い ・圧倒される ・素晴しい ・感動的な ・奮い立つ


【「鳥肌」は[chicken skin]ではありません!】

「鳥肌」を英語では[gooseflesh][goosebumps][goose pimples]などで表します。

・I was so scared I had goosebumps.(恐怖で鳥肌が立った)

・I was so moved that I got goosebumps.(鳥肌が立つほど感動した)

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「鳥肌」の方言として、関西・中国・四国などでは「さぶいぼ」、新潟の一部地域で「さぶさいぼ」、山形県や長野県では「さむさいぼ」、岡山市では「さぶさぶ」が使用されています。これらの地域でも現代では方言より「鳥肌」を使用する若者が多いようですが…「びっくりしてさぶいぼ出た!」なんて、ユニークな表現ですね。

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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『大人の語彙力大全』(KADOKAWA)/『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) :
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