仕事をしていくうえで役割分担ができるのは当然のことですが、特定の人にしかできない作業や、ほかの人では替わりが務まらなかったり進捗状況さえ把握できない…なんて不都合が起こることがしばしばあります。このような、業務が個人のスキルや知識、経験に強く依存している状態を「属人性が高い」や「属人化している」と言います。今回はこの「属人性」について、言葉の意味や使い方、類語、対義語、英語での表現まで見ていきましょう。

【目次】

現代の働き方において「属人性」も「属人化」もりいい状態ではないとされています。
現代の働き方において「属人性」も「属人化」もりいい状態ではないとされています

【「属人性」とは?「読み方」や「意味」など基礎知識】

■読み方

「属人性」は「ぞくじんせい」と読みます。「ぞくにんせい」と間違えないように注意してくださいね。

■意味

「属人」とは、その人に属することや、法律などで人を基本として考えることをいいます。ビジネスシーンでよく使われる「属人性」を簡単に言うと、業務のやり方や進捗状況などが特定の人にしか把握できなくなっている状態を指します。

■使い方

「属人性が高い/低い」や「属人性が強い/低い」というように使います。

「属人」を用いた語には「属人性」のほか、「属人化」や「属人的」があります。これらについては後ほど解説します。


【「正しい使い方」がわかる「例文」7選】

■1:「属人性が高い業務はクオリティが担保できるが、その反面リスクも大きい」

■2:「この業務は属人性が低いので、大勢で一気に遂行することが可能だ」

■3:「将来的なリスクを回避するためにも、可能な限り属人性を排除する方向に努める企業が増えている」

■4:「属人的な仕事はスキルアップやキャリアアップにつながるが、企業はもちろん、その個人にも、依存によるデメリットがあることは否めない」

■5:「個人の能力に依存した属人性の高い業務は評価も結果もよいが、替わりが利かないという問題を抱えている」

■6:「属人性の高い業務に伴う、個人への負担は大きな問題だ」

■7:「属人性の高い業務は引継ぎに苦労する」


「類語」「言い換え」「対義語」は?】

「属人性」の使い方がわかったところで、関連語についても見てみましょう。

■「類語」「言い換え」

・属人化(ぞくじんか):「属人性が高い業務」を言い換えると「属人化した業務」となります。

・属人的(ぞくじんてき):「属人性」は高い低いなどで表現しますが、その状態を「属人的になった」や「属人的な業務」などと言います。

■対義語

「属人性が高い」や「属人化」の対義語は、「マニュアル化」や「標準化」になります。企業としては特定の従業員に依存することなく業務を遂行することができ、クオリティを保ちながら生産性の向上も期待できるため、「属人性」より「標準化」を重視する傾向にあります。


【「属人性」「属人化」のメリットとデメリット】

企業側にとっての「属人性」「属人化」と、個人にとっての「属人性」「属人化」の、メリット、デメリットは異なります。言葉としての使い方を正しく理解するためにも確認してみましょう。個人にはメリットがありますが、企業にとってはリスクが多そうですね。

■企業側のメリット

・顧客に特定の担当者がつくことで、質が高くきめ細やかな労働やサービスを提供できる

・専門家が生まれやすくなるので、企業クオリティの底上げにつながる

■個人のメリット

・特定の業務についてスキルアップできる

・裁量権をもつことにもつながり、やりがいが高い

・個人の専門性や特質、個性を活かすことができる

・キャリアアップにつながる

■企業側のデメリット

・担当者が不在の場合に代替が効かずに業務が滞る

・業務がブラックボックス化し、クオリティ維持が困難に陥ることがある

・培われた技術や知識が蓄積されない

・適切な評価が難しくなる

■個人のデメリット

・負担が大きい

・専門外の知識や技術がインプットしにくくなる

・新たなアイデアが生まれにくくなる


「属人」の関連語…「属人給」とは?

「属人性」「属人化」のほかにも、こんな関連語があります。

「属人的」は、特定の個人に業務が依存している状態を指しますが、そのデメリットは前章でも挙げた通り。多くの企業が業務の「属人化」や「属人的な体制」を解消するために、IT導入を含めた業務の標準化、マニュアル化を進めています。また、「属人給(ぞくじんきゅう)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは職務内容やクオリティに関わらず、年齢・学歴・勤続年数などを基準にして定めらる給与のこと。年功賃金体系が代表的ですが、成果主義を主とする企業にとっては、前時代的な体制と言えるでしょう。


 「英語」で言うと?

「属人性」や「属人化」などを英語で表現すると、依存状態を示す[dependency]や、個人の特性や技術を意味する[individual efforts][personal skills]を使用するのが適切のようです。

・It is difficult to hand over tasks that are highly individualized.(属人性の高い業務は引継ぎに苦労する)

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今回は「属人」を用いた「属人性」や「属人化」について解説しました。「属人性の高い仕事」はキャリアアップに好材料となる一方で、個人にかかる負担は大きいもの。企業側にも個人にも“善し”となる、バランスの取れた働き方ができるといいですね。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『知っているようで知らない ビジネス用語辞典』(水王舎)/『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)/『ランダムハウス英和大辞典』(小学館) :