「彼の無謀とも言える行動は、長い膠着状態を打開する、まさに窮余の一策となった」…これ、どういう意味かわかりますか? 「窮余の一策」とは、苦し紛れにとるひとつの方法を意味するフレーズです。言葉として使ったことがなくても、そんな場面を経験したことがある! という人もいるのではないでしょうか。今回はこの「窮余の一策」について、正しい使い方や言い換え、対義語などを解説します。

【目次】

「窮余の一策」とは? 「火事場の馬鹿力」から生まれる…ってホント?
「窮余の一策」とは? 「火事場の馬鹿力」から生まれるとか生まれないとか…。

 

「窮余の一策」とは?「読み方」と「意味」 基礎知識】

■読み方

窮余の一策は、「きゅうよのいっさく」と読みます。

■意味

「窮余の一策」とは「苦し紛れに思いついたひとつの手段」のこと。

「窮余」は「追い詰められて、困ったあげく」「苦し紛れ」という意味。身につまされる言葉ですね。「策」は「はかりごと」「計画」「手段」「方法」を示すので、「一策」で「ひとつの手段」や「ひとつの計画」といった意味になります。また、「窮余一策」と、四字熟語としても使われます。


「正しい使い方」がわかる「例文」5選

■1:「これが最後と投じた窮余の一策が、さよならホームラン級の奇跡を起こした!」

■2:「一か八かの窮余の一策は悪あがきに終わることが多いが、やり切ったという満足感は残るだろう」

■3:「窮余の一策も講じることができず、己の無能さに落胆している」

■4:「結果として期待に応えることができなくても、窮余の一策を提案するまで粘ることができたのは収穫だった」

■5:「窮余の一策を待つ時間もコストも余裕がないのが現状だ」


【「窮余の一策」をもっとわかりやすく!「類語」「言い換え」

「窮余の一策」は、使い慣れていない人には、音だけ聞くと「給与の一作?」「急用の一作?」となんのことだかわからないかもしれません。使い慣れた言葉で言い換えてみましょう。

・苦肉の策 ・苦渋の選択 ・非常手段 ・やむにやまれぬ策 

また、力では敵わない相手に、僅かばかりでも抵抗の意思を見せることも「窮余の一策」と言いますが、その場合には下記のように言い換えることができます。

・ささやかな抵抗 ・イタチの最後っ屁 ・せめてもの抵抗

「イタチの最後っ屁」とは、なんともユニークなフレーズですね。イタチは窮地に陥ると悪臭を放って敵をひるませるという性質があることから、困ったときに非常手段に訴えることを「イタチの最後っ屁」と言います。「窮地の一策」と「イタチの最後っ屁」が同じ状況を表す言葉だなんて、日本語はおもしろいですね。


「苦肉の策」との違い

「苦肉の策」にはふたつの意味があります。ひとつは「敵を欺くために、自分の身や味方を苦しめてまで行うはかりごと」、もうひとつが「苦しまぎれに考え出した手立て」です。「窮余の一策」と同義なのは後者です。

最後の最後に講じる一か八かといったギャンブル的要素をもつ「窮余の一策」ですが、自己犠牲的要素は含んでいません。日本語には複数の意味をもつ言葉や、相手の解釈によって意味ががらりと変わる言葉も少なくありません。“言葉足らず”は誤解を生むことも多いので、“大人の語彙力”を駆使して正しく相手に伝わるよう心掛けたいものです。


「窮余の一策」は「英語」でなんと言う?

英語で「窮余」は[last resort]で表わせます。そして、「窮余の一策」は[as a last resort]となります。

・As a last resort, she cried out for help.(窮余の一策として、彼女は大声で助けを求めた)

・fall back on one's last resort(窮余の一策を講じる)

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「窮余の一策」のようにひねり出すような状況は好ましいとはいえませんが、「最後まで諦めない」「最後まで力を尽くす」という姿勢は身に付けたいもの。それでうまくいかなくてもぐずぐず引きずらず、「NEXT!」と切り替えていきましょう!

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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『大人の語彙力大全』(KADOKAWA)/『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) :