11月になると、「喪中はがき」を受け取る人もいるのでは? 大切な方を亡くした方に、新年のご挨拶を控える習慣があることは知っていても、いざ自分が「喪中はがき」を出す立場になると、基本的なことがわからずに戸惑う人も多いようです。今回は、「喪中はがき」は「いつ出すの?」「誰に出すの?」など、基本的なマナーについて、例文とともに解説します。

【目次】

近親者が亡くなった年の11~12月上旬には送付するのが一般的。
喪中はがきは近親者が亡くなった年の11~12月上旬には送付するのが一般的。

【「喪中はがき」とは?いつ出す?準備のための「基本事項」】

■「喪中はがき」とは?

「喪中はがき」の「喪中」とは、親族に死者が出た者が、家にこもったり祝い事を避けたりする期間のことです。親族の死を追悼し、魂を鎮(しず)めるために、通常、死後一年間は、年賀や祝いごとなど、慶事を差し控えることを「喪に服する」と言い、その期間を「喪中」と呼びます。これを踏まえ、「喪中はがき」は、亡くなった人の親族が、普段年賀状を交換している人や、故人がやり取りしていた相手などへ、「喪中のため、新年のご挨拶を控えさせていただく」旨を知らせるものです。

■どこまでの親族が亡くなった場合に送る?

一般的に、一親等、二親等にあたる、いわゆる近親者が亡くなったときに「喪中」とすることが多く、「喪中はがき」を出します。一親等とは、配偶者、父や母(義理の関係も含む)、子ども、そして二親等は祖父母、兄弟姉妹、孫などです。ただし、故人との親交の深さによっては、近親者のほか、三親等以上の親族が亡くなった場合でも「喪中はがき」を送ることがあります。

■どこまでの範囲(相手)に送る?

「喪中はがき」は、先方に「新年のご挨拶を控えさせていただきます」と伝える欠礼状ですから、毎年、年賀状のやり取りや新年のあいさつをしている相手に出すのが一般的です。近い親戚同士であれば、お互いに「喪中」ですから、省略することも多いようです。また、相手がビジネス上のお付き合いなど、余計な気遣いをさせたくない人であったり、プライベートをあえて明かす必要を感じない場合は、「喪中はがき」ではなく、通常通り年賀状を出すこともあるようです。「喪中はがき」は、あくまで個人的なもの。故人との関係や差出人の心情に合わせ、判断するのがよいでしょう。


【どうやって出す?切手は?喪中はがきの「マナー」】

■いつ、どうやって出す?

「喪中はがき」は、相手が年賀状印刷の準備を始める前に届けるのが、基本的なマナー。具体的な時期としては、近親者が亡くなった年の11~12月上旬には送付することが一般的で、ギリギリのタイミングとして郵便局で年賀状の受付を開始する12月15日までには届けたいものです。

ここから逆算すると、11月中旬にはデザインを選び、準備を進めたいですね。何らかの都合で発送が遅れる場合や、12月に亡くなった場合は、年の瀬も押し迫った時期の到着よりも「寒中見舞い」のかたちで、年明けに送付するのがベター。理由は、もしも先方がすでに年賀状を投函していた場合、相手に余計な気遣いをさせてしまうからです。寒中見舞いは、松の内(1月1日~1月7日)を過ぎてから、節分(2月3日)ごろまでに届くように送りましょう。

■ハガキ、切手は何を使う?

「喪中はがき」には、郵便局で販売されている「通常はがき」と「私製はがき」、どちらを選んでも問題ありません。「通常はがき」は切手を貼らずに投函できるのがメリットですね。また、郵便局では「喪中はがき」のプリントサービスも行っており、オンライン上でフォントやデザインを選べるほか、住所録のデータを登録することで宛名印刷もでき、さらに投函代行まで依頼することができます。

郵便局以外で販売している私製はがきは、投函時に切手を貼る必要があるため、注意が必要です。「弔事用85円普通切手・菊」という弔事用の切手を使用し、華美な印象を与えないようご配慮してください。また、すでに年賀状を用意していた場合、年賀はがきの販売期間内であれば、郵便局で一般はがきなどに無料で交換してもらえます。

■喪中の相手にも出すべき?

繰り返しになりますが、「喪中はがき」は「新年のご挨拶を控えさせていただきます」と先方に伝える欠礼状です。たとえ相手が喪中の場合でも、出しましょう。


【喪中はがきの「文例」】

ごく一般的な「喪中はがき」の内容と構成をご紹介しましょう。

1) 喪中につき年始の挨拶を欠礼する旨を伝える
2) 誰が、いつ、何歳で亡くなったか
3) 感謝の言葉など
4)日付
5)差出人(住所・名前)
夫婦の連名で「喪中はがき」を出す場合は、故人の続柄は夫からの立場で書きます。子どもの名前は記載しないのが一般的です。

(例文1)
喪中につき年頭のご挨拶を失礼させていただきます
父 ○○が8月×日に95歳で永眠いたしました
本年中に賜りましたご厚情を深謝しますとともに明年も変わらぬご交誼のほどお願い申し上げます
 令和○年○月
                           差出人住所
                              名前

※交誼とは、「こうぎ」と読み、「親しいお付き合い」という意味です。

(例文2)
年頭のご挨拶を申し上げるところですが喪中につきご遠慮申し上げます
義母○○が98歳にて天寿を全うし安らかに永眠いたしました
生前のご厚誼に厚くお礼申し上げますとともに 謹んでご通知申し上げます
 寒さ厳しき折から くれぐれもご自愛のほどお祈り申し上げます
  令和○年○月
                           差出人住所
                              名前

注意点としては、近況報告や結婚報告、転居のお知らせ等の記載は控えましょう。また、「喪中はがき」の文面は、縦書きにして句読点を入れないのが一般的です。文章を読みやすくするために読点(、)を入れたい部分には、スペースを空けましょう。また、季節の挨拶など前文も省略します。


【「年賀状じまい」と兼ねる「文例」】

近年では、「喪中はがき」と年賀状終いを兼ねるケースも増えてきているようです。理由としては、SNSの一般化などの時代の変化や、環境問題に配慮した会社の方針などが挙げられます。年賀状じまいは、文面によっては相手を傷つけてしまうこともあるので、注意が必要です。ポイントとしては、

(1)止める理由を明記すること。
(2)全員に対して「止める」ことを添え、今後のお付き合いは変わらないことを伝える。
ことが大切です。

(例文)
喪中につき年末年始のご挨拶をご遠慮申し上げます
夫○○が58歳にて永眠いたしました
本年中に賜りましたご厚情に心感謝申し上げます
なお これを機にどなた様へも年賀状による新年のご挨拶を控えさせていただくことといたしました
来年からはメールやSNS(具体名をあげても)にてご挨拶させていただければ幸いです
今後とも変わらぬお付き合いのほどよろしくお願いいたします
 令和○年○月

とはいえ、できれば「喪中はがき」と年賀状じまいは、兼ねないほうが丁寧です。くれぐれも先方に失礼のない対応を心掛けましょう。


【喪中なのに年賀状をいただいたら】

年末に親族が亡くなって「喪中はがき」が間に合わなかったり、あるいはうっかり喪中はがきを送らなかった相手から年賀状が届く、というのは、誰にでも起こり得ることです。その際には、「寒中見舞い」として、いただいた年賀状へのお礼と喪中につき年頭の挨拶ができなかったお詫びを完結に相手に伝えましょう。

(例文)
寒中お見舞い申し上げます
年始のご挨拶を賜りましてありがとうございました
昨年○月に○○(故人)が永眠し、年始のご挨拶をご遠慮させていただきました
本来であれば旧年中にご挨拶を申し上げるところを年を越してしまい誠に失礼いたしました
本年も変わらぬお付き合いのほどよろしくお願いいたします
厳寒の折 皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます

くどくどと言い訳を並べるよりも、簡素なお詫びの言葉を添えるだけにしておくのが賢明です。

年末に「喪中はがき」をくださった相手に、年賀状のかわりに寒中見舞いでご挨拶をする方もいるようです。

(例文)
寒中お見舞い申し上げます
先日は丁寧なご挨拶状をいただきありがとうございました
お返事が遅くなってしまいましたが、いかがお過ごしでしょうか
少しずつでも悲しみが和らいでいけばと祈っております
どうぞご無理なさらず 新しき年をお迎えになられますよう心よりお祈り申し上げます。

***

「喪中はがき」は、自分が大切な人を亡くしたこと、新年のご挨拶を控えることを、先方に伝えるためのものです。そのため、通常の手紙やはがきとは異なり、オリジナリティにこだわる必要はありません。形式的な文章だけでは物足りないと感じるかもしれませんが、そこはぐっとこらえ、形式に乗っ取ったシンプルな文面で送るのが適切です。もしも思いを書き綴りたいのであれば、「喪中はがき」ではなく寒中見舞いなど、別のかたちで思いを伝えるのが、大人のたしなみと言えるでしょう。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館) /郵便局の喪中はがき(https://print.shop.post.japanpost.jp/mochu/) :