今回の年末年始は帰省して家族や親戚と久しぶりにゆっくり過ごす人、せっかくの休暇だからと旅行に出かける人、自宅でのんびりだらだらするのがいちばんだという人…と、さまざまでしょうか。お正月三が日の過ごし方がルーティンになっていて、「箱根駅伝は欠かせない!」と毎年楽しみにしている人も多いと思います。今回はこの「箱根駅伝」について。ふだんはスポーツ中継を見ない人や、陸上競技や駅伝、マラソンには興味がないという人も、正月明けの話題についていけるように「箱根駅伝豆知識」をお届けします。
【目次】
【なぜアツい!?「箱根駅伝」を楽しむための基礎知識】
■「箱根駅伝」とは?
「箱根駅伝」とは、東京・大手町と箱根・芦ノ湖畔間を往復して行われる駅伝競走のこと。正式名称は「東京箱根間往復大学駅伝競走」。主催は関東学生陸上競技連盟で、往路5区間で107.5キロ、復路5区間は109.6キロと、ほぼ同じ一般道を使用して10区間217.1kmで競う、学生長距離界最長の駅伝競走です。
■いつ行われる?
1920(大正9)年に始まった「箱根駅伝」は、2024年に100回記念大会が行われました。現在は毎年、往路1月2日、復路1月3日と開催日が決まっています。
■コースは?
「箱根駅伝」の魅力のひとつが、区間によって景色が変わるということ。
大手町の読売新聞社前をスタートする1区は、東京のビジネス街を抜けて横浜の鶴見中継所まで。2区は横浜の住宅街を抜けて戸塚中継所へ。3区で134号線に出ると正面に富士山、左側に相模湾を臨む箱根駅伝いちばんの景勝地を走ります。4区は平塚中継所から小田原中継所まで。そして最大の難所、箱根湯本から芦ノ湖を目指す5区では厳しい山越えが待っています。スター選手が誕生することも多く、まさに往路のハイライト!
翌日は1区から5区までを逆走するかたちで、芦ノ湖畔の6区スタート地点から、10区の大手町フィニッシュ地点へと戻ります。往路の上り坂は復路では下り坂に、日差しは右から左に差し込むなどと変化し、同じコースとは思えないおもしろさもあるのです。
■参加「大学」は?
関東学生陸上競技連盟加盟大学のうち、前年大会でシード権を獲得した上位10校と、10月に行われる予選会を通過した10校、そして関東学生連合を加えた合計21チームが出場します。関東学生連合チームは、予選会を通過できなかった大学の記録上位者(1校ひとりまで)から選ばれた選手によって編成されます。
2025年の101回大会の出場校は下記の通りです。
青山学院大学、駒澤大学、城西大学、東洋大学、國學院大學、法政大学、早稲田大学、創価大学、帝京大学、大東文化大学(以上がシード校)/立教大学、専修大学、山梨学院大学、日本体育大学、中央学院大学、中央大学、日本大学、東京国際大学、神奈川大学、順天堂大学、関東学生連合
【2025年「箱根駅伝」の見どころ】
青山学院大学、駒澤大学、國學院大學が、“2025年箱根駅伝の3強”と言われています。
2020年からの5年間は、青山学院大学と駒澤大学が交互に総合優勝を飾りました。青山学院大学の強さは、就任21年目となる原晋監督が毎年掲げるユニークな作戦名にあり!? 2025年に向けては「あいたいね大作戦」、そしてチームスローガンは「大手町で笑おう」。フレッシュグリーンの襷(たすき)をつないで連覇となるでしょうか。
2023年の99回大会で、駒澤大学を2年ぶり8度目の総合優勝に導いたのは名匠大八木弘明監督でしたが、レース後に退任を表明。後任は大八木氏の教え子であり、マラソン元日本記録保持者の藤田敦史氏。2024年大会では青山学院大学に敗れはしたものの、10月の出雲駅伝、11月の全日本大学駅伝では、いずれも青山学院大学を上回る準優勝。新年の箱根駅伝への期待が高まります。
そして最大の注目校が、2024年の出雲と全日本を制した國學院大學。就任15年目の前田康弘監督は、駒澤大学で大八木監督のもと、2年と3年時に7区を走って共に3位、4年時は主将として4区を任され初の総合優勝に貢献したトップランナーです。熱血指導で知られる大八木氏の系譜を受け継ぐ熱い指導が、大学駅伝完全制覇を導くか――と、注目されています。
【仕事始めはこの話題で盛り上がる!?「 箱根駅伝」の「雑学10」】
■「箱根駅伝」はオリンピック予選会だった?
「箱根駅伝」の始まりは、1912(明治45)年のストックホルムオリンピックに出場した金栗四三さんが、オリンピックで通用する選手を育てることを目的に発案したもの。金栗四三さんといえば、2019年のNHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』の主人公でしたね。
■夜は松明の灯りで走っていた!
1回大会が行われた1920(大正9)年は、夜まで走り続ける超長距離レースでした。当時は街灯が普及していなかったため、青年団が松明を掲げて選手を誘導したのだとか。
■電車が優先?選手が優先?
かつて箱根駅伝のコース上には、1区と10区に京急電鉄の蒲田踏切、2区と9区にJR東海道線・横須賀線の戸塚大踏切、そして5区と6区に箱根登山鉄道の小涌谷踏切がありました。電車が通ると選手は踏切手前で止まることになり、係員がそのタイムを計って走行タイムから差し引いていたのです。現在コース上には小涌谷踏切だけが残っていますが、電車が選手の通過を待つのでロスタイムはありません。
■「箱根駅伝」「ユニクロ」「今治タオル」「くら寿司」の共通点は?
各社、現在使用されているロゴマークは佐藤可士和氏デザインによるものです。
■選手のユニフォームに広告解禁!
箱根駅伝のテレビ中継で最も目にするCMはサッポロビールでしょう。「丸くなるな、星になれ。」や「乾杯をもっとおいしく。」のコピーも印象的ですね。
2021年の97回大会からは、スポンサーロゴが選手のユニフォームに入れられるようになりました。これは前職が営業マンだった青山学院大学の原監督が、関東学生陸上競技連盟にスポンサー広告を認めるようはたらきかけて実現したもの。駅伝の部活動では年間約60日の合宿を行うなど、多くの活動費が必要なのです。世界陸連による広告規定改訂に伴い日本陸連でも新ルールを採用、「40平方センチメートルで高さ5センチ以内」で、シャツとパンツに1か所ずつ同じスポンサーロゴを入れることが認められました。
「箱根駅伝」はモンスター級の注目度であり放送時間も長いので、その広告効果は十数億円に換算されるともいわれているようです。
■なぜ「花の2区」と言われるの?
82回大会で小田原中継所の場所が変更になるまでは2区が最長距離区間であり、今も平地区間では最長であることが理由のひとつです。1区はスピードランナー揃いで僅差で2区の鶴見中継所に飛び込んで来るため、序盤の流れに乗りたい各校は2区にエース級の選手を投入することが多いのだとか。歴代の名選手が2区を走っています。また外国人留学生を投入することが多い区間でもあり、後半にアップダウンが厳しいふたつの上り坂があるので想定外のレース展開になったり番狂わせも起こりやすく、「ごぼう抜き」や「ブレーキ」など、多くの劇的なドラマを生んでいるのです。
■なぜ「駅伝」と言う?
「駅伝」という名称は、奈良時代(8世紀)に、中央と地方を結ぶ幹線道路に整備された「駅制」がルーツです。1917(大正6)年に日本初の駅伝「東京奠都五十年奉祝東海道五十三次駅伝競走」を読売新聞社が主催したときに、神宮皇學館の館長が命名しました。幹線道を往来する役人のために用意された「駅馬」と「伝馬」からヒントを得たそう。
ちなみにこの長い名称の駅伝には関東と関西の2チームが出場し、京都の三条大橋から東京・上野の不忍池まで、約516キロを23区間に分け、なんと3日間、昼夜を問わず走り継ぐ壮大なリレーだったとか。この大会の成功が箱根駅伝構想のきっかけになりました。
■瞬間最高視聴率は38%にも!
現在は「箱根駅伝の中継といえば日テレ(日本テレビ)」ですが、テレビの生中継は箱根山中の電波障害のため、長い間、実現困難でした。 ところが日本テレビが山中に無線基地を設置。電波を飛ばし、1987(昭和62)年から生中継が実現したのです。以来、毎回20%を超す高い視聴率をマークしています。平均視聴率の過去最高は、2019(平成31)年の95回大会の復路32.1%です。また、瞬間視聴率は38%近くをマークすることもあるのだとか。お正月の風物詩として国民から愛されている大会だということがわかりますね。
■「山の神」と「山の妖精」
箱根湯本から山を越えて芦ノ湖畔へと続く往路5区は、選手にとっては最も過酷ですが、応援する側にとっては最も見応えがあり、中継も熱が入る華やぎ区間。急な上り坂が続くこの5区で大活躍した選手は「山の神」と称賛されてきました。順天堂大学の今井正人さん、東洋大学の柏原竜二さん、青山学院大学の神野大地さんの3名です。
ところが2023年1月2日、この5区で新たな称号が生まれます。その名も「山の妖精」。区間記録を塗り替えた城西大学の3年生、山本唯翔(ゆいと)さんです。埼玉県坂戸市にある城西大学周辺には山道があり、選手たちはふだんから箱根の坂をイメージしながら走るのだそう。そこを白いキャップを被った山本選手が軽快に駆け上がって行くので、その姿から「妖精」と呼ばれるように。ここに「山の神」に次ぐ称号「山の妖精」が誕生しました。
■「箱根駅伝」が大手町で楽しめる!
多くのファンをもつ「箱根駅伝」。その魅力と足跡を伝える企画展が、スタート&フィニッシュ地点である読売新聞社内のギャラリーで開催されています。 特別展示「箱根駅伝~その足跡を振り返る~」は、2024年12月10日(火)から2025年1月9日(木)まで。読売新聞社3階「よみうりギャラリー」(東京都千代田区大手町1-7-1)で、箱根駅伝の歴史や歴代の勇士たちについての展示や、出場校のユニフォームなどを見ることができます。8時~20時、入場無料。※12月28日(土)~1月5日(日)まではビル内に立ち入ることはできません。
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「箱根駅伝」は1月2日と3日ですが、元日の「ニューイヤー駅伝」(全日本実業団駅伝)と併せ、「お正月は駅伝三昧」という人もいるでしょう。大学駅伝を卒業した選手がニューイヤー駅伝で活躍することも多く、こちらも見答えがあります。2025年の「箱根駅伝」では、どんなドラマが待っているのか…楽しみですね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館) 箱根駅伝公式サイト https://www.hakone-ekiden.jp/ 読売新聞オンライン https://www.yomiuri.co.jp/hakone-ekiden/ :