正月気分が抜けないまま、さらに仕事モードにブレーキをかける三連休に突入…という1月上旬。まだまだ新年の習慣やイベントは続きます。今回はそんなもののひとつである「鏡開き」について。「実際にやったことがない」という人も、知識として知っておいてもよさそうです。

【目次】

【「鏡開き」とは?いつ?なぜ?基礎知識

■意味

お正月には、新しい一の福徳をもって神さまが家々に宿るとされ、鏡餅はその神さまへのお供え物として用いられてきました。その鏡餅をおろし(供え物を外すこと)、お雑煮やお汁粉などにして食べることを「鏡開き」といいます。

■2025年の鏡開きはいつ?

一部の地方で異なることがあるようですが、「鏡開き」は基本的に毎年1月11日です。以前は1月20日が一般的だったようですが、徳川3代将軍家光の命日が20日であるため11日に繰り上げられた…が通説となっているようです。

■そもそも「鏡餅」とは?

正月用のお供え餅のこと。丸く平たい形の餅を重ね、三方(さんぽう)と呼ばれる白木の膳に乗せて飾ります。正式には重ねた餅の上に橙を乗せ、伊勢海老や干し柿、昆布、ウラジロ(シダ科の植物)などを添えます。

■由来

現代では個人宅の多くは正月飾りとして用いる鏡餅ですが、本来は稲作に伴う儀礼のひとつ。農耕神としての年神さまへの供物でした。また宮中の「歯固め」の儀式にも由来し、丈夫な歯の持ち主はなんでも食べられ長生きできるので、新年の健康と長寿を願い、固くなった鏡餅を食べるのだとか。

供えていた鏡餅をおろして食べるということは、新年の祭事の終わりを意味するものだったはずですが、現代では仕事始めの意味と解釈する場合が多いのだとか。ちなみに商家の仕事始めにあたる「蔵開き」も1月11日です。


【切ってはいけない!?正しい「鏡開き」の方法】

かつて、武家の男子は具足(ぐそく/甲冑のこと)に、女子は鏡台に供えた鏡餅を、手や木槌などで割り砕いて用いました。江戸では町人たちがこの風習をまねて行うようになったとか。包丁を使わず割り砕くのは…腹切りとなることを避けた江戸(関東)の鰻の背開きと同様、刃物で「切る」ことを嫌ったためです。

金槌などで叩いて割ればOK! 乾燥状態によっては手で割り砕くこともできます。

真空パックなどで販売されている鏡餅は保存期間が長いので安心ですが、年末に米屋や餅菓子屋などでつきたての鏡餅を購入した場合、状況によっては1月11日を待たずに青カビなどが発生してしまうかもしれません。一見大丈夫でも、重なった部分や底にカビが生えやすいのでご注意を。その部分に焼酎を塗っておくと発生を防ぐことができるのだとか。この豆知識、ぜひ来年まで覚えておいてくださいね。


【「鏡開き」のおすすめ料理

■お汁粉、お雑煮

大きめに砕いた餅を焼き、うつわに汁粉、または雑煮とともに盛り付けます。

■揚げ餅

よく乾燥させた鏡餅を1cmから2cm大に砕き、低温の油で10分程度、全体が色づくまで揚げます。餅は2倍程度に膨らむので、鍋と油に余裕をもって揚げるといいでしょう。仕上げに塩で味付けを。黒コショウやカレー粉、クミンパウダーなどを少量まぶしてもおいしいですよ。

ちなみに「揚げ餅」は「かき餅」とも呼ばれますが、この名前の由来は、手や鎚で割ることを「欠き割る」ということからきているようです。


ビジネス雑談に使える「鏡開きの雑学」】

実家では毎年恒例儀式だったという人、鏡餅を飾ったことがないという人…鏡餅に関しては、おせち料理やお雑煮などの正月料理ほど盛り上がらないかもしれませんが、新年の話題としてちょっとおもしろいのでは? ということでこの章では「鏡餅の雑学」をお届けします。

■なぜ「開く」?

意味合いからすると「鏡開き」ではなく「鏡割り」なのでは? と思うかもしれませんね。「開き」は「割り」の忌み言葉(災いが降りかかるのを恐れて口にしない言葉のこと)です。「開く」というのはおめでたいことを表す言葉でもあるので、縁起を担いで「鏡開き」としたのでしょう。

■酒樽の開封も「鏡開き」なのはなぜ?

お祝いごとで樽酒をふるまう際、酒樽の封(上部の蓋)を叩き割ることも「鏡開き」といいます。これは樽酒の蓋のことを酒屋で「鏡」と呼んでいたからだとか。お米と同じように、日本人にとってお酒は神聖な意味をもっているので、やはり縁起の良い「開く」という表現を使うのです。

■小さなかけらも残さずいただく

年神さまの力が宿った鏡餅をいただくことでその力を授かり、1年の無病息災を願う、という意味もある「鏡開き」。お供えした鏡餅は開いて食べてこそ意義があるので、小さなかけらも残さず食べきることが重要! 粉々になってしまったものは、お米と一緒に炊いてみては? ほとんど変わらないか、ちょっともちもちしたご飯になって、おいしくいただけますよ。

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「鏡開き」は、お供え物を家族で食べることで神さまの力を分かち合い、一年の健康と家族の繁栄を祈るもの。鏡餅を食べるという行為自体に、神さまへの感謝の気持ちと、無病息災の願いが込められているのです。2025年、よい年でありますように!

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『12か月のきまりごと歳時記(現代用語の基礎知識2008年版付録)』(自由国民社)/『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館) :