連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People
明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する『Precious』連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、世界中でワインづくりを行う「ドメーヌ バロン ド ロートシルト ラフィット」社のオーナー兼CEOを務める、サスキア・ド・ロスチャイルドさんにインタビュー!
新聞社の特派員として勤務したのち、父親の会社を継承するため、大学で醸造を一から学んだというサスキアさん。ジャーナリスト時代に培った「真実を追い求める姿勢」のもと、仏・南米・中国など気候も文化も異なる場所でワインづくりを手がけるサスキアさんに詳しくお話をうかがいました。
【Paris】ボルドーの名門シャトーを筆頭に世界でワインをつくり、未来を守る

ボルドーワインにはいくつかの格付けが存在するが、1855年のパリ万国博覧会の際に制定された「メドック格付け」において第一級の座を得たのが「シャトー ラフィット・ロートシルト」。以来、ボルドーの最高峰シャトーの一角として君臨し続けているこの名門シャトーを筆頭に、世界中でワインづくりを行う「ドメーヌ バロン ド ロートシルト ラフィット」社の6代目当主を継承したとき、サスキアさんは30歳だった。’18年のことだ。
「世界にはさまざまな人がいて、それぞれに物語がある。それを理解したい、という想いが強かった私は、ジャーナリズムを学び、新聞社の特派員になりました。ワインを学び始めたのは、父の跡を継ぐと決めてからです。ボルドー大学で醸造を一から勉強しました。でも、ジャーナリスト時代に培ったことは、今でも役に立っています。なかでも真実を追い求める姿勢は体に染み付いているので、今も同僚から『あなたはいつもファクトチェックしているね』と苦笑いされています(笑)」
学生時代に偽名でシャトーに勤務し、従業員と共にブドウ畑で働いたこともある。「ワインづくりはブドウの木の剪定から始まるんですよ」という言葉にも実感がこもる。
「フランス、南米、中国と、気候も文化も異なる場所でワインづくりを手掛けるなかで、大切にしているのは、各地のアイデンティティを理解すること。そして、それぞれのダイナミズムを発揮できるようにしていくこと。私たちがやっているのは、毎日空を見上げて、自然の変化を肌で感じる仕事です。国は違えど、環境破壊や気候変動については危機感を共有しているし、サステイナビリティへの貢献にも使命感をもって取り組んでいます」
時間をかけて変化していくワインという存在が、サスキアさんに未来を考えさせる。
「私がやらねばならないのは “守る” こと。人を守り、畑を守り、自然を守り、次の世代へと引き継いでいかねばと思っています」
◇サスキアさんに質問
Q. 朝起きていちばんにやることは?
天気予報を見る。ボルドーだけでなく世界各地の天気をチェック。
Q. 人から言われてうれしいほめ言葉は?
「共感した」や「ユーモアがある」。
Q. 急にお休みがとれたらどう過ごす?
キャンプなどアクティブに過ごす。先日も子供たちとパタゴニアに行きました。
Q. 仕事以外で新しく始めたいことは?
哲学を学び直したい。特にスピノザ。
Q. 10年後の自分は何をやっている?
今と同じ仕事をしていると思う。そして10年後は、もっとたくさんの日本の方がボルドーワインを飲んでくれているといいですね(笑)。
Q. 自分を動物にたとえると?
渡り鳥。毎年同じ時期に同じ場所に戻ってくるのは、ブドウづくりにも通じると思います。
- PHOTO :
- 望月みちか
- EDIT&WRITING :
- 剣持亜弥、喜多容子・木村 晶(Precious)