「新たなる挑戦を、心から楽しんで」宮沢りえさんにインタビュー

雑誌『Precious』の表紙を飾るのは、2022年以来、2度目となる女優の宮沢りえさん。映画、舞台、テレビドラマなどで、幅広く活躍する姿は、常にプレシャス世代の憧れでもあります。演じることに重なるという、今、日々で大切にしていることをうかがいました。

「考える」ことを意識的にやめて、まっさらに「感じたい」。美しさの背景にある、穏やかで豊かな心もちに迫ります。

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端正に映るシャツは、まとうと彩りの美しいストライプと大きめの襟が際立ち、豊かな表情が広がる。シャツ¥540,100・バッグ『トスカ』¥1,815,000/参考色・シルバーピアス¥115,500(ボッテガ・ヴェネタ ジャパン)
宮沢りえさん
女優
1973年生まれ。1988年に『ぼくらの七日間戦争』で映画デビュー。以降、女優として幅広く活躍。モスクワ国際映画祭最優秀女優賞、日本アカデミー賞最優秀女優賞、読売演劇大賞など多くの賞を受賞。近年の出演作に舞台『オーランド』『そのいのち』、Netflixシリーズ『阿修羅のごとく』がある。5月からは三谷幸喜さんが翻案・演出を手掛けるシェイクスピア作品の舞台『昭和から騒ぎ』への出演を控える。

演じ続けるなかで大切にするのは心の“鮮度”

「ボッテガ・ヴェネタ」企画(雑誌『Precious』5月号掲載)の撮影と同じタイミングで行われた、今回のインタビュー。まとう洋服と共鳴するように多彩な表情を見せる宮沢りえさんは、輝いていた。

15歳のとき映画で主演デビューを飾り、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を3回受賞。30代から力を注ぐ舞台でも、読売演劇大賞を受賞するなど高い評価を得る。最近では、『阿修羅のごとく』(Netflixシリーズ)の匂い立つような艶めきを感じさせる和服姿も注目の的に。女優として活躍を続ける宮沢さんは、ひとりの女性としても、自然体で歳を重ねていく素敵な人。その輝きの秘密をうかがってみたくなる。

「役者として挑戦させてくれるような作品に出合えてきたことが、大きいと思います。緊張感もプレッシャーもある、誠実に向き合わないと、乗り越えられない作品に巡り合えてきたのは幸せなこと。その日々によって少しずつ、自分のなかに蓄積されてきたものがあると思うのです」 

長く第一線で活躍し続ける宮沢さんが、とりわけ大切にしているのは、自らの心の鮮度を保つこと。

「毎回、新しいものに挑むのだ、と思っています。長くやらせていただいているぶん、自分のなかに蓄積されているものもあるけれど、それはひとまずおき、例えば若い監督の方がつくろうとするものに対して、同じ目線で心から楽しみたい、おもしろがりたいという意識がすごくあります」 

すべては自分の心もちから、という思いは、仕事でも人間関係でも日々の暮らしでも同じという。

「いつも心がけているのは、ポジティブな思いを声にするということ。美味しいとか。綺麗だねとか。気持ちいいと。単純なことですが、その思いを声に出して共有したい、と」

女優の宮澤りえさん
シャツ¥540,100・バッグ『トスカ』¥1,815,000/参考色・シルバーピアス¥115,500(ボッテガ・ヴェネタ ジャパン)

“考える”より前に “感じること” を問いかけて

50代に入り、この1年くらいで新たな心もちも芽生えてきたという。

「今は情報が溢れていますし、世の中のニュースで気になることもいっぱいあり、すごく考える時間が多い。でも、考えすぎて、“感じる”能力が落ちているという危機感があります。だから意識的に、“考える” より前に、“感じたい”。詰め込んだ情報を一回手放して、自分が何を本当に感じているのかを問う時間をつくるようにしています」   

それは、特別な機会を設けずとも、ふだんの日にもできること。

「例えば、携帯電話を12時までは見ないと決めるのです。そうして、犬たちと戯れて、植物を愛で、窓からさす光を楽しむ…。なんでもない日も“感じる”ことですごく変わり、とてもいい時間になります。   
さらに今は、自分にとっての衣食住すべてにおいて、一回すべてゼロにして、そこで感じて、今の自分の価値観で何をインプットしていくべきかを考えたいと思っています」  

10代の頃から好きだという絵も、「感じることに集中するいい時間」をつくる。アクリル絵の具で大きな100号キャンバスに描く時間はもちろん、気軽にペンで描くのも好きという。
“感じる”ことを大切に、心をまっさらにして、今、自分にとって本当に必要なものを考える。そんな生き方を追い求めながら、新たなる挑戦となる役を演じていく。

「こういう生き方をしたいということと、こういう価値観で芝居に臨みたいということは分けられない。演技は自分の中から出てくるものだと思うから」 

その正直さもまた輝きの秘密。宮沢りえさんにますます魅了される。

※掲載商品の価格は、すべて税込みです。

問い合わせ先

ボッテガ・ヴェネタ ジャパン

TEL:0120-60-1966

PHOTO :
岡本充男
STYLIST :
長澤実香
HAIR MAKE :
ヘア/Yusuke Morioka(eight peace)、メイク/Yuka Washizu(beauty direction)
EDIT :
川村有布子、遠藤智子(Precious)