連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People
明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する『Precious』連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、中国で自閉症者のカウンセラーとして、またクラフトビールのブルワリー「EGO」経営者としても手腕を発揮するフー・シンさんにインタビュー!
’23年にドイツで開催されたWBA(ワールド・ビア・アワード)では見事、銀賞を獲得し、中国全土にビールを卸しているというフーさんに、仕事やカウンセリングを続ける思いなどについて詳しくお話しをうかがいました。
【Kunming】昼は自閉症者のカウンセリング、夜はバーへ。「困っている人の力に」で動く醸造家

中国の南西部、ラオスやミャンマーと国境を接する雲南省の省都・昆明(こんめい)市で、ブルワリーを経営するフーさん。ここ数年で大きなブームになっている国産クラフトビール界にあって、個人経営のブルワリーとしてはトップランナー的存在の人だ。’23年にはビールのオリンピックとも呼ばれるワールド・ビア・アワードで銀賞を獲得した。麦芽を強くローストした黒いスタウトビールを中心に、雲南省産の紅茶や柑橘など地元の食材を使ったオリジナルビールも並ぶ併設のバーには、中国全土から客がやってくる。
「飲みたいもの、つくりたいものを醸造しています。売れるから大量生産、なんてこともしません。売り切れたらそれで終わりです」
フーさんはこの街でカウンセラーとしても活動している。主に20代〜30代の、自閉症の若者を対象に、カフェとの協働でバリスタになるための就業支援を行っており、「休みなく仕事をしていますが、夜、自分のバーでお客さんと乾杯すれば、疲れは飛んでしまいます」と笑う。
毎年、世界自閉症啓発デーの4月2日にはさまざまなイベントを開催していて、今年は昆明市だけでなく省最南端のシーサンパンナタイ族自治州まで、自閉症のシンボルカラーである青のライトアップに染まった。加えて、犬猫の保護活動(家には保護猫が5匹)、LGBTQイベント「昆明プライド」の企画と、精力的に活動する。
「雲南省って、都会もあるけれど、大自然にもすごく近いんですね。そういう環境の中に、省内だけで25もの少数民族が住んでいる。文化も言葉も生活スタイルもバラバラの人たちが、古代から互いを受け入れながら暮らしてきた、特別な地なんです。だから包容力のある人が多いし、みんな考え方がシンプル。『困っている人がいたら助けよう』と思う」
バーには、自閉症の子をもつ母親も、子供を連れて来るという。悩みをもつ人が集まる場所に、いつも、フーさんの笑顔はある。
◇フーさんに質問
Q. 朝起きていちばんにやることは?
猫たちにごはんをあげる。
Q. 人から言われてうれしいほめ言葉は?
「頭の回転が速いですね」。
Q. 急にお休みがとれたらどう過ごす?
ホラー映画や災害系パニック映画を観る。万一のときにどうしたらいいのかを考えるのが楽しい。
Q. 仕事以外で新しく始めたいことは?
民芸品やハンドクラフトのつくり方を習いたい。特に草木染は、雲南省のお土産品として人気なので、自分がまず習って、自閉症の子たちに教えて、手に職をつけてもらえたら。
Q. 10年後の自分は何をやっている?
明日も生きているかわからないので、考えたことがない。
Q. 自分を動物にたとえると?
ヘビ。クールで頭がいいイメージ。
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- PHOTO :
- 長舟真人
- 取材 :
- 萩原晶子