2018年のゴールデンウィーク中に開催中の展覧会の中から、女性に特におすすめしたい3つの展覧会をご紹介します。特に予定がない、近場で過ごしたい、アートに刺激を受けたいという方は、ぜひ予定に組み込んでみてくださいね。いずれも横浜・みなとみらい、竹橋、六本木と、アクセスのよさ、お友達との集まりやすさ、前後のお食事のしやすさもポイントです。

■1:横浜美術館で開催中!『ヌード NUDE —英国テート・コレクションより』

西洋の芸術家たちにとって、いつの時代にも永遠のテーマとしてあり続ける「ヌード」。ときに批判や論争の対象にもなった“裸体表現”の歴史を、近現代美術の殿堂・英国テートが所蔵する傑作からひも解こうという、挑戦的な展覧会です。

来場者の視線を惹きつけてやまないのが、日本初公開となるロダンの大理石像《接吻》。高さ180センチ余りという等身大を超えるサイズで、情熱的に抱き合うふたりの姿を、360度から鑑賞することができます。

「エロティックすぎる」という理由から、シーツで覆い隠されたこともあるという逸話をもつ作品で、大理石のぬるりとした滑らかな光沢は、ドキドキするほど官能的。「恋愛こそ生命の花です」(高村光太郎訳『ロダンの言葉抄』より)と語ったロダンの、制作の原点がここにあります。

オーギュスト・ロダン 《接吻》(部分) 1901-4年 ペンテリコン大理石 182.2×121.9×153.0cm Purchased with assistance from the Art Fund and public contributions 1953 image © Tate,London 2017.
オーギュスト・ロダン 《接吻》(部分) 1901-4年 ペンテリコン大理石 182.2×121.9×153.0cm Purchased with assistance from the Art Fund and public contributions 1953 image © Tate,London 2017.

神話を題材とした理想化された裸体から、室内の親密なヌード、シュルレアリスムの裸体表現、肉体を生々しく描き出すヌード、さらには政治的主張を込めたヌードなど、芸術表現は時代とともに変化していきます。ソファに腰掛けて(横たわって)肘をつく、というヌードの定番ポーズを、マティスとピカソの作品で見比べるのも贅沢な体験です。

アンリ・マティス 《布をまとう裸婦》 1936年 油彩/カンヴァス 45.7×37.5cm  Tate:Purchased 1959 image © Tate,London 2017
アンリ・マティス 《布をまとう裸婦》 1936年 油彩/カンヴァス 45.7×37.5cm  Tate:Purchased 1959 image © Tate,London 2017

ベッドルームの裸の男女を留めたターナーのスケッチ、同性愛を描いたホックニーの作品など、巨匠たちの意外な作品も。ヴィクトリア調から現代までの絵画、彫刻、版画、写真など、134点を鑑賞することは、「人間とは?」「芸術とは?」という、根源的な問いに迫ることでもあります。ひとりで、友人と、恋人と、一度ならず何度も足を運べば、その度に新たな発見があるはず。

デイヴィッド・ホックニー 《23,4歳のふたりの男子》C.P. カヴァフィスの14編の詩のための挿絵より 1966年 エッチング、アクアチント/紙 34.5×22.3cm  Tate:Purchased 1992 © David Hockney
デイヴィッド・ホックニー 《23,4歳のふたりの男子》C.P. カヴァフィスの14編の詩のための挿絵より 1966年 エッチング、アクアチント/紙 34.5×22.3cm  Tate:Purchased 1992 © David Hockney

問い合わせ先

  • 『ヌード NUDE —英国テート・コレクションより』
    会期/2018年3月24日〜6月24日
    会場/横浜美術館
    住所/〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
    開館時間/10:00〜18:00(ただし5月11日、6月8日は〜20:30) ※入館は閉館の30分前まで
    休館日/毎週木曜日、5月7日(ただし5月3日は開館)
    観覧料/¥1,600(一般)ほか
    TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)

■2:東京国立近代術館で開催中!『生誕150年 横山大観展』

近代日本画の巨匠、横山大観の代表作が一挙にそろう大回顧展。生涯にわたって1500以上も描いたと言われる富士山、日本一長い画巻、100年ぶりに発見された幻の大作など、見逃せない代表作が集結中! その必見ポイントをご案内します。

まずは40メートルを超える日本一長い画巻《生々流転》が、一挙公開されること。山間に湧く雲から、一粒の滴が落ちて、それが地面を流れ始める。滴は集まって川となり、大河となって海へ流れ込む。海では龍が躍動し、海水は再び雲となって天へ…。流転し続ける水の一生をドラマティックに描ききった、大観の水墨画の集大成となる作品です。

重要文化財 横山大観 《生々流転》(部分) 1923年 巻子、絹本墨画 55.3×4040.0cm 東京国立近代美術館蔵 京都展:巻き替えあり
重要文化財 横山大観 《生々流転》(部分) 1923年 巻子、絹本墨画 55.3×4040.0cm 東京国立近代美術館蔵 京都展:巻き替えあり

白い雲の中から青い富士山が頭を出す、一度見たら忘れられない明るくのびやかな《群青富士》は、5月6日までの期間限定展示。画壇の実力者として評価を高めた大正期の大観の代表作のひとつです。また、同時期に制作された10点組の富士山の連作《霊峰十趣》は、現在では散逸し行方がわからなくなってしまった作品もありますが、今回はそのうちの4点、〈春・秋・夜・山〉がそろって展示されます(展示は5月6日まで)。これも、またとない機会!

横山大観 《群青富士》(右隻) 1917年ごろ 六曲一双、絹本金地彩色 各176.0×384.0cm 静岡県立美術館蔵 東京展:4月13日〜5月6日展示 京都展:7月3日〜22日展示
横山大観 《群青富士》(右隻) 1917年ごろ 六曲一双、絹本金地彩色 各176.0×384.0cm 静岡県立美術館蔵 東京展:4月13日〜5月6日展示 京都展:7月3日〜22日展示

そして、105年前に刊行された画集にモノクロで掲載されて以降、行方がわからなくなっていた《白衣観音》ほか、ハレー彗星を描いた水墨画《彗星》(展示は5月6日まで)、ヨーロッパ遊学後にロンドンの画商に送ったとされる《ガンヂスの水》など、幻とされていた新出作品も公開。

横山大観 《白衣観音》 1908年 軸、絹本彩色 140.3×113.4cm 個人蔵
横山大観 《白衣観音》 1908年 軸、絹本彩色 140.3×113.4cm 個人蔵

東京美術学校に学び、師・岡倉天心とともに日本美術院を設立して。新たな時代の新たな絵画に挑み続けた大観。そのスゴさを、総出品数約90点で、たっぷり、じっくりと辿ります。

問い合わせ先

  • 『生誕150年 横山大観展』
    ■東京展
    会期/2018年4月13日〜5月27日
    会場/東京国立近代美術館
    住所/〒102-8322 東京都千代田区北の丸公園3-1
    開館時間/10:00〜17:00(金・土曜日〜20:00) ※入館は閉館の30分前まで
    休館日/月曜日(ただし4月30日は開館)
    観覧料/¥1,500(一般)ほか
    TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
    ■京都展
    会期/2018年6月8日〜7月22日
    会場/京都国立近代美術館
    住所/〒606-8344 京都府京都市左京区岡崎円勝寺町
    開館時間/9:30〜17:00(6月8日〜30日の金・土曜日〜20:00、7月6日〜21日の金・土曜日〜21:00) ※入館は閉館の30分前まで
    休館日/月曜日(ただし7月16日は開館)、7月17日
    観覧料/¥1500(一般)ほか
    TEL:075-761-4111

■3:サントリー美術館で開催中!『ガレも愛した―清朝皇帝のガラス』展

中国・清王朝時代のガラス工芸を紹介する注目の展覧会。日本でも人気の高いフランス・アール・ヌーヴォー期を代表する芸術家、エミール・ガレも魅了されたという、その類まれなる美しさに迫ります。

ガラスといえば、透き通っていて、繊細で、壊れやすく“はかない”ものというイメージがありますが、特に最盛期の清朝のガラスは、「透明」と「不透明」の狭間で、重厚な佇まいを見せています。それは、中国では古来、儀式などで貴石や玉を珍重する文化があり、ガラスはあくまでもその代用品の役割を果たしていたことが関係しているのかもしれません。清王朝時代、献上品として捧げられたヨーロッパのガラス工芸に感動した皇帝が紫禁城内に工房をつくらせ、中国のガラス工芸は大きく飛躍したわけですが、それは、ヨーロッパの物真似というよりは、中国らしい大らかさをもつ、独自の造形を生み出していったのです。

《雪片地紅被騎馬人物文瓶》 乾隆年製銘 清時代・乾隆年間(1736-95) 中国 サントリー美術館
《雪片地紅被騎馬人物文瓶》 乾隆年製銘 清時代・乾隆年間(1736-95) 中国 サントリー美術館

そして、19世紀後半になり、今度は中国や日本の美術品が、ヨーロッパの絵画や美術工芸に影響を与えるようになります。なかでも、フランス・アール・ヌーヴォー期の芸術家、エミール・ガレは、清朝のガラスを入念に調査・研究し、そのエッセンスを貪欲に取り込みました。

《青地赤茶被魚蓮文瓶》 乾隆年製銘 清時代・乾隆年間(1736-95) 中国 ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館 © Victoria and Albert Museum,London
《青地赤茶被魚蓮文瓶》 乾隆年製銘 清時代・乾隆年間(1736-95) 中国 ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館 © Victoria and Albert Museum,London

今回の展覧会では、1871年にガレも訪れたという、東洋コレクションで名高いヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(1871年当時のサウスケンジントン博物館)の所蔵品も来日。ガレ作品と比較するという、贅沢な展示が楽しめます。

エミール・ガレ 《花器「おだまき」》 1898-1900年 フランス サントリー美術館(菊池コレクション)
エミール・ガレ 《花器「おだまき」》 1898-1900年 フランス サントリー美術館(菊池コレクション)

バラエティ豊かなガラス作品の数々は、見ているだけで心が浮き立つよう。ガレも収集した嗅ぎたばこを入れる鼻煙壺(びえんこ)の、小さな中に贅を尽くした清朝工芸の技と粋も見どころです。有数のコレクションをお楽しみください。

問い合わせ先

  • 『ガレも愛した―清朝皇帝のガラス』展
    会期/2018年4月25日〜7月1日
    会場/サントリー美術館
    住所/〒107-8643 東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンダーデンサイド ガレリア3F
    開館時間/10:00〜18:00(金・土曜日、4月29日、5月2日・3日は〜20:00。5月26日は六本木アートナイトのため〜24:00) ※入室は閉室の30分前まで
    休館日/火曜日(ただし5月1日、6月26日は開館〜18:00)
    入館料/¥1,300(一般)ほか
    TEL:03-3479-8600
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EDIT&WRITING :
剣持亜弥(HATSU)