連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People

明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する『Precious』連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、ユネスコ文学都市にも指定されているドイツ・ハイデルベルクにある「ハイデルベルク市立図書館」で館長を務めるクリスティーネ・サスさんにインタビュー。

市民にとって文化的生活の拠点でもある市立図書館で、年に400以上ものイベントを開催するほか、今後は図書館に来ることができない人のための移動図書館「本のバス」も増やしていきたいと語るクリスティーネさんに、今後の展望も含めて詳しくお話しをうかがいました。

クリスティーネ・サスさん
ハイデルベルク市立図書館 館長
(Christine Sass)幼い頃から読書家で、地元の図書館では規定の冊数より多く本を借りるために、「ブック・キッド」というボランティアになって手伝いをしていた。司書資格取得後、図書館に勤務。フランケンタール市立図書館館長を経て、ドイツで最も優れた図書館のひとつであるハイデルベルク市立図書館へ。’11年より現職。50人のメンバーを率いる。

【Heidelberg】文学の街の中心的存在として開かれた図書館運営に力を注ぐ

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ハイデルベルク市立図書館 館長のクリスティーネ・サスさん

電子書籍が隆盛の時代でも、ドイツ人は紙の本が好きだ。ユネスコ文学都市に指定されているハイデルベルクは、街を歩けばいたるところに書店、古書店、出版社、図書館がある。23万冊の蔵書をもつハイデルベルク市立図書館館長のクリスティーネさんも、「この街では文学イベントをはじめ、文学祭のない夏や秋はなく、文学賞受賞者が出ない年はないといってもいいくらい」と誇らしそうに語る。

「その中心の機関のひとつとして、市立図書館も重要な存在です。公共図書館は単なる図書館ではなく、市民にとっての文化的生活の拠点でもある。当館の訪問者は年々増えて、昨年は41万人を超えました。年間に開催されるイベントの数も400以上です」

なかでも、’15年から毎年秋に開催されている「読書祭」は幅広い層から人気が高い。

「特徴は、あらゆるジャンルやグループに”開かれている”ことです。参加者はハイデルベルクとその周辺地域から集まり、プログラムにはあらゆる年齢層向けのイベントが含まれます。子供向けの朗読会、文学パフォーマンス、講演会、街歩き…。会場も、歴史的な市街地から市立図書館まで、ハイデルベルク全体に広がっています。公共のスペースで文学に触れるという体験が、読むこと、聴くこと、書くことの喜びを深めていくのです」

大学や研究所、大学病院なども充実していることから、この街とその周辺に暮らす人々の出身国は100か国にもなる。館内の言語対応はドイツ語、英語、フランス語。AIでの翻訳が活躍すると共に、利用者へのきめ細やかな配慮も欠かさない。今後は、図書館に来ることができない人のための移動図書館「本のバス」も増やしていきたいと考えている。

「幼い頃、本を規定の冊数よりもたくさん借りたくて図書館のお手伝いをしていました。今は、好きなだけ借りられる館長の特権を享受しています(笑)。今後も、”本を手にして読む”ことへのサポートを続けていきたい」

◇クリスティーネさんに質問

Q. 朝起きていちばんにやることは?
コーヒーを飲む。
Q. 人から言われてうれしいほめ言葉は?
「ユーモアに溢れている」「フレキシブル」
Q. 急にお休みがとれたらどう過ごす?
ウェルネスでマッサージやサウナを満喫。
Q. 仕事以外で新しく始めたいことは?
パッチワーク。時間がかかるし、神経を集中させなければならないのがいい。
Q. 10年後の自分は何をやっている?
退職している。アポイントメントやスケジュールに縛られることがなくなり、時間の余裕ができていると思うので、これまでできなかったこと、好きなことをして楽しみたい。
Q. 自分を動物に例えると?
鳥。’22年のバード・オブ・ザ・イヤーに選ばれた美しい羽をもつヤツガシラ。絶滅の危機に瀕している鳥です。

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PHOTO :
Horst Stange
取材 :
Noriko Spitznagel