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「『男はつらいよ』の日」とは?由来

「フーテンの寅」こと車寅次郎が珍活躍する人情喜劇シリーズといえば、映画『男はつらいよ』。山田洋次監督と名優・渥美清さんの代表作ですね。特定の映像作品の記念日があるなんて驚きですが、今回はこの記念日をきっかけに“寅さんトリビア”的な話題をさくっとお届けします。

■「『男はつらいよ』の日」はいつ?

8月27日です。

■由来

「『男はつらいよ』の日」の日付は、1969(昭和44)年8月27日、監督・山田洋次さん、主演・渥美清さんによる『男はつらいよ』の映画第1作が公開されたことに由来します。この日を記念して、8月27日が「『男はつらいよ』の日」とされました。


ビジネス雑談に役立つ映画『男はつらいよ』の雑学】

■『男はつらいよ』とは?

さて、映画そのものは観たことがない人でも、「寅さん」の風貌はなんとなくでもイメージできる…という人が圧倒的では?というほど有名な映画『男はつらいよ』。主人公は東京都葛飾区柴又生まれの車寅次郎(寅さん/渥美清さん)です。

寅さんは香具師稼業を生業とし、旅から旅へと全国を巡るなか、先々で出合う「マドンナ」に恋をし、失恋したり身を引いたり…日本各地の美しい景色を背景に展開される、寅さんの成就しない恋愛模様が見どころでした。そうこうしているうちに故郷柴又にふらっと戻り、妹のさくら(長山藍子)やおいちゃん(森川信)、おばちゃん(杉山とく子)、そして柴又の人々を呆れさせたり、笑わせたり、泣かせたり――という人情喜劇です。

■寅さんのプロフィール

名前:車寅次郎(くるまとらじろう)

生年月日:1936(昭和11)年2月26日

生年地:東京都葛飾区柴又

血液型:不明

職業:香具師

■香具師って?

「香具師」は「かぐし」ではありません、「やし」と読みます。縁日などで客を集めて商売をする露天商人のっことで、「テキ屋」とも呼ばれます。映画では、トランクひとつでふらっと出かけて帰って来る寅さんですが、売り物をトランクに詰めて旅をしているわけではありません。行く先々で、香具師を縁日などに斡旋する業者から商品を入手して売っているのです。

■『男はつらいよ』はテレビの連ドラとして誕生

『男はつらいよ』という作品、そもそもは連続テレビドラマだったと知っていますか?

1966(昭和41)年、フジテレビで放送された渥美清さん主演の連続テレビドラマ『おもろい夫婦』が大ヒット。これをきっかけに昭和40年代のフジテレビは渥美さん主演の連続ドラマを毎年のように制作していました。『男はつらいよ』はその第3作にあたります。

渥美清さん主演の新しい作品を検討していたフジテレビのプロデューサーが本人(渥美清さん)に相談したところ、脚本家としても活動していた松竹の新人監督、山田洋次さんを推薦。そこから『男はつらいよ』が誕生したそうです。ドラマ『男はつらいよ』は、1968(昭和43年)10月から半年間にわたってフジテレビ系列で放送。脚本は山田洋次さんのほか、複数名の脚本家が担当しました。全26話ですが、映像は第1話と最終話しか現存していないそう…なんてこと!

■寅さんは第1作で亡くなっていた!?

テレビドラマの最終話、ハブ酒でひと儲けしようともくろみ、奄美大島へ出かけた寅さん。ところがなんとハブに噛まれて死んでしまいます。第1話放送では振るわなかった視聴率も、回を重ねるごとに右肩上がりに…と、寅さんは放送半年をかけて国民的スター(予備軍くらい?)へとばく進。最終話のこの結末に、視聴者から抗議の電話が殺到したことが映画化につながりました。

■映画『男はつらいよ』はギネス認定されています!

松竹映画『男はつらいよ』は、テレビドラマの放送が終了した1969(昭和44)年3月27日から、わずか5か月後の8月27日にシリーズ第1作が公開されました。監督・脚本は山田洋次さん(脚本は森崎東さんと共同)、主演の寅さんはもちろん、柴又の主要人物はテレビドラマ版と同じ配役でした。

死去により渥美清さん最後の出演となった1996(平成8)年公開の『男はつらいよ 寅次郎紅の花』まで、実に48作! 「ひとりの俳優が演じた最も長い映画シリーズ」としてギネス世界記録に認定されています。特別編として、第49作『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別編』が1997(平成9)年に、第50作『男はつらいよ お帰り寅さん』が2019(令和元)年に公開されました。これにより2025年現在、映画『男はつらいよ』は全50作となっています。

2025年春に公開されたアニメ映画『ドラえもん のび太の絵世界物語』は、大長編(本編)としてはシリーズ44作目。『ドラえもん』が『男はつらいよ』の作品数を超える日もそう遠くはなさそうですが、人間が演じていた『男はつらいよ』がほぼ50作とは、改めてその人気と制作者の情熱がうかがえますね

■寅さん語録で知る「大人の熟語」

「達者でいたかい?」「それを言ったらおしまいだよ」――寅さんお決まりの台詞は金言集の単行本が何冊も出ているほどで、『男はつらいよ』人気を支える要因のひとつでもあります。しょうもない人間に見えてスバっと核心をついてくる寅さん。しかもそれが「寅さんに言われちゃ…」と思わせるところが、車寅次郎の優しさなのです。

数ある寅さん語録のなかから、しっかり覚えておきたい熟語をふたつご紹介しましょう。

向後万端引き立って、よろしくお頼み申します

「向後万端(きょうこうばんたん)」の「向後」は聞き慣れない言葉かもしれませんね。「今からあと」「こののち」という意味です。「万端」は「すべての事柄」や「あらゆる手段」を意味します。「向後万端引き立って、よろしくお頼み申します」は、「この先あらゆることについて、どうかよろしく頼みます」という、少々虫のいいフレーズです。

・それじゃお前なにかい? お見合いってのはふうけん主義だとこう言うのか?

これは「封建(ほうけん)主義」を「ふうけん主義」と言い間違えたのですが、寅さんでなくても間違えやすい語。「封建主義」は、官僚などの権力者階級が、国民の意志を無視して強い権力で政治や社会生活などを押しつけるやりかたを言います。字面でつい「ふうけん」と読んでしまいそうなので、しっかり「ほうけん」と覚えておきましょう。

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お盆休みや年末年始に帰省した際に、家族と映画館で寅さんを見るのは昭和の風物詩――と思いきや、現在もさまざまな配信プラットフォームで鑑賞することができる映画『男はつらいよ』シリーズ。笑って泣いて、人生訓も学べる本作。“寅さん沼”にハマると確実に寝不足になるのでご用心を!

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『男はつらいよ 寅さんの人生語録 改』(PHP文庫)』 :