オーベルジュとホテルの違い、ご存知ですか? オーベルジュは、郊外のレストランでシェフがその土地の食材を使って腕を振るう宿泊施設を備えたレストラン。そのオーベルジュは、レストランを備えたホテルとも思えますが、ホテルとは異なるのです。果たしてどう違うのでしょう?
今回は、日本オーベルジュ協会の方に、オーベルジュの定義や過ごし方やマナー、ちょっとしたトリビアを教わります。
オーベルジュとホテルはどう違う?
早速、オーベルジュとホテルの違いを教えていただきましょう。
「スタッフ側のおもてなしの方向性が違います。オーベルジュは、あくまでもレストランを出発点としており、食事の提供の延長線上に滞在に関するおもてなしが存在します。
よって、オーナーが料理人であることが多く、料理長を複数置くような施設は少数派です。その人の料理を食べるために訪れる、という利用スタイルが一般的だからです。
レストランがメインですから、レストランの総席数よりも客室数が少ない、ということも多いですし、都市のレストランのように食事のみの客をお迎えすることも一般的です。ただし、郊外での営業ということもあり、予約なしでは利用ができない施設もあります。
重視するポイントが食事なので、客室よりもレストラン設備のほうが整っていて豪華というのはよくあることで、客室にはテレビなどの設置が無い場合もありますし、あえて客室の充実を図らないオーナーシェフもいるくらいです。とはいえ最近では、旅館的な総合的おもてなしの観点から客室設備が充実したオーベルジュも多数登場しています。しかし、どの施設も、いかに食事を楽しんでもらうかを中心に施設を造っています」
オーベルジュが生まれた経緯
そもそも、オーベルジュが発祥したのはフランスだそう。オーベルジュはどのような場所として誕生したのでしょうか。
「シェフが土地土地の食材を新鮮なうちに仕入れたいがために、郊外でレストランをオープンさせ、客はシェフの味を求めて車で遠路、レストランへやってきます。食事とともにワインなどのアルコールも嗜むため、その日に車で帰宅することが困難になる客が多くいました。その際、レストランのオーナーやシェフが、遠方からはるばる食事に来てくれた客に休んでもらうため、レストランの2階やスタッフの居住スペースを提供してもてなした、というのがオーベルジュの始まりともされています。
シェフとの距離感が近く、シェフのファンである常連客たちが集う場所、宿泊業のプロではないけれど極上の料理をはじめ、温かく家庭的なおもてなしをする場所、それがフランスのオーベルジュだと聞いています」
オーベルジュでのマナーや作法
温かいシェフによる食事とお部屋でもてなされるオーベルジュ。ぜひ思う存分満喫したいものです。より心地よく過ごすためのマナーなどはあるのでしょうか?
「オーベルジュは食事をメインに楽しむ場ですので、レストランでの服装はラフすぎないものを指定しているところがほとんどです。宿泊に重きを置くのではなく、食事に重きを置いているので、お部屋ではなくレストランで過ごす時間を中心に考えていただけるといいと思います。普段、外食に出かけられるときと同じだと考えてください。例えば、強い香水は避けるなど。レストランは、他のお客様とも一緒に空間をつくっていますので、そのことを少し気にしていただくようお願いします。またオーベルジュはとても素晴らしい環境で営業されていることが多いです。お食事以外の時間は、ぜひ館内や周辺の雰囲気をゆったりと楽しんでください」
オーベルジュを満喫するためのポイント
続いてオーベルジュをより楽しむためのポイントを教えていただきました。
事前に料理の要望を伝えておく
「すべての施設ではありませんが、お料理について、苦手なものや好きなもの、量や合わせる飲み物など、事前にスタッフと相談しておくことで、ある程度のカスタマイズをしてくれる場合もあります。アレルギーなどのネガティブな理由だけではなく、同伴者との関係や旅行の目的など、食の好み以外も含めてお話していただくことで、より素晴らしい食の体験ができると思います。ご相談はご予約の際や、到着時でも結構です」
当日は会話も楽しむ
「当日は、お料理はもちろん、オーナーシェフやスタッフとの会話も十分に楽しんでください。オーベルジュのスタッフはその土地のこと、特に食材やワインに詳しく話好きのことが多いです。ペンションほど距離は近くなく、ホテルほどはよそよそしくない、程よい距離感を得意としています。お時間が許すならば2泊以上していただき、その土地の空気とお料理のマリアージュを存分に満喫していただきたいですね」
オーベルジュにまつわる4つのトリビア
最後に、オーベルジュのちょっとしたトリビアを教えていただきました!
■1:日本初のオーベルジュのオーナーシェフは「ビストロ」を持ち込んだ人物
日本初のオーベルジュといわれるのは「オー・ミラドー」のオーナーシェフ勝又 登氏。彼は日本に「ビストロ」という言葉を持ち込んだ最初の人物でもあるといわれる。
■2:オーベルジュにも手ごろなところから高級なところまでがある
レストランでもビストロからグランメゾンまで色々とあるように、オーベルジュにもピンからキリまであります。よく勘違いされるのが、オーベルジュ=高級というイメージ。実はすべてが高級というわけではないのです。あくまで郊外の食事をメインとした宿泊施設付きレストランです。
■3:ワインセラーが別棟で存在するオーベルジュがある
レストラン、宿泊、ワインセラーがすべて別々の建物になっているオーベルジュもあります。
■4:フランス料理以外のオーベルジュも存在する
和食や洋食はもちろん、中華や多国籍料理まで幅広く存在します。
知れば知るほど、訪れたくなるオーベルジュ。その土地ならではの食材と共に、オーナーシェフやスタッフとの交流も味わうのがワンランク上の楽しみ方といえそうです。
日本オーベルジュ協会 公式FACEBOOK
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 石原亜香利