ドラマや映画で要人の周囲を囲み、身を呈して雇い主を守るボディガード。身辺の安全を守るという職業は、戦う場面が多いイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか。

今回は、世界最大のボディガード組織・IBA(国際ボディガード協会)®︎の日本支部CCTT®︎にインタビュー。CCTT®︎の日本代表者であり、自身もボディガードとしてVIPやセレブリティーの警護をしている小山内秀友さんに、その実態を聞きました。

小山内さん曰く、ボディガードサービスは、VIPやセレブリティーに限らずどんな方でもオーダーをすることができるそう。実際にどんなオファーがあったのか? そのお値段はいくら? などなど。普段あまり知られることのない、ボディガードという職業を掘り下げます。

戦う状況になった瞬間、ボディガード失格

戦わないのが本物のボディガード?

ボディガードは常に危険と隣り合わせというイメージがあります。実際はどうなのでしょうか?

「実際に取っ組み合いになることは、ほとんどありません。ましてや武器を手にするなんてことは、ありませんね。

本来、ボディガードは『危険が来てから守る』では遅いのです。なぜなら、攻撃をされるときは、必ず相手が優位な状況にあり、それを我々が守れる可能性は五分五分です。

危険が来てから戦うと負ける可能性がでてくるので、極力戦う状況をつくらないよう、訓練やリサーチに重点をおいています。

我々は運でVIPを守るわけにはいきませんから、戦う状況をつくった時点で、ボディガードとして失格です」

1日8時間以内のオファーで金額は5万円以上!

ボディガードサービスはどんな人も利用できる!

ボディガードはいくらで雇えるのでしょうか?

「警護会社によって金額設定はさまざまですが、弊社の場合はボディガードひとりにつき、1日8時間以内で54,000円です。

ただ、基本的にチームを組むので、ひとりで対応することはまずありません。対象者に忍び寄る危険をどれくらいの人数で回避できるのかが大きいので、総額はケースバイケース。過去事例として、海外アスリートの方の場合は、チームで1日100万円以上はかかりました。

ボディガードを頼まれるのは、特殊な職業の方が多いのでしょうか。

「皇族や王族の方々、政府の要人や企業の役員でなければボディガードが頼めない、ということはありません。弊社では海外要人の警護を得意としているため、一般の方の身辺保護のオーダーはそれほどありませんが、過去には、ストーカーやDV加害者などから雇い主の身を守るケースもありました。

ただ、警備会社によっては、一般の方を専門に警護サービスを実施しているところもあります」

SNS警護!時代によってガード体制も変化

時代によってボディガードの警護も変わる?

雇い主を守るためにどんな訓練をしているのですか。

「実は、現場よりも訓練が非常に厳しいんです。だからこそ、現場でどんなことが起こっても対処できるようになりました。狙撃への対処訓練、爆発物や盗聴器などを見つけ出す訓練もあります。

また、攻撃の手法も時代とともに進化しているので、我々は現場と訓練の行き来を繰り返しています。最近では、インターネットやSNSが広まったことも大きく影響していますね」

SNSと警護にどんな関係があるのでしょうか?

「例えば、インスタグラムに居場所をあげてしまうセレブリティーの方がいたりするんです。そういった場合は、インスタグラムやフェイスブックの監視も、警護のひとつに入ります。警備対象者が決まった時点でアカウントをフォローし、どういう写真を投稿する傾向にあるかなど、すべてチェックします。

ただ、基本的に投稿をやめるように伝えることはありません。ボディガードは、『命(LIFE)』と同時に、『生活(LIFESTYLE)』を守ることも大切な仕事。その人の生活に口出しをすることは、相当なことがない限りありません」

VIPの日常をつくる。それがプロの仕事。

ドラマや映画とのイメージの違いとは?

ドラマや映画との違いをお教えください。

「ボディガードといえば、VIPの側に体格の良い男性が構えているイメージがありますよね。それも現実は違う場合が多いんです。実は、見た目がボディガードに見えない穏やかなルックスの方にオファーするケースがすごく多い。もちろん、筋肉隆々のボディガードもいますが」

実際はイメージと違うことが多いと。

「そうですね。映画『ボディガード』で歌手である主人公に対して、ボディガードが『危ないからステージに出ないでくれ』と訴えるシーンがあります。それも映画と現実のギャップ。現実ではありえません。

危険な状況でもライフスタイルを送らなくてはいけないVIPに対して、通常のように生活を送れるようにするのが、我々ボディガードのプロとしての仕事です」

実際にオーダーする機会はあまりなさそうなボディガード。危険な場面に多く遭遇するイメージがありますが、実はそれ以上に訓練やリサーチに重きをおいている職業でした。戦う場面をつくらず、危険な状況にあるVIPに日常を提供する、それは私たちが抱いているイメージ以上に難しい仕事なのかもしれません。ボディガードに限らず、映画やドラマとの違いを知ると、その職業についてより深く知ることができるのではないでしょうか。

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この記事の執筆者
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WRITING :
松崎愛香
EDIT :
高橋優海(東京通信社)