京都・東山にある並河靖之七宝記念館。七宝家の並河靖之のかつての住まいであり、工房であった町家が、そっくりそのまま記念館となっています。エキゾチックなデザインが人気を呼び、その多くが海外へ渡ったといわれている並河作品。その貴重な作品を「手のひらサイズの小さな宇宙」と評する、美術史家の山下裕二さんによる解説とともに、貴重な並河作品を所蔵する並河靖之七宝記念館をご紹介していきます。

京都の伝統的な町家で鑑賞する、手のひらサイズの小さな宇宙

「藤草花文花瓶」/19〜20世紀 高さ23.0×径11.5cm

10年ほど前から、「超絶技巧」をキーワードに、明治工芸を応援してきました。思わず目を見張るほど細密な装飾が施された工芸品をご覧になった方も多いと思いますが、なかでも、並河靖之の七宝は最も素晴らしい。手のひらに載るほどのサイズの七宝のなかに、宇宙が凝縮されている。これまで何度も手に取る機会がありましたが、そのたびに深い幸せを感じます。

上の「藤草花文花瓶」は、極薄のテープ状の金属線を使った有線七宝。まさに「超絶技巧」といえる装飾を施した花瓶は、黒色釉薬による、地色部分の深い黒も大変美しい名品です。

貴重な並河靖之作品を所蔵する、並河靖之七宝記念館

明治27年に建てられた京都の町家を、当時のまま記念館に。表屋、主屋、旧工房、旧窯場は、国登録有形文化財。

京都・東山にある並河靖之七宝記念館は、かつて並河の住まいであり、工房であった町家をそっくりそのまま記念館にしたもの。庭は、琵琶湖疏水の水を池に引いた贅沢なつくりで、典型的な京都らしさがあふれる空間となっています。

「菊唐草文細首小花瓶」/明治時代 各高さ13.3×径6.5cm

鮮やかなブルーの地に、菊をあしらった「菊唐草文細首小花瓶」。エキゾチックなデザインは、当時のヨーロッパの人に大変人気がありました。

「平安神宮風景文小蓋壺」/明治時代 高さ15.0×径12.5cm

晩年になると、並河作品はより絵画的な表現へと移行していきます。こちらは、平安神宮をぼかしを多用して描いた壺。なかなか趣があります。

多くが海外へ渡った並河作品を、日本でまとめて見ることのできる貴重な場所である並河靖之七宝記念館。今回ご紹介した3作品も展示されている「開館15周年記念春季特別展 並河靖之―七宝の誉」も、7月22日(日)まで好評開催中です。小さな宇宙を、ぜひその目でご覧になってみてはいかがでしょうか。

山下裕二さん
美術史家、明治学院大学教授
(やました ゆうじ)『週刊ニッポンの国宝100』(小学館)の監修も務める。

問い合わせ先

  • 並河靖之七宝記念館
  • 開館時間/10:00〜16:30(入館は16:00まで)
    休館日/
    月曜日・木曜日(祝日の場合は翌日に振替)、夏季・冬季長期休館あり
  • TEL:075-752-3277
  • 住所/京都府京都市東山区三条通北裏白川筋東入堀池町388

EDIT&WRITING :
剣持亜弥(HATSU)
RECONSTRUCT :
難波寛彦