無理なく今の時代に即するコミュニケーション術を考えます【やわらかな「雑談力」を身につけるには…】
リモート作業やオンラインミーティングに慣れてきた今、リアルな場面で起きる「誰も話さない静けさ」が妙に気になるときも。
相手の警戒心を解き、よい関係を築くためのコミュニケーション手段として、アイスブレイクとして、雑談は効果があるといわれます。さらりと、ゆるやかに雑談するための考え方をトークのプロに聞いてみました。
プレシャス読者に聞きました!

不意に訪れる雑談タイム。心地よい雑談とは…
雑談は、取引き先など初対面の人と距離を縮めたいとき、職場で上司や部下・後輩と良好な関係を築くときには有効な手段といわれます。でも、雑談タイムは不意に訪れるもの。オフィスで上司や後輩とすれ違うとき。取引先との打ち合わせで、出席者が揃うまでの時間。たまたまタクシーに同乗することになったとき…。事前に準備ができないぶん、とっさに話題が出てこない。沈黙を埋めなくてはと焦るほど、話も弾まない。プレシャス読者へのアンケートでも、「話が広がらない」「気を遣って疲れる」という声が多く寄せられました。
雑談は仕事上の円滑なコミュニケーションに不可欠だと答える人も多い一方で、若い世代を中心に「むだなもの」とする風潮もあり、上司世代からは「ハラスメントにならないか心配」(40代/専門職)、「雑談なしで淡々と仕事をしたい」(50代/会社員)という切実な声も。かと思うと、「雑談は得意」という声も半数近くで、世代間のコミュニケーションギャップもありそうです。雑談ができない職場は生産性が下がり、人が辞めやすいともいわれます。心地よく、ゆるやかに話せる雑談 “筋” を鍛えたいものです。
プロデューサー・佐久間宣行さん——エピソードではなくトークテーマが大事。まずは「ほめること」から始めてみては。
メディアの枠を超えて幅広く活躍し、その仕事観も支持される佐久間宣行さんは、「仕事では雑談をかなりするタイプ」。極上のエンタメや仕事を支える雑談力とは。

「『自分は気さくなタイプ』だと思っている人は、雑談で失敗しがちです」佐久間さん
──佐久間さんは、仕事ではどんな雑談をしていますか?
初対面の方とは仕事に隣接する話をします。「あのお仕事おもしろかったですね」と始め、「あなたに興味がある」ということを伝える。部下や後輩に対しても同じで、「気にかけているよ」と伝えることを大事にしています。そうして話しやすい雰囲気や “スキ” をつくることは上司世代がすべきこと。組織ではオジサンになるほど相手に緊張されますから。
雑談では聞き役に徹して教えてもらうスタンスで
──若い世代とはどんな雑談を?
その世代しか知らないようなことを、「僕はわからない」と認めたうえで教えてもらいます。というか、それがほとんどですね。相手が好きなジャンル、例えばアニメが好きなら「いちばん好きな作品は?」と聞き、返事が返ってきたら「どんなアニメ?」と聞いていく。好きなことの話は自己開示をする必要がなく、開示する情報も相手が選べますから、気負わず話してもらえるし、僕にとっても情報になります。関係が浅い段階ではプライベートなことは聞きません。
──雑談で心がけていることは?
明るく、楽しそうに話し始めること。これは笑っていい話なのだと相手が判断できるのはしゃべりだしのトーンですから。お笑い芸人だと、千鳥のノブさんは収録前の声のかけ方もうまいです。「あの番組よかったですね〜」と、明るくさらっと、でもしっかりと話してくれるので、僕もついつい話してしまいます。
──残念な雑談はどんなものでしょう?
雑談を始めた側が自分のことを話しすぎることです。僕が始めた雑談では、自分の話題は会話のきっかけだけ。「暑くてこんなことがあったよ」と話したあとは、聞かれない限りは聞き役に徹します。よく、「相手からリアクションがなくて雑談が続かない」「間ができる」と聞きますが、それはその人が雑談を「自分の話をする場」だととらえ、「何か話さなくては」と焦り、相手の話を実は聞いていないからでは。周囲に「気にかけているよ」ということを伝える雑談で話すべきは、エピソードトークではなくトークテーマです。また、雑談で失敗しがちなのは、「自分は気さくなタイプ」と思っている人。そういう人は自分を雑談上手だと勘違いして相手に踏み込みすぎ、パワハラだと言われやすい。「自分は気さくだ」という勘違いは、周囲に気遣われていることに気づいていないからだと思います。
──雑談が苦手な人へのアドバイスを。
ほめることから始めてみては。相手の自己肯定感が上がり、喜んでくれるうえに自分の印象もよくなります。世代間でわかり合えないことがあることを認め、それでも親切にはできるという態度も大事。上司世代が自分の話をしても、後輩世代は興味がもてないということを自覚して聞き役になることです。自分に興味をもってくれているとわかれば相手も話を聞いてみようと思うはずです。
- PHOTO :
- 杉江拓哉(TRON)
- EDIT&WRITING :
- 松田亜子、福本絵里香(Precious)