箱根の玄関口として知られる日本屈指の歴史ある温泉地・箱根湯本温泉に佇む温泉旅館「界 箱根」が、2025年8月、新たに生まれ変わりました。自然豊かな箱根の地に根ざし、歴史と文化を感じられる空間としてリニューアル。訪れる人々に心からのくつろぎと非日常の体験を届けています。

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「界 箱根」エントランス

伝統と現代のデザインが調和した美しい空間は、温泉旅館ならではの趣を保ちながらも、新しい魅力にあふれています。箱根の自然や文化に浸りながら、五感で楽しむ特別な滞在がかないます。

リニューアルされた「界 箱根」ならではの魅力について、滞在したPrecious.jpライターが詳しくご紹介していきます。

東海道の文化や伝統工芸に触れることができる「界 箱根」

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「箱根の山は天下の険」ということがよくわかる

江戸時代には東海道の宿場町として栄え、旅人が「一夜湯治」を楽しむ場として賑わっていたという箱根湯本温泉。「界 箱根」はその旧街道沿い、須雲川の清流と湯坂山の自然に抱かれた立地に佇む宿です。

エントランスから中に入ると、東海道の旅人の歴史が感じられる木のアートが。日本橋から箱根を通り、京都の三条橋までの道のりを表しています。箱根の峠がいちばん高いことがわかりますが、そのため箱根の峠を越える前に休憩をはさむ旅人が多く、このあたりには茶屋が多かったのだそう。

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フロント前には寄木細工が

また、箱根といえば伝統工芸の寄木細工が有名。「界 箱根」では、寄木細工で作られたアイテムが客室に置いてあったり、寄木細工の制作工程の一部を体験するプログラムを提供していたりと、随所で箱根の寄木細工の世界観を肌で感じる機会が多いのも特徴です。

フロントそばのスペースには、小田原に工房を構える露木木工所による寄木細工が飾られています。完成品ではなく、あえて木材の質感が残っているようなものを展示しており、手に持ったり触れたりして、完成までの過程を見ることができます。

リニューアルした「界 箱根」の客室をチェック

リニューアルに際し、「界 箱根」の客室は全室がリバービューのご当地部屋である「箱根ごこちの間」に。自然と調和した美しい空間が特徴で、訪れる人々に贅沢なひとときを提供しています。

リニューアル前からあるご当地部屋「清流リビング付き和洋室」

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「清流リビング付き和洋室」

「清流リビング付き和洋室」は、リニューアル前から元々あるご当地部屋。箱根の自然を感じながら、和の落ち着きと洋の快適さを兼ね備えた客室です。広々としたリビングスペースと、清流の音を感じることができる設計が特徴です。

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ベッドスペース
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清流を望む客室

大きな窓からは、四季折々の自然の美しさを楽しむことができます。また、和室と洋室が隣接しており、家族やグループでの利用にも最適。開放的なリビングスペースでは、ゆったりとした時間を過ごすことができます。

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寄木細工
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寄木細工のコースターも

リビングに寄木ギャラリーがあるのもこちらの客室の特徴。すべて寄木細工で作られたトレイやお皿、花瓶やティッシュボックスなど、実用的なアイテムが並びます。

手に取って、触れて、実際に使用して…寄木細工の魅力を間近で見て感じることができるのもうれしいポイントです。

リニューアルで新設された全2室のスイートルーム「箱根ごこちスイート」

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「箱根ごこちスイート」

今回、宿泊したのは「界 箱根」のリニューアルにより新設された「箱根ごこちスイート」。2室限定の贅沢なスイートルームは、110平方メートルを超える広さを誇ります。

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リビング
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リビングからの眺め

リビングエリアには、デスクスペースと床が一段下がったソファースペースが配置され、湯坂山の雄大な景観をさまざまな角度から楽しむことができます。

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オセロ
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ティッシュボックス

また、こちらのお部屋にも寄木細工でできたオセロやティッシュボックスなどが置いてありました。ティッシュボックスは、気に入ったらショップで実際に購入もできますよ。

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客室露天風呂

なんといっても注目は、客室内に設けられた露天風呂。四季折々の自然を眺めながら、贅沢なひとときを過ごすことができます。大浴場と同じ温泉がお部屋でも楽しめるのはうれしいですね。

足をのばして入れる広々とした露天風呂は、滞在中何度でも入りたくなりますよ。

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坪庭
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湯上がり空間「石の間」

さらに、隣接する坪庭を備えた湯上がり空間「石の間」では、目の前の大自然を眺めながら湯涼みを楽しむことができ、心身ともにリラックスできる空間が広がっています。

リビングから石の間への道は扉を閉めておくこともできるため、友人同士で宿泊する際にプライベート感を保って温泉を楽しめます。

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寝室は廊下をはさんで左右にひとつずつ。計4つのベッドを備えている

また、箱根ごこちスイートには廊下をはさんで独立した2つのベッドルームがあり、最大4名まで宿泊可能。それぞれのベッドルームは、障子を閉めることも可能です。この配置により、家族や友人同士での利用にも最適で、ここでもプライベート感を保ちながら、ゆったりとした時間を過ごすことができます。

箱根の自然と文化を感じるくつろぎの空間「さわ茶屋」が新設

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さわ茶屋

「界 箱根」の館内に新たに登場した「さわ茶屋」は、箱根の自然と文化を五感で楽しむことができる、くつろぎの空間です。茶屋のネーミングには、須雲川の「沢」、木々が揺れる音の「さわさわ」、そして会話が生まれる「茶話(さわ)」の3つの意味があるそう。

往時の旅人たちが一休みしながら他の旅人たちとの交流を深めた茶屋文化を受け継ぎ、現代の訪問者にも大切な人とのつながりを深めてほしいという思いが込められているのだとか。

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みたらし団子とお茶が振る舞われる

さわ茶屋を日中に訪れると、スタッフが扮する茶屋の主人からみたらし団子とお茶が振る舞われます。夜は、ハーブティーやお酒が用意され、昼とはまた異なる雰囲気に。

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夜にはハーブティーやお酒が用意され、雰囲気がガラリと変わる

訪れたのはまだ日中夏の暑さが残る時期でしたが、川が近く緑が多いためか、日陰では涼しい風を感じることも。お団子を片手に、会話が弾むひとときを過ごせました。

ご当地楽「寄木細工のずく引き体験」も楽しい

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ショップが併設されたご当地楽ルーム

さらに注目なのが、箱根の伝統工芸である寄木細工の制作工程の一部である「ずく引き」を体験できるご当地楽。この体験は、2012年の開業以来、訪れるゲストに寄木細工の魅力を伝えてきたという「露木木工所」の職人との連携により実現したプログラムだそう。

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ご当地楽のためのスペース
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さまざまな木の断面

体験は、新設されたご当地楽ルームで行われます。職人の工房をイメージした空間で、壁面にはいろいろな種類の木材がディスプレイされています。

体験のはじめに、いくつかの木片を手渡され、壁面にある木材と照らし合わせながら正解を探すという時間も。木によって色味や手触りは本当にさまざまで、だからこそ寄木細工は染色・着色をせずとも美しくカラフルに仕上がるのだと実感しました。

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ずく引き体験
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オリジナルのフォトフレームを作れる

そして「ずく引き」とは、複数の模様のパーツを組み合わせた「種木」をカンナで薄く削り出す作業のこと。力を均等にかけて削るのが難しく、職人の技を自身で体験することで、実際に感じることができます。

小さな子どもから大人まで参加していましたが、最初は皆さん苦戦。何度かやるうちに少しずつコツをつかんでいったようです。筆者も、まったく途切れることのないきれいな長方形の「ずく」に仕上げることは一度もできませんでした。

削り出したずくは、界 箱根オリジナルのフォトフレームに切り貼りして、自分だけのフォトフレームを作ることができます。短く切れたずくでも、マスキングテープのように貼っていけばなんとなくサマになっていました。

体験後は、隣接するショップで寄木細工の作品も購入できます。素材から完成品まで、箱根寄木細工の世界観を深く体感できるひとときでした。

絵画のような景色が楽しめる大浴場でリラックス

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大浴場

「界 箱根」の温泉は、箱根湯本の自然に囲まれた静かな環境の中で、心ゆくまで湯浴みを楽しむことができます。大浴場に備えられた半露天風呂は、まるで一枚の絵画のような外の景色が印象的。湯面に反射する湯坂山の緑を眺め、須雲川のせせらぎの音を聞きながら、癒やされるひとときです。

泉質はナトリウム‐塩化物温泉。保温・保湿効果が高いとされる泉質のため、長く入ると湯あたりしてしまうそうですが、汗が額ににじむ程度の全身浴を意識することで、じっくりと温まる温泉です。

湯上がり後には、専用の湯上がり処へ。温泉の余韻に浸りながら水分補給し、心身ともにリフレッシュできます。

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温泉までの廊下

温泉に行く途中で注目したいのが、「参勤交代今昔物語」と称した壁のアートです。旅人たちが連なるように描かれているのですが…。

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スケートボードにのった旅人も!
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馬にのった旅人のうしろから自転車にのった旅人が

よくよく見ると、参勤交代の旅人たちに混ざって、スキーやスノーボードをしている旅人や、駅伝のタスキを渡している旅人などが。疲れて休憩しているような旅人も見られます。遊び心たっぷりの参勤交代になっているので、ぜひじっくり眺めて、お気に入りの旅人を見つけてみてくださいね。

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「温泉いろは」に参加

また、温泉に入る前に、界の湯守と呼ばれるスタッフが箱根湯本温泉の歴史とともに泉質や効果的な入浴法を説明してくれる「温泉いろは」に参加すると、より深く温泉を楽しめますよ。

夕食は箱根の歴史に着想を得た「明治の牛鍋会席」

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メインとなる「明治の牛鍋」

夕食は、半個室の落ち着いた空間でいただきます。明治時代の箱根を感じる特別な会席料理「明治の牛鍋会席」が登場しました。

箱根は温泉保養地として欧米人に親しまれ、西洋料理を取り入れてきた歴史があります。この会席料理では、西洋食材である牛肉に和の技法を用いた牛鍋を再現し、明治時代の食文化を現代に伝えています。

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煮物椀「吹き寄せ卵 紅葉麩 酢橘 三つ葉」
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蓋物「宝蓮根饅頭 ずわい蟹 べっこう餡」

会席は、東海道を行き交った旅人の持ち物を模した「挟み箱」に入った季節の品々から始まり、煮物椀やお造り、蓋物を経てメインの牛鍋へと続きます。

明治の牛鍋は、味噌仕立てでお肉の旨みと野菜の甘みを楽しめる一品。火を通したお肉と野菜は卵と絡めていただきます。

すき焼きの起源とも言われているそうですが、大きく違うのが味噌で仕立てている点と、お肉がかなり厚切りという点。明治時代は冷蔵・冷凍技術が乏しかったため、早めに消費できるよう厚切りにしたと言われているそうですよ。

厚切りのため肉感がしっかり感じられつつもとても柔らかく、味噌と絡み合って旨味たっぷり。ごはんが進むおいしさでした。

体操のあとは、せいろ蒸しを中心としたご当地朝食

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わらじ体操

翌朝は、さわ茶屋の前で行われる「わらじ体操」に参加。箱根を旅した旅人になりきって、わらじを履いて簡単な体操をするのですが…慣れないわらじを履くのに、まず一苦労。でも、ふだんは履かないわらじを履くことで、当時の旅人の感覚に少しでも近づけたかな…と感じました。

足裏から感じる刺激が心地よく、体を動かすうちにだんだん頭もシャッキリしてきます。

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ご当地朝食

そして、体操のあとは朝食へ。

全国の「界」では、地域色を感じる食材や調理法を取り入れた「ご当地朝食」が用意されています。界 箱根でいただけるのは、せいろ蒸しを中心とした和食膳。

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せいろ蒸し

東海道の旅人たちが癒やされたという箱根湯元温泉の湯けむりに見立てたせいろ蒸しは、小田原名物の練り物や豚肉、野菜が入っています。ちり酢につけていただきます。

さらに、カレイの西京焼きや玉子焼き、飲む点滴とも言われる甘酒とオレンジジュースをあわせた一杯など、朝から栄養満点の和食膳に大満足。まさに、休息をとった旅人が癒やされてまた足を進められるような、元気が出る朝食でした。


「界 箱根」では、伝統工芸の体験や温泉での癒やし、さわ茶屋や客室でくつろぐ時間などを通じて、箱根の自然や文化に深く触れることができます。これから、ますます温泉がぜひ、「界 箱根」で心に残る特別なひとときをお過ごしください。

問い合わせ先

  • 界 箱根
  • TEL:050-3134-8092(界予約センター)
  • 住所/神奈川県足柄下郡箱根町湯本茶屋230

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この記事の執筆者
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WRITING :
小林麻美