連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People
明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する『Precious』連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、イタリア・ヴェネツィアでブティックホテル「Madama Venice(マダマ・ヴェニス)」を経営するマーラ デ・グイディさんにインタビュー!
「大学で哲学を学び、金融業界で世界を巡り、香水ビジネスを経て、ホテルオーナーに。まっすぐなキャリアではないぶん、その経験は有機的に紡がれていると思う」と語るマーラさんが考える「ホスピタリティ」とは? 詳しくお話しをうかがいました。
【Venice】哲学を学び、銀行員、起業家を経てブティックホテルのオーナーへ

水の都・ヴェネツィアでは珍しく敷地内に庭園を備え、運河からのアプローチに加えて、陸からのチェックインも可能なホテル、それがマーラさんの経営する「マダマ・ヴェニス」。
「ここは哲学を愛する私の価値観や信念を形にしたものです。なんていうと難しく聞こえるかもしれませんね。仕事柄、世界中のホテルに滞在した経験を生かして、私の思想をギュッと詰め込んだ、センス溢れるブティックホテルをつくろうと考えたのです」
この地はもともと、アンテルミ宮殿という没落貴族の邸宅跡。価値あるものはすべて運び出されていて廃墟状態だった場所を、自ら現場監督となって、修復にとりかかった。
「昨今、問題が顕在化している地盤沈下と海面上昇に備えるため、エンジニアリングシステムの設計・施工も行いました。丸3年の月日をかけてようやくでき上がったのが、9つのスイートとひとつのジュニアスイートで構成された2階建ての瀟洒な建物。内装には木材、鉄、真鍮、ガラスなどを使用。装飾にはベルベット、シルク、ブロケードなどヴェネツィアの伝統的な素材を多用して、モダンなアレンジに仕上げました。デザインやコンセプトはひと部屋ごとに変えていて、それぞれに花の名前をつけています。さらにゲストに心からくつろいでもらうために、それぞれの部屋で異なる香りの演出もしているのです」
最後までこだわった庭園では、春には藤の花がトンネルをつくり、秋には満開のバラがアーチを描く。季節折々で艶やかな姿を愛でることができる、とっておきの場となった。
「大学で哲学を学び、金融業界で世界を巡り、香水ビジネスを経て、ホテルオーナーに。まっすぐなキャリアではないぶん、その経験は有機的に紡がれていると思う。私が感じる贅沢とは “時間” です。それを過ぎ去るものではなく、残されたものとして貴重に扱うことができる、ラグジュアリーな体験そのものを提供できれば。ホスピタリティを “真の知性” と捉えて、皆様をお待ちしています」
◇マーラさんに質問
Q. 朝起きていちばんにやることは?
愛犬のチェザレと公園を散歩。
Q. 人から言われてうれしいほめ言葉は?
相手が一瞬でも携帯電話を忘れている姿を見られたら、それが私にとってのほめ言葉かもしれません。
Q. 急にお休みがとれたらどう過ごす?
私の到着を楽しみに出迎えてくれる人が待つ場所に行きたい。そして罪悪感を感じずに何もしない時間を過ごしたい。
Q. 仕事以外で新しく始めたいことは?
書くこと。人生や物事の意味について、自分の言葉で伝えていきたい。
Q. 10年後の自分は何をやっている?
急がずに旅をし、時間を気にせずに読書をし、手間暇かけて料理をつくっていられたら。
Q. 自分を動物に例えると?
その姿や習性から “森の哲学者” と呼ばれるフクロウ。
- PHOTO :
- Francesco Dolfo
- EDIT&WRITING :
- 本庄真穂、喜多容子・木村 晶(Precious)
- 取材 :
- Yuki Katagiri