【目次】

【「レモンの日」とは?由来】

「レモンの日」として最も親しまれているのは、詩人・高村光太郎の妻・智恵子の命日である10月5日です。光太郎は妻・智恵子への愛をうたった詩集『智恵子抄』のなかで、彼女が亡くなる直前、レモンをかじる描写を詩「レモン哀歌」に含めています。そのため、この詩にちなんで10月5日を「レモンの日」と呼ぶようになったとされています。 

ただし、この記念日をいつ・誰が正式に制定したか、あるいは制定の目的については明確な史料・情報は確認されていません。

また、作家・梶井基次郎の命日である3月24日は、代表作『檸檬』にちなんで「檸檬忌(れもんき)」と呼ばれることがあります。


【ビジネス雑談に役立つ「レモンの日」にまつわる雑学】

■高村光太郎ってどんな人

高村光太郎は、大正〜昭和期に活躍した詩人・彫刻家です。彫刻家・高村光雲の長男として生まれ、東京美術学校(現・東京芸術大学)を卒業。その後、ニューヨーク、ロンドン、パリで彫刻や絵画を学びました。この留学時に、個人が確立された西洋の哲学や人生観にふれ、人間が解放され自由であることの意味を感じ取り、多大な影響を受けます。

帰国後は彫刻家である父親の跡を継ぐことへの葛藤を抱きながらも、欧米で学んだ彫刻の技術を日本で広げました。美術批判にも力を注ぎ、芸術界に大きな影響を与えています。あらに、『道程』『智恵子抄』など、詩集を発表。近代日本文化を代表うする詩人のひとりとして知られています。

妻の高村智恵子(1886~1938)は、洋画家で紙絵作家としても知られています。。福島県の造り酒屋で素封家の元に生まれ、地元の女学校卒業後に上京。日本女子大学校へ通うかたわら油絵の勉強を始め、卒業後も東京に残り画家となることを目指しました。当時創刊された『青鞜(せいとう)』の表紙絵を描いたことでも注目を集めました。

光太郎と智恵子は互いに芸術的感性を響き合わせ、詩や絵画を通じて深い結びつきを築きました。

■『智恵子抄』とは

高村光太郎と千恵子は、互いに人間としての自由を尊重し、家に縛られない独立した人生を共に歩もうと誓い合いました。しかし智恵子はやがて精神を病み、光太郎の看病の末に1938年に肺結核によりこの世を去ります。

『智恵子抄』は1941(昭和16)年に出版された詩集で、光太郎が智恵子との生前の恋愛や結婚生活、また病との闘い、死別に至るまでを詩29編のほか、短歌6首、散文3編で綴っています。そのなかでも「レモン哀歌」は有名で、「そんなにもあなたはレモンを待っていた」で始まるこの詩は、亡くなる直前の千恵子の姿を鮮烈に描き出しています。

一説によれば、智恵子は闘病生活の中で、食欲も衰え、生気を失っていました。そのなかでレモンの鮮烈な酸味と香りが、彼女にとって最後の「生の感覚」を呼び戻したのだといわれます。実際に詩中でも、レモンを口にした一瞬、智恵子がぱっと明るさを取り戻した様子が描かれています。

また、レモンの鮮やかな黄色は、生命力や希望の象徴としても解釈されます。死の直前に手にした果実が、智恵子の短くも濃い人生と、光太郎の深い愛情を凝縮したモチーフとなったのです。

こうした背景から、10月5日の命日は「レモンの日」と呼ばれ、今もなお多くの人々に記憶されています。

■実際のところ、レモンのビタミン含有量はどれくらいすごいの?

レモンといえば、ビタミンCが多く含まれていることで広く知られた食品です。ビタミンCがどれくらい含有されているかのたとえとして、「レモン〇〇個分のビタミンC」といったとフレーズは、よく耳にしますね。

ビタミンCの効能が世界に知られるきっかけとなったのは、大航海時代にさかのぼります。15~16世紀、ヴァスコ・ダ・ガマやマゼランの艦隊が大西洋を越えてインドや世界一周に挑みましたが、船員の多くが長期航海の途中で命を落としました。その最大の原因が、ビタミンC不足による「壊血病」だったのです。

人間は体内でビタミンCを合成できないため、野菜や果物から摂取しなければなりません。しかし長い航海では新鮮な食料を補給できず、多くの犠牲者を生んでしまいました。

18世紀になると、イギリス海軍が壊血病の研究を本格化。1747年、スコットランドの医師ジェームズ・リンドが壊血病患者に柑橘類を与える実験を行い、その有効性を証明しました。これを受けて18世紀末にはイギリス海軍にレモンやライムのジュースが導入され、壊血病の症例は1500件以上からわずか数件にまで激減したと伝えられます。

こうした対策のおかげで、イギリス海軍は長期航海でも圧倒的な戦力を維持できるようになり、19世紀にはトラファルガーの戦いをはじめとする数々の海戦で優位に立ち、制海権を握るに至りました。まさに「海軍を救った果実」といえるかもしれません!

■料理に及ぼすレモンの効用を4つ紹介!

ビタミンC豊富なレモンは、美容にもよいとされています。果汁を料理に使うのはもちろん、薄くスライスして添えるなど、さまざまな使い方ができます。以下にレモンの効用をご紹介しましょう。

・保水効果
レモン果汁には、牛肉、鶏肉、豚肉など、肉の保水性を高める効果があります。調理の前に、肉をレモン果汁に付け込むことで食品内の水分が保たれ、加熱した後もしっとりした食感が楽しめますよ。
・消臭効果
香り成分であるリモネンやクエン酸が、肉や魚の臭みを和らげます。下ごしらえとして、肉や魚をレモン果汁に漬けたり、調理の仕上げにかけると効果的です。風味がぐっと爽やかになります。
・保色効果
りんごやアボカドなど、空気に触れて変色する食品の褪色を防ぐには、レモン果汁を活用。レモンを数滴たらした水にさらすと、レモン果汁に含まれるビタミンCの抗酸化作用が変色を押さえてくれます。

■レモンに含まれるクエン酸とリモネンが掃除に活躍!

キッチンやトイレなど、掃除する箇所ごとに洗剤を買ってしまって、気がつけば棚の中には使いかけのボトルだらけ……。あるいは、合成洗剤を使わない「ナチュラルクリーニング」を取り入れたい人にもおすすめなのが、レモンを活用した掃除法です。

レモンに含まれるクエン酸はアルカリ性の汚れを中和し落としやすくするので、水あかや石鹸カスなどの掃除に効果的。調理に使った残りの切り口で、水あかが気になる蛇口やシンクを磨きます。頑固な汚れには、キッチンペーパーにレモン果汁をしみ込ませ、汚れた部分を覆います。しばらく放置しておけば、汚れが落ちやすくなりますよ。また、リモネンには油を溶解する作用があり、キッチンやコンロなど、油汚れに効果的です。抗菌や防臭効果もあるので掃除後に清潔感が保てるのがいいですね!  筆者は料理に使ったレモンを、そのまま1分程レンジでチンすることを習慣にしています。さっと布巾で拭けば、レンジの中の匂いが消え、さっぱりします。

※注意:レモンは酸性が強いため、大理石や一部の金属には使用を避けてください。

■レモンにちなんだ記念日はほかにもある?

・レモンサワーの日 (3月8日)
「こだわり酒場のレモンサワー」ブランドを販売しているサントリー株式会社が制定した記念日です。レモンサワー市場を活性化させ、その魅力をより多くの人に楽しんでもらうことが目的。日付は、レモンの心地よい酸(3)味と炭酸のパチパチ(8)が爽快に楽しめることから3月8日になりました。

・クエン酸の日 (9月3日)
レモン果汁を創業商品とするポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社が制定。レモン果実に多く含まれる酸っぱい成分で、疲労物質を減らす力のある天然クエン酸に着目してもらうことを目的としています。日付の由来は、夏バテで疲れが出やすくなる時期と、9(く)と3(さん)で「クエン酸」の語呂合わせから。

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「レモンの日」と聞くと、果物のレモンにちなんだ日と連想しがちですが、実際には詩人・高村光太郎の妻・千恵子の忌日(命日)に由来します。光太郎は智恵子の魂の美しさを愛おしみ、『智恵子抄』として結晶させました。「読書の秋」と呼ばれる季節。久しぶりに詩集を開いてみてはいかがでしょうか。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /一般社団法人 日本記念日協会HP(https://www.kinenbi.gr.jp) :